ある老人の過去(ボツ)
寒い。
ここは、いつも。
私は風よけ用のマスクをより深く上げる。
周囲は雪を被り、どこまでも真っ白だ、その下には、つい二ヶ月前まで、青々とした草木が隠れているはずなのに。
「ここは、寒いね。」
「いつもの事だろう?さぁ、行こう。」
私はこの北国で生まれ、この北国で死んでいくのだろう、そうふと思うときがある。
特に夢も希望も見いだせず、ただただ私は生きたいという本能だけで生きているのだろう、親の家業、というか畑を継ぎ、農作業に明け暮れる日々。
だが、そんな日々に、年に一度、凍えるような寒さと惚れ惚れするほど真っ白な雪とともに平穏を運ぶものがいる、冬だ。
ここでは夏以外農業は全くできない、私達は野菜を片端から酢漬けにして保存し、それをたべてすごすのだ。
たまに薪を割ったり、雪かきしたりすることはあるが、それ以外は大抵暇になる。
まぁ、それは私に限る話で、大半の人間は内職をして足しにしているが、私は紐を編んだりすることはない、私が取るのは、ペンだ。
「また何か書いているのか。」
「ああ、見てみるかい?」
「いいぜ………なるほど、鳥か。」
「こんな感じの鳥を夏場に見てね、きれいなんだ、それが、私はその光景を忘れられない、忘れたくない。」
「それがお前が描く理由か。」
「なにも、それだけでもない、これを広場で遊ぶ子どもたちに見せてあげると喜ぶんだよ、君もなにか描いたらどうだい?絵の具のたぐいは貸してあげるよ?」
「そんな柄に見えるか?」
そういうので私は彼を見ると、彼はとんでもない変顔をして私は腹を抱えて笑ってしまう。
「なるほどぉ、その顔ができるならペンも絵も必要ないよ!!そのまま言っておいでよ。」
「やだね、近頃のガキンチョは可愛げも何もないんだ、こんな顔見せたら死ぬまで笑われるぞ?見せるのはお前だけだよ………。」
だが、その時私は必ずしも平穏な日々を歩んでいたわけではなかった。
なぜならその時我々の国は………戦乱のさなかだったからだ。
「ここにも、兵が駐屯するのか………物騒な世の中になったものだよ。」
「こんな豪雪の中でわざわざ殺し合いなんかしなくてもいいだろうに、隣町を敵軍が占領しているらしい、もう数日で会戦が始まるだろうな………。」
私はその会戦を見ている、真っ白な雪に血が飛び散るところも、首がはね飛ぶところも。
そして、敗走していくところも。
「本日よりこの街は我々が占領する!!」
そう広場で豪勢な服をきた指揮官らしき人間が宣言するのも見たよ。
「酷いことになったな。」
「他の戦いでも負ける一方らしい、敵軍は数も、質も、こっちより上だよ。」
「これより食料を徴収する、家の中に入らせてもらう。」
「ちょっと、待ってくださいっ!!」
兵士たちはズカズカと中に入り、家の中を回っていく。
「この裏とかじゃないだろうな!」
食器棚や本棚などをどかしたり、ソファをどかしたりして、丁寧に調べていく。
「待ってくださいっ!家は隠したりなんてしてませんよ!!」
「うるせぇ、どこの街行ったっているんだよ、こういうときくいもん隠してごまかす野郎は、ほら、そこのやつぶっ倒しちまえ!」
兵士たちはそう言われて棚の一つを倒してしまい、中に入っている食器が割れる音がした。
「そんな………!!」
「こっちに食料庫です!!」
「でかした………へへへ、そうだな、3分の1くらい貰っていこうか、さぁ、やれっ!」
「………ひっどい事するなぁ。」
「知ってるか?奴らの兵士の合計は3万人、普通にやったら3万人の食料を毎日運ばなきゃならん、一日くらいなら何とかなるかもしれないが、その後は無理だ、だから軍隊はこうして略奪で食料を賄うのさ、なんてことの無い、いつもの事だよ。」
「………あぁ、そうなのか、なるほど。」
「………お前はこんなときでも間が抜けてるなぁ。」
「おらぁっ!!」
「大将、やっぱり隠してましたよ。」
「あぁ、そうだな、へへへ、さあ、ここのやつ全部持っていけっ!!」
「待ってくださいっ、そこのやつまで持っていかれたら本当に、私達はどうすればいいんですか!!?」
「知らないね、それを考えるのはお前らの頭だ、俺に聞かれても困る。」
「ママ、どうしたの?」
「!!!だめ、あなたは下がってなさい!」
「お〜?ぼっちゃぁん、君、君のママこれから僕達が連れて行かなくちゃなんなくなっちゃったよぉ、君のママ犯罪者だよぉ?」
「何言ってるの?僕のママは、何もしてないよ。」
「したんだよそれが、ここにな、食料を隠していたんだよ坊っちゃん。」
「やめてよ!僕たちの作ったものだよ、ママが父さんもいないのに育ててくれたんだよ、朝仕事があったのに、夜までかけて酢につけて保存してくれたんだよ、だからやめてよ!!」
