冒険杯 4
「2回戦は………!?」
「ようガキ、またあったな。」
俺はその大巨漢に圧倒され後ろへ後ずさる。
ガトレットだ。
「恐ろしい偶然だよな、まさかてめえとやることになるとはなぁ。」
「………。」
「いいか、俺はてめえが40階層を突破した事も、Cランクになったことも、全く持って認めてねぇ、試合結果が楽しみだ、合法的にタコ殴りにできるからな。」
かつてないほど敵対心をむき出しにして話しかけてくるガトレット。
「………俺も楽しみですよ。」
そう去り際にそう言ってやる。
物音で奴が振り向いたのは知っていたが、そのときもう俺は扉の向こうだった。
「始めぇっ!!」
「ウォォォォ!!!」
ガトレットは未だかつてないほどの高速で俺に迫り、俺のとっさのファイヤボールも軽々と散らしてしまう。
そして、俺の剣とガトレットの剣が衝突し、それは拮抗している。
俺はガトレットの動きを見て、早々に評価を上げさる負えなくなった。
30階層のスケルトンと同等?とんでもない、このスピード、も、この力も、何より圧迫感がまるで比べ物にならない。
流石にDランク十人束ねているのは伊達ではなかったと言うことか。
俺はとっさに押し合いを外し、飛び退く。
やつが迫ってくるのを実戦で地味に初めて使う初級シールドで塞ぐ。
「クソがっ!!」
ヤツはそれを見て飛び退き、俺はそのシールドをサッと消す間、消したあとどうするかを考えていく。
やはり安定のメガファイヤでの攻撃だろう。
そう即座に決定を下して俺は極大火球をやつに放った。
ヤツはそれを回避しようとするが、俺は魔力糸で誘導している。
あともう少しのところでヤツは急に方向転換して、メガファイヤは脇にそれていく。
「ハァ!?」
「年季がちげえんだよばぁぁぁか!!」
ガトレットは腕力でガンガン押してくる、こっちの魔力は余裕がないが、あっちはこの調子ではいくらでもやっていられるだろう。
切り合いは続いていく。
あれから3分、未だに決着はつかない、魔力は身体強化に絞るがメガファイアが一発撃って終了くらいだ。
だが、ガトレットもかなり疲労が濃い。
「なんで死なないっ!!」
「こっちのセリフだっ!!」
俺はそう言い返すと勝負に出る。
一瞬でその場を飛び退き、俺の体は宙を浮く。
「メガファイヤァァァ!!!」
俺はそういって極大火球を撃つ。
僅かな魔力を絞って魔力糸を生成、それを使って誘導していく。
「くそっ、こんな時にっ!!!」
ガトレットは必死に避けようとするがあっちの動きはかなり鈍い、だが、こっちも疲れて操作がおぼつかない。
「コーイチッ!!振り絞れっ!!」
そうリューゼさんの喝が聞こえたとき、俺は精神力を総動員し、全力で当てにかかる。
「うぉぉぉ!!」
ガトレットがそのとき、右に急転回した。
さっきのフェイントだ。
このままでは、避けられる。
「なんのぉぉぉ!!!」
俺は最後の力でメガファイヤを90度旋回させて、ガトレットにぶち当てる。
「俺が負けるのかぁ!!こんなガキにぃ!!」
ガトレットは、火球に包み込まれた………。
「そこまでっ!!」
立っていたのは、俺だった。
「ほう、勝ちましたか、さすがだ。」
観覧席のところで、手すりに寄りかかっていたクルードは呟く。
「あの人を見ると、私の若い頃を思い出す………いや、私の薄汚い半生と、彼を比べるのは失礼か。」
そういって悲しそうな顔をすると、クルードは三回戦に向け下に降りていく………。
「ほう、AランクとAランクか………。」
「そうみたいですね。」
「………あの、自分勝ってきたんですけど。」
「あぁ、そうだな。」
「………。」
なんだか反応が薄い、というかこの人達自分の試合見てくれてたんだろうか、いや、あの喝を聞いたあたり聞いていたのは間違いないが、何というかなぁ………。
「コーイチ、またクルードの試合だ、それもAランク同士だ、ちゃんと見ておきなさい。」
そうギルドマスターがいう。
「はいはい………。」
「どんな人だと思えば、なんてことはないご老人でしたか、正直がっかりですよ。」
「………。」
「まぁ、いい、せいぜいワタクシを飾る花の1つとなりなさい!!」
クルードの相手は魔法使いだ。
俺のような微妙なごちゃまぜではなく、正統的なスタイルだ。
始まれば、彼はいきなりメガファイヤを3連続で撃ち出していく。
ボールクラスなら剣で打ち消すなりできるがメガファイヤはどうするのか………。
クルードさんはどこからともなく鎖を出す、よく見ればそれは袖から伸びているのがわかる、あそこに仕込んでいつでも出せるようにしているらしい、前にいきなり出したのもそのためだろう。
クルードさんは鎖を3mほど出して振り回す、相変わらず凄まじいスピードだ。
それは突如縦横無尽に振り回され、メガファイヤはクルードさんを包み込み………それは尽く消滅した。
訓練場で戦慄がはしる。
次の瞬間、相手の魔法使いに凄まじい勢いで鎖が飛んでいき、それはとっさに発動中級シールドにヒビを入れる。
1発、2発、3発。
「なんていう威力だっ……!!」
男はシールドを解除し、眼前に迫る鎖を、なんと地面を変形して作った土の手で掴んだ。
男に余裕が浮かぶ。
土の手はズルズルとクルードさんを引っ張りクルードさんはジリジリと引っ張られていく。
そして、そのときクルードさんの周囲に様々な魔法が生み出される。
魔法がクルードさんに次々向かい………クルードさんは鎖を放す事で対応する。
「アレがここまで追い込まれるのは初めてではないか?」
流石にAランクというところか、そうリューゼさんは最後に付け加える。
魔法をドンドンかわしていくクルードだが………。
一瞬メガファイヤよりさらに巨大な火球が生み出されたと思えば、それは霧散していく。
「メガの次は………ギガファイヤミスト………??」
「そうだ、私のメガファイヤミストの上位魔法だ。」
それはものすごい勢いで広がり、あっという間にクルードさんを包み込む。
そして、すべてが終わったとき。
「なるほど、鎖はもう片方にも仕込んでいたと。」
「考えてみれば当たり前か………。」
クルードさんはもう反対の手から鎖を出していた。
そして見事に霧を寄せ付けずにいた。
「………これ、まずくないですか?さっきのギガファイヤミストで魔力を相当消耗してるんでしょう?」
「なるほど、流石にその手の筋の人なだけはある。」
男はクルードに魔法を放つが、それらはすべて鎖で散らされる。
「あぁっ!?」
見れば、いつの間にか男の手に鎖が絡みついているではないか。
男は抵抗するが、前衛と後衛では話にならない、クルードさんのときより遥かに早く引きずられていく。
そして間近まで来たところでメガファイヤを最後の抵抗で打ち出す。
クルードさんは走り出した。
「あっ……!!」
男はクルードに掴まれ、そしてメガファイヤの方に盾として向けられる。
その時点でもう目と鼻の先、魔法を解除する間もなかっただろう。
すべてが終わったとき。
そこには無傷のクルードさんと、
黒焦げになった男がいた。
「そこまでっ!!」




