さらなる敵
「………だっめだぁ〜、やっぱりこんな文字を短期間で読めるようにするなんて、無茶苦茶だぁ。」
「これは駄目だよ………駄目だよもう、できる気がしない。」
そう和也と浩二の二人が根を上げるのも無理のない話だった、いくらリューゼさんの教え方がうまいからって、言語をゼロから一年でマスターしようなんて無理がある。
もっともこの世界に召喚されてからまだ三ヶ月しかたっていないし、全く読めない訳でもないのだが魔法は魔導書そのままにやらなければ使えなくなるので、完全にマスターしないといけないのだ。
「困ったな………。」
「………リューゼさん、勝手なことを言って申し訳ないのですが、私達は必ずしも彼らを魔法使いにしたいわけではないのですよ、ただ強くなってほしいだけで、これほどまでに魔法が苦手なようなら身体強化の練習に絞り、剣士としてのノウハウを教えることにしたらどうでしょうか、ここでは魔法のみならず剣術等も教えてくれるとの事でしたが。」
「………なるほど、少々こだわり過ぎていたかもしれません、二人には剣術を教えることにしましょう………そうだ、ケン、お前はどうするんだ。」
「僕………?僕は、もう少しこっちで粘っていきたいと思ってるんですが………。」
「よし、じゃあメグミとケンは私が魔法を教える、いいな。」
「「はいっ!!」」
「………へぇ、勇者なんて、それも召喚した人間って………魔法でそんな事できるの?」
「わからない………いや、正直ありえないと言いたいが、古代文明の遺物とかならあるいはできるのかも知れないな。」
古代文明とは1万年前の創世時代、神々が作り出した様々な種族たちが作り出した文明の総称だ。
流石に神が存在しただけあってとんでもない超技術が存在したことがわかっており、いまでもたまに見つかる遺物は凄まじい性能を見せている。
「というか、コーイチと彼らって、顔つきとか似てるってリューゼさんが」
「あれは見当違いだよ、彼らはまるで知らない人間だったよ。」
まぁ、嘘はついていない、彼らとは赤の他人だ、もっとも、同族というか、同じ日本人だけど。
「………まぁいいわ、話したくないならそれで、あと、ご飯いつも用意してくれてありがとね、バイバイ。」
そういうとサンティシナは去っていく。
「………さて、俺も寝るか………なんだろうな、最近すべてがつまらないな。」
俺は突然今の生活がつまらなく感じたが、それがなんでなのかは、その日は分からなかった。
「………ここが、聖都か。」
そういう俺は笑みを隠せない。
弟子の敵討ちが出来るのが楽しいからではない、久々に手応えのある相手と戦えるかもしれないからだ。
「へっ、燃えてくるね、俺はいつもそうだ、でかい獲物しか狙わない、狙いたくない、雑魚を狩っていきるやつなんざ二流さ、俺と相対するのは………いつだって強いやつさ。」
そう言って、再び俺は笑みをこぼす。
ジャラジャラと、両手から鎖を引きずりながら。
「ふぁぁぁ、よくねたぁ、やっぱり寝るんだったらベットだ、硬い地面は懲り懲りだ………。」
俺はそう言って起き上がる、素晴らしい寝覚めだ。
「さぁて………たまには仕事をしようか、でもここじゃあ魔物を討伐したりできないし、やるとしたら賞金首の盗賊を捕まえるくらいしか………。」
もっとも、自分は何度も言ったように人間を狩ったり、狩られたりするのも懲り懲りだ、何かないかな………。
「とにかく、冒険者ギルドに行って依頼を物色するか。」
「………あっ、これなんかどうだ?」
俺が手に取ったのは1ヶ月間の商人の護衛だ、過去の記憶がそれはそれでよぎってしまうが、他よりはマシだ。
「………なるほど、ここから50kmくらい離れている町への行商の護衛か。」
依頼書の説明によればどこへ行くわけでもなくその町と聖都の往復を専門にしている商人で、輸送するものが高価なため護衛を用意する必要があるらしい。
「………なるほど、竜骨か。」
竜の骨は、工芸品から漢方まであらゆる用途で使える素材だ、貴族の飾りなどにも使用されることがあり一本で平均的な男性の収入一週間分くらいは飛ぶ、それを何百本と運ぶことになるのだ。
「報酬は金貨3枚、いいじゃないか、これにしよう。」
「………………ここだな。」
俺がそう言って指を指すのは、やつが受けた依頼の護衛対象の移動ルートだ、やつが依頼を受けたのを確認した時点で調べはついている。
やつの護衛対象の輸送貨物は竜骨だ、調べによれば工房、薬局、貴族、様々なところに卸していて非常に高価。
盗賊のせいにして簡単に誤魔化せる。
「………警戒が緩いな。」
恐らく単純にあまりにも長い間襲撃が来ていないから気が抜けている、罠とも考えにくい。
「………さて、具体的な段取りを練らないとな、ここの騎士団は馬鹿じゃない、少しでも痕跡を残すと大変だ………。」




