正体不明
「やっとギルドに戻ったな………。」
「あのあとさらなる追撃を警戒して、弾丸登山しましたから、もうヘトヘトですよ………コーイチさんのせいで。」
「追撃なくなったあとは降りてただろうがっ!!」
俺達はそんな軽口を叩きながら歩いていく。
すると、入り口に立っている兵士が走ってくる。
「おい、お前ら大丈夫か?なにか迷宮で起きなかったか?」
「それが、60階層で魔物の集団に襲われて、しかも下層から上がってきたものらしくて…………。」
「そうか………。」
俺達はひとまず魔石をさばくためギルドの方に歩いていく。
ギルド内に入るといつもとは別の種類の騒々しさが充満している。
「………あの、これをお願いします。」
「………っ!はい、すみません、別件でかかりきりで………。」
受付嬢も慌てている。
「どうしたんだろうな………。」
そう言うと後ろから声をかけてくる人間がいる、リューゼさんだ。
「150階層で異常な強さの魔物にやられて全滅したAランクパーティがいてな、その最後の生き残りがとんでもない魔物がいたと言ってるんだよ、本当なら、多分200階層、Sランクがうようよするあたりから上がってきたのだろうと大騒ぎだ。」
「AランクパーティがSランク1体相手に全滅するんですか?確かに強いのはそうですけど、ワンランク上がっただけじゃ劇的な変化はないですよね?それこそ、SSとか、SSSとか、SSR?」
「いや、それはありえない、確かにかつてはそのようなSの上が存在すると考えられていたが、ある天才冒険者がSランクに20歳で到達し、Sの上へ到達することを期待された、だがそいつはついに超えられなかった、なぜならある一定以上から魔力量を上げることができなかったからだ。」
そう、実は一度にため込める魔力量は、魔力を消費すればするほど少しずつためれる量が増えていくのだ。
自分も魔法を使っているうちに少しずつ上がり、魔力量は圧倒的に上がった。
「そうだ、魔力量は高位冒険者の肝だ、あらゆる能力が魔力量で決まる、だからそれが上がらないということは、もう上には絶対にいけない。」
「しかし、ギセルさんは魔力量に限界があるなんて言ってませんでしたが?」
「まぁ、教えるわけが無い、魔力量の壁に当たったのはSランクの中でも大英雄と呼ばれた数人に限られる、普通は気にする必要がないんだよ。」
「で、もしかしてそれって魔物でも同じなんですか………?」
そう言うとリューゼさんはうなずく。
「そうだ、この壁だが、実は魔物と人間で違いはない、だから魔物でもSランク以上はありえないんだ。」
「じゃあ、なんでAランクパーティが一体の魔物で壊滅するんですか………?」
「わからない、だが、やばいってのはわかる、だからみんなざわついているんだ。」
「ギルドマスター、冒険者からの報告によれば、下層から魔物が次々と這い上がって来ています。」
「なるほど、ブロークンを壊滅させたあの魔物が、他の魔物を上へ上へとおいたてながら上がってきている、と考えれば辻褄が合う。」
そして、といいギルドマスターは口を閉じる。
それはつまり、規格外の魔物が一寸の間違いもなく存在して、それが上がってきていることを意味する。
「まずは、想定される魔物の迷宮からの氾濫、つまりモンスターパレードだ、これの対策を練らなければなんにもならない、直属冒険者はもちろん、冒険者を至急可能な限り収集しろ、そうでなければ、この都市が更地になるぞ。」
「はっ、わかりました。」
「それと、周辺都市からの支援もかけあってくれ、なんでもいい、金でも何でもいくらかけても構わない。」
職員が出てくると、ギルドマスターは回転椅子を動かし、窓の方向に体を向ける。
「正体不明の超高レベルの魔物、そして、その迎撃、それが成功すれば、また私の輝かしい実績に花が加わるな、最も、都市が消し飛ぶかもわからないが………しかし、どんな魔物だろうな、少し興味が湧いてくる。」
そう言うと、ギルドマスターはニッと笑った。




