躍動
「………むむ、むむむむむっ!!?」
そう屋敷の暖炉の前のソファで居眠りしていたスリューシャは突如異変を感じる。
「………動いた………わあわあ大変じゃ大変じゃっ!!」
「ついにやつが動いたのか。」
「そうじゃ、それどころかとんでもない速度で上がってきて、このままでは地上につくのに1時間もないぞ。」
「至急冒険者を収集する、ほらそこ、急いでやってくれっ!!」
「ついにやつが動いたのかっ………!!」
「ああ、そのようだ、なんか師匠がいつの間にかいなくなってたと思ったら、ギルドマスターに知らせに行っていたのか。」
「まったく、ただでさえ当てられた部屋は前のやつよりゴミ屋敷なのに、眠る事すら許されないとっ!!」
「リサさん!!行きますよっ!!」
「待ってくださいよもうっ、こっちもいろいろ準備があるんですっ!!」
「ついに始まったというのですね………今回ばかりは戻ってこれるのか、いや………もしかしたら、彼が読んでいるのかもしれないな。」
くるっ!!くるっ!!
くるっ!!くるっ!!
やつがっ!!やつがくるっ!!
もう、そこまで、ほら迫ってるっ!!
急げっ!!急げっ!!寸刻惜しめっ!!
やつは待っちゃくれないぞっ!!
来るぞっ!!来るぞっ!!
「ァ………ァ………ァァァアアアアア!!!」
ドオォォォォン!!!
「!!!」
「ワームホールだ、魔力は温存したかったが、そうも言ってられないようだ。」
「どうしたんですかっ!!」
「………気をつけろ………やつは………魔物じゃなかった………あれじゃ………まるで………。」
「何言ってんだ………魔物じゃないなら何なんだよ?」
「あれは………あれは………。」
「………。」
ここは、クラーストキアの家屋の隙間、人一人が通れるか通れないかという隙間に、彼は座っていた。
「………トオサン。」
「誰だお前はっ、こんなところで、こんな時に何してるんだっ!!」
「………アナタハ、テキ?アナタモ、ボクヲキズツケニキタノ?」
「何言ってるんだ………とにかくこっちへ来なさい、ほら、避難するんだっ!!」
「ヤメテッ!!コナイデッ!!ナニモシナイデェェェェ!!!」
次の瞬間には、その冒険者は少年のような姿をした………魔物の腕が心臓を貫いていた。
「こっちだ、行くぞっ!!」
「はいっ、ギセルさんっ!!」
俺たちがついたとき、すでに犠牲者が出ていた。
冒険者の心臓の部分には穴が空き倒れている、そして、目の前の少年の手には………心臓。
「魔物の解体で慣れてなかったら、トラウマものですねこれは………。」
「のんきなこと言ってる場合か、ここでやつを止めないと大変なことになるっ……!!メガファイヤ・カッターッ!!」
貫通特化のメガファイヤが、少年を貫いたように見えた。
「………っ!?なぜ傷が………!!?」
その体には、傷が一つもついていない。
少年の姿がかき消える。
「っ……!!!リューゼ、コーイチッ!!」
ギセルは突然自分達の襟首を掴むと、ワープ魔法を使い俺達ごと少し遠くへワープした。
「なぜっ………!!?!?」
理由はすぐにわかった、自分達がいた場所は、直径3mほどのクレーターができていたのだ、誰がやったのか、疑いようもない、あの少年がやったのだ。
「ウッソだろ………!!」
少年の姿がかき消えたのをみたギセルは再びワープ魔法でこんどは街の外れへ飛ばす。
「あっぶねぇ………。」
「回避チートのギセルさんがいなかったら、自分たち死んでましたね………。」
「………見ろよ。」
俺たちがみたさきでは、巨大な炎が街をゴウゴウと燃やしていく。
「………くそっ、俺達がなんとかしなきゃなんないのに、敵前逃亡しかできなかった。」
「仕方あるまい………あれは俺達がどうにかなるような存在じゃない。」
「だが、やるしかない、そうだよなぁ?」
「「まぁ、違いない………!」」
ヤダヤダいいながら、ここにいるのは何度も死ぬ目にあって、それでもなお冒険者をやめなかったバカ三人組だ。
それに、その時俺達は鼻から負けることを考えちゃいなかった、絶対勝てるとそう信じ切っていた。
そうして俺たちは、再びやつのいる方向に駆け出していく。