「うるさいなぁクソガキッ。」
兵士の一人は男の子の額に指を一本置いて、それでゴンッと押す。
たかが指一本とはいえ大人が7歳ほどの子供にしたのである、男の子は後ずさりして尻もちをついてしまった。
「あぁ、あと奥さん、これからちょっと野営地まで来てもらいますね。」
「えっ!」
「当たり前でしょ命令無視してんだから、法律違反ですよ、えぇ?」
「でも、そうしたら子供は………。」
「だーかーら、知らねぇつってんだよゴタゴタ言うな!!ほれ連行しろめんどくせえ。」
「やめてっ!!離してくださいっ………。」
「どうする?くいもんがもうねえな。」
私はそう彼に言われてうなずく。
「彼らは食料は持っていくけど、お金のたぐいはまだ手を付けていない、今のうちに買い出しでも何でもして、食べ物を調達するしかないだろう。」
「仕方ないな、どこに行くんだい?」
「そうだな、ちょっと別の街の方に行ってみようか。」
「………しかし、この雪だぜ、いくら俺たちが雪に強いからって、この中歩くのはゾッとしないわな。」
「いいだろ?俺よりお前のほうが力も体力もあるし、このヒョロヒョロの手足で私はこれから歩こうっていうんだよ?」
「ハハハ、そりゃ大変だ!」
「くっそぉ、なんでこんな時に出くわすんだ!!」
私達は雪の中を走っていく、その後ろを狼たちがついてくる。
「くっそぉ!!」
彼は手頃な石を投げつけるが、狼たちはびくともしない。
「………駄目だ、私はもう無理だよ。」
「なんでだよっ!!」
「言っただろ、自分の手足はヒョロヒョロだ、君みたいにガッチリした体はしてない、もう私は限界だ、おいてってくれ。」
「馬鹿野郎!!そんなん死ぬようなもんじゃねえか!!………よしわかった、俺があいつらを足止めする、これでも俺は、冒険者登録もしてるんだ、やってやるさ。」
「なっ………!!」
「分かったならとっとと行けっ!!」
私は逃げてしまった、友人をおいたまま。
冒険者ランクだって、彼は彼はEランクだったのに。
死ぬ、そう確信していながら僕は一切止めずににげてしまったんだ。
彼は、私のために体を張って足止めしたというのに。
私はこの時代、様々なものを見てきた。
敗走していく自国の軍隊。
燃えていく街。
だが、一番衝撃を受けたのは、帰り道、狼に引き裂かれた友人の姿だった。
「ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
私は、何度後悔したかわからない、私が囮にっていれば、否、そもそもあのとき鞭をうってでも走り続けていれば。
そして、私はいつの間にかあの狼達に囲まれていることを知った。
私は凡人だった、何もできやしなかった、そこで私は死ぬはずだったのだ、友人のように。
だが、運命の歯車はその時狂った。
ザシュッ、そんな擬音が似合うような動作で狼の首は飛んでいく。
ザシュッ、ザシュッ。
「なんだ……っ!!!?」
私の胸にはいつの間にか矢が刺さっている。
「すまない、これも仕事でな、これからあのクソッタレどもの首をできる限り多く刈り取らねばならんのだよ、そして、逸れを誰にも悟られるわけにはいかんのさ。」
よく覚えているよ、黒いフードを被り、マスクをつけたその男は手にクロスボウを持って今にも引き金を引かんとしていた。
そして私といえば、冗談ではなかった。
私は一切避けずにその男に歩いていく、そして一発二発と私の体に矢が生えていく。
ついに私は鬼の執念で男にたどり着き、そのクロスボウを掴んで、言ったんだ。
「まだ死ねない、友人の死に関係したありとあらゆる人間が死に絶えるまで。」
「………そこに転がっているのがか。」
「見てたぜ、その様子を。」
「お前は何も言わずに立ち去っていたよな。」
「馬鹿馬鹿しい、殺したのは他ならぬお前だよ、ならばここで死ね。」
「………たしかにそうだ、私はお前が見逃しても腹を括って死のう、だがそれは今じゃない、今じゃないんだ!!」
私のそれは、最後悲鳴のようになっていた。
「………いいだろう、気に入った。」
それが、私に暗殺のノウハウを教えた、我が故郷にして亡国となった、国軍の暗殺部隊の男だった。
廃「あ〜あ、最近更新急ぎすぎて文のクオリティが下限突破してるなぁ。」
廃「せやったまには本気になって書いてみるか!!」
結果↑
これどうですかね、こんな重くて大丈夫かな?ぶっちゃけ大丈夫じゃない気がする。
こんなん完全に幸一くん聞いちゃいけないこと聞いちゃいましたよね………。
これはちょっと………ボツなんですけど、ちょっとコレジャナイ感というか、書くところ間違えた気がするので。
ただ、あまりにも勿体無いんで、これはこれで別として上げます。




