冒険杯 3
俺の一回戦の相手はDランクの男だ。
全身甲冑と大剣で身を包むのはいつぞやのジャイアントキリングを思い出す。
まぁ、あっちはさらに重装備で軽快に走り回っていたが………。
「よろしくお願いしますっ!!」
「ハイッ!!」
俺は剣を引き抜き相対する。
「始めぇっ!!」
そう審判が叫ぶと奴は突進してきた。
まぁ、何にせよ前衛じゃそうするしかないだろう。
「ファイヤボールッ!!」
俺はひとまずファイヤボールで様子を見る。
俺の魔法はやつの剣の振り下ろしで散らされた。
「流石にそうなるかっ………!!」
今度は、本気で行く。
「メガファイヤッ!!」
俺の最高火力、どうなるっ!!
奴はそれを避ける素振りも見せず、真正面から受け止める。
そして、かなりボロボロながらそれを突破してきたっ!!
「フンッ!!!」
やつの大剣を受ける。
衝撃で腕が痛い。
「ハァッ!!」
俺はそれを押しのけると、何度も切る、切る、とにかく切る。
だが、抜けない。
「この鎧はっ!!この日のための特注なんだよっ!!」
さてどうしたものか、俺は再び下がってメガファイヤをぶっ放すが、まだヤツは倒れない。
動きが鈍くなければこれはCランクになってたんじゃないか………?
その時、鎧のある一点に俺は気がつく。
俺は魔法も撃たずに近づき剣で戦う。
「無駄だ無駄ァ!!」
「どうなんだかっ!!ここっ!!」
俺は剣をしまい、解体用のナイフを鎧の隙間に差し込みガリガリとひんまわす。
「ァァァァアッ!!!?」
「そっ、そこまでっ!!」
鎧は当然の話、ひとつなぎになっている訳ではない、関節等に隙間が存在する。
俺はとっさにそこにナイフを差し込んで攻撃する事を思いついたのだ。
確かヨーロッパの方でも全身甲冑の兵士は中々殺せず、戦闘不能にしたあと短剣で隙間から止めを刺したと聞いたことがある。
何にせよ、これで一回戦は勝ちだ。
「………あの人、勝ち上がったのか。」
俺は試合表をみてつぶやく。
見れば、あの老人………クルードというらしいが、彼は一回戦を制していた。
その時の戦いは見ていないが、あの老人も只者じゃなさそうだ。
「というか、このままお互い勝ち上がれば準決勝で戦うじゃないか。」
まぁ、どっちもそこまで行けるかわからないが、あの奇妙な老人と戦うかもしれないと思うとなぜか寒気を感じた。
「………まぁ、何にせよまずはクルードさんの試合を見てからだ。」
「リューゼさん、今日は来てたんですね………!?」
「やあ、コーイチくん、お邪魔してるよ。」
なんでギルドマスターがいるんだ………!?
「それより、そろそろクルード君の2回戦だ、君も一度見ておいたほうがいい。」
「ギルドマスターもクルードさんに注目してたんですね。」
「注目も何も彼をスカウトしたのは私なんだがね………ほら、始まったぞ。」
「あなたがクルードさんか、なるほど、只者じゃあないようだ。」
「………。」
「中々強いらしいが、今回は私が持っていくよっ!!」
老人改めクルードさんの相手はBランク冒険者の戦士だ、と言っても今までのようなパワータイプではなく、素早さで勝負を仕掛ける細身の人間だ。
その外見通りに素早い動きでクルードさんに肉薄して斬りつける。
それをガードしたのは鎖ではない、杖だ。
「なっ、なんで切れないんだ?」
「ここだけの話ですが、あれは木製に見えて中身はミスリル製らしい、彼から聞いたことがある。」
クルードは相手の攻撃を難なく杖でいなす。
その時、相手の戦士の速度が上がる。
「!?!?見えないっ!?」
「自分は魔法職だが、戦士を極めればあんな事ができるのか………!!」
男は軌跡を描き、残像が残り、そして切っ先はクルードへ………。
次の瞬間、クルードの姿がかき消える。
男は周囲を見回し、そこで違和感を感じたのだろう、その体を見れば、そこには鎖が何十にも絡みついている。
「まぁ、彼はいろいろな使い方をしてましたが、鎖を武器として使うなら、これが王道と言うものでしょう、相手を縛りあげて、身動きを取れなくするというのは。」
クルードは、彼の後ろに回り込んでいた、そして、杖の先端の部分を取り外すと、そこからは鋭利な切っ先が出てくる。
男は抵抗してまともに動けない中剣をなんとか振り回すが、それを難なく交わして、切っ先を顔のギリギリのところで止める。
「そこまでっ!!」




