英雄の裏側
自分と同じ転移者がいるのか。
そのことをしっかり調べるのはこれが初めてだった。
そして、調べるためになぜ俺はいま英雄伝を読んでいるのか、それは俺のような人間を除いた大体の転移者、転生者がチート能力を持っている可能性が浮上したからだ。
彼らが何年ここにいるかは知らないが、ちょっと成功したくらいじゃ国の人間と関わりを持てるわけがないのだ、それこそ、何かしらの圧倒的な力でもない限り。
だとしたらそれなりにこの世界で暴れまわっていたはずで、何かしら記録が残っているのではないか?その手始めが英雄伝を読み進めることだった。
「………剣帝レギオン、鬼神ダグニエル、勇者セルデン、天空覇者アレギウス、発明王オーダスタイン………。」
この本にはいくつかリューゼさんの話や他の人から聞いた人物が乗っている。
例えば、剣帝レギオンは210年前魔王討伐した英雄で、神聖皇帝がレギオンは自分と同じ皇帝であるとする剣帝の称号を授けたらしい。
アレギウスは800年前背中に白い羽を生やす正体不明の謎の男で、世界各地を飛び回り、最後は天空竜に勝利して天空覇者の称号を授かった英雄だ。
勇者セルデンは1000年前、世界は黒い霧で太陽を何年も遮り、飢饉が起きた時代、その霧が邪竜のものであると突き止め討伐した男だ。
鬼神ダグニエルはレギオンのライバル、技術で打ち勝つレギオンと異なりドワーフの圧倒的なパワーで圧倒した、レギオンとは超不仲で、味方にも関わらず十数回切り合っている、最後は怪我をしたまま戦ったダグニエルがレギオンに討ち取られたそうだ。
ライバルといえば発明王オーダスタインもアレギウスのライバルで、古代の遺物を解析して空を飛ぶ魔道具を作り出した、天空竜に挑戦するものを選ぶためアレギウスと決闘して最後は敗北したらしいが。
このあたりがその物語のような人生で世界中で語り継がれてる基本的な英雄らしいが、さらに細かい豪傑のたぐいを見ていくと、目ん玉をひん剥くことになる。
【剣聖ソウイチロウ】
180年前の剣聖で、竜殺しで名を挙げた。
彼の剣技の秘密は圧倒的な戦闘センスで、誰の剣であろうとすべて手に取るように予測でき、剣はもちろん、どのような武器でもすぐに扱うことができ、不意打ちであろうと体が勝手に防御するなどの話がある。
なんと剣帝ギレオンと剣を交えたこともあり勝利している、ただしギレオンが60歳のときの話であり、ギレオンは「私がエルフだったら良かったのに」「私は若返ってあの若者にリベンジすることしか考えていないよ」など時たまジョークを飛ばして笑っていたという。
「完全に日本人じゃないか………!!」
それに、ソウイチロウの能力はどうにもチート臭いところが多い、まるでラノベ展開でありがちなスキルを覚えた途端まるで歴戦の戦士のように体が動くとか、そういうものに見える。
それだけではない、1500年前にはアキラという当時バラバラな隊列のまま適当に突っ込んで戦っていた世界で陣形、集団戦法などを導入した1万人の傭兵団の指揮官がいたらしい。
これもよくある知識チートの類だが、とにかくこの偉人伝だけでも5人ほど日本人らしき人間がいて、他にも様々な文献で日本人らしき人間が見え隠れするのだ。
何よりだ。
【勇者スバル】
700年前神聖帝国に降り立った英雄。
出身などが不明な人物で、当時の資料には天から遣わされた、儀式をしたら現れたなどの文章が散見される。
当時魔王が現れ世界は大混乱を極めた時代、迫り来る魔物の軍勢を圧倒的な魔法で蹴散らし、魔王を討伐する。
その後の彼の足跡ははっきりしておらず、天に戻っていったとも伝わっている。
「………これ、勇者召喚で呼ばれたんだな。」
俺は本をしまうと、リューゼさんに会いに行く、否、リューゼさんが魔法を教えている人たちに会いに行く。
彼らが日本人なのか、確かめなければならない。
「………ゲレッタ様、なぜ彼らの行動をこうも監視しているのですか?」
「不思議かね………?まぁいい、彼らがどんな能力を持っているか調べなければならないのだよ。」
「どんな、能力か………?」
まぁ、すぐにわかる、そういうとゲレッタは彼ら………召喚した勇者たちの姿を見る。
「これより、最初の魔法である身体強化を使ってもらう、身体強化はもっとも簡単な魔法の1つにして、もっとも高度な魔法の1つだ。」
「それ、全然意味わかんないんですが。」
そう浩二がツッコミを入れると、リューゼさんは反応して。
「初心者の身体強化と熟練者の身体強化は全く別のものと思え、身体強化は普段から魔力を燃料に体を強化している器官に過剰な魔力を注ぐことで圧倒的な力を得ることができる、そして、その強化の幅は使用者の技術、注ぐ魔力量で全く違ったものになる、初心者から上級者まで全員が使う魔法だ。」
「奥の深い魔法、ってことですか。」
そうだ、リューゼさんは自分の返事にこたえてくれると早速僕たちに使わせる。
「魔力の流れを感じてみろ、魔力が心臓のあたりに集まっているのが分からないか、そのあたりに魔力を集めれば身体強化ができる。」
「………やってみたけど………っ、なんだこれっ、なんか、すげえんだけどっ!!」
そう一足先に使っているらしい和也が、ぴょんと飛び跳ねた………はずだった、だが、彼のとんだ高さは僕の身長以上、2mほどの高さにあっさり到達したのだ。
「………ぐへぇっ!!」
そう情けない声をだして和也は落下する。
「気をつけろ、調子に乗ると身体能力に頭がついていけなくて怪我するぞ。」
「は、はぁい………。」
「せ、先生、なんだか身体強化すると、胸が、苦しくなって、ズキズキするんですけど………!!」
そう恵美が言うと和也と浩二は「うん、恋の病だな」と茶化すが顔が真っ赤で本当に苦しそうだった。
「あぁ、本来体を強化する器官は過剰な魔力の供給を想定していない、それを無理にやるから負荷がかかってるんだ。」
「そんなことやらせてたんですかっ!!?」
「慣れの問題だ、走ったりしても最初はすぐに息が切れるだろ?というか、お前達は問題ないのか?」
「えっ………はい、それがなんとも。」
「コージ、お前もか?」
「………はい、確かに何もありません。」
「馬鹿な………そこまで言うなら、もっと魔力量を上げてみろ。」
そういうと二人はさらに魔力を大量に注ぎ込んだらしく、恐ろしい能力を発揮したが、全く苦しそうな様子は見せない。
「本当に、どうなってるんだ………ケン、お前はどうだ。」
「………自分は、ちょっと苦しいですけど、割とピンピン動けます。」
そう言って自分もぴょんぴょんはねてみせる、浮き上がったり、落ちたりするときの感覚がとても気持ちが良かった。
「………なるほど、メグミは難しくて、コージとカズヤは全く問題ない、ケンはその中間くらいといったところか。」
「そんな………。」
「気にするな、他に何かできることがあるかも知れない、身体強化は簡単だから、もう次の授業に入るぞ、こい。」




