垣間見える過去2
ギセル視点
「………!?なんだぁ!!?」
俺はさっと壁にあいた穴に腕を向けて、魔法を撃ち出す準備をする。
「………私だ、鍵がかかってたのでな。」
「………懐かしいな、これは学園の教科書じゃないか。」
「片付ける気にならんでな。」
「しかし………これはいささかひどいと思うぞ、なんだこれは………。」
リューゼは呆れ顔で部屋を見回す。
「………お前の寮はきれいだったが。」
「あのなぁ、学園時代の俺といまの俺を比べるのやめてくれないか、お前だってあそこまでキレイにするのは無理だっただろ?」
「今は出来るようになったぞ。」
「…………。」
はぁ、全くこいつは………。
どこまでも、魔法どころか全てで完璧を目指しやがって………何やったって、新しい壁が見えるだけなのに。
「しかし、なんのようだ、お前、言い分次第では騎士団に突き出すからな。」
「お前がなぜここまでおちたのか、その理由を知りたくなったんだ、15年ぶりにな。」
「………教える気はない、鼻で笑い飛ばせるようなクソみたいな理由だ………全く、しつこいやつだ、俺がやめてしばらくもそうだったよな………。」
「流石に1年も粘られてはこちらもひかざる負えなかったがな。」
フフッ、そうお互い最初に笑い、それがやがて大爆笑になっていく。
「ハハハハ………なんでこんな事で笑ったんだろうなぁ、まぁいいや………だが、駄目だぞ?絶対だ。」
「………じゃあこうしよう、俺とお前で勝負するんだ、それで私が勝ったらお前はそれを教えるんだ。」
「おいおい、まさか俺が勝っても何も無しとは言わないだろうな?」
「フム………じゃあ、金貨5枚でどうだ。」
「乗った!!………しかし学園で五本の指に入った優等生が賭け事とは、中々お前も染まっているようだなぁ?」
そこでお互い再び爆笑した。
こうして試合は冒険者ギルドの訓練場にて行われる事となった。
Cランク冒険者の中でも最上位を誇るリューゼが試合を行うという話はまたたく間に伝わり、話の翌日にいきなりやり始めたというのに多くの人間が集まった。
そして冒険者達は足を運んで驚いた、なぜならリューゼと向かい合うのはなんとも貧相なひげもじゃのオッサンだったからだ。
髪はボサボサ、白衣?は真っ黒、歯なんて真っ黄色で数少ない女性冒険者はその歯の色でノックアウトされた。
「さぁて、いっちょやろうじゃないか!」
「ギャラリーも集まったところだからな!」
そう言うなり開始の合図も待たずお互い魔法を撃ち合い始める。
まずギセルが出したのは極大の火球、いつも両者が使うメガファイヤである。
対してリューゼは未だ出した事のない水の極大水球である。
それらは中央で激しくぶつかり………メガファイヤが水球を貫く。
しかし、この時蒸気で煙が沸き立ち、リューゼの姿を見せなくする。
「これは………外したか!」
その煙が人為的におこされたことを瞬時に理解したギセルは、火球を避けるためだと目星をつける、当てずっぽうで証拠はないが、リューゼの笑い声がそれを肯定する。
「ご名答!!景品はこいつだ!!」
次の瞬間、不可視の空気弾がギセルに直撃する、ギセルはバランスを崩した。
「いってぇな………!!」
「もらったぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「観覧席からは煙で見えませんね。」
そうサーラが言うとギルドマスターも頷く。
「だが、どうやら初手はリューゼがとったようだ、流石に実践経験が違うな、だが、この程度で負けるようなら最初から試合などせんだろう………。」
次の瞬間、煙が晴れた先には、クレーター、それはギセルが立っていた場所だったがそこには白衣の切れ端1つない。
それもそのはず、ギセルはリューゼの後ろで不敵に笑っていたからだ。
「まさか、お前に限り俺の二つ名を忘れた訳ではあるまい。」
「『絶対回避』ギセル………か。」
そのそっけない言い方に似合わずリューゼの顔は厳しいものだ。
「ワープ魔法。」
「かつて俺はお前と戦い一度だけ苦戦した事がある、俺はその時のお前を上回る足の速さを活用し魔法はすべて避けた………。」
今じゃ面影の欠片もないがな、そう苦笑いしながら言って、更に歳とは怖いな、と付け加えるギセル。
「だが、広範囲攻撃魔法を避けられず仕方なくガードし、危うく死にかけた、もっともお前の魔力も切れて勝つことができたが………それ以来マトモに受けず攻撃は避けてきた俺にとって死活問題のこれをなんとかしようと日夜奮闘し、たどり着いたのがワープ魔法だ………!!」
リューゼはサッと駆け出してメガファイヤを乱打する。
計5発。
それらは着弾のとき凄まじい爆音を立て、再び周囲は煙で包まれる。
「訓練場持つんですか!?」
「さぁ………私が軽く暴れて問題なかったから大丈夫なはずだ。」
ギルドマスターも自信なさそうに言う、ちなみにギルドマスターはあらゆる魔法の使用を戦闘時以外禁止されている。
煙が晴れるとまたしてもギセルはいなかった。
「これが俺の必殺技だ。」
その声は、リューゼのすぐ後ろから聞こえた。
「嘘だろ………!」
そう冒険者の1人、魔法使いらしき人間が呟く。
ワープ魔法は戦闘中に乱打できるものでは無い、魔力の消費もさることながら本来難しくて魔導書片手に数分かけて発動するものだからだ、リューゼやギセルはポンポン使っているが、それは学園にて正規の教育を受け技術だけなら他の追従を許さないからだ。
もっともリューゼも魔力が足りず5回使えれば上々なのだが、ギセルはその気になれば20回は連続で使う事ができる。
「行くぞっ!!」
ギセルはメガファイヤを撃ち出し、リューゼはそれを中級シールド魔法で防いだ。
激しい魔法の乱打戦が巻き起こる。
大きい魔法で防御をこじ開け、小さい魔法で隙間から攻撃。
ただ撃ちまくっているように見えてそれは将棋やチェスの様相を示していた。
「流石だ……!ギセル!!魔法の腕だけは鈍っていなかったか!!」
「成長もしてないけどな!!そっちはだいぶ腕を上げたじゃないか!!」
お互い不敵に笑う。
だが、リューゼはすでに限界が来ていた。
このままではアレが使えない。
だが、今出しても防がれる。
「どうする………?」
そう戦いながら呟く。
その時。
「………全開するぜ!!」
「最初からしろっての!!」
瞬間、ギセルの体がかき消える。
ワープ魔法。
その時、リューゼのこれまでの戦いの経験が叫んだ!!
「流石にわかるんだよぉ!!」
リューゼは後ろに彼が使える唯一の上級魔法、『ギガントロックチェーン』を発動する。
それはギセルをがんじがらめにする。
「なっ!!………だが、これもワープで………あんれぇ!!!?」
「この阿呆が!!その鎖にふれている間はワープ魔法を妨害して組み上げられなくされるんだ!これで真っ向からやれるっ!!」
リューゼは渾身の魔法を放つ。
ファイヤにはファイヤボール、メガファイヤ、ギガファイヤが正統な進化系として存在するが、その派生が実はそれぞれ何種類ほどある。
「『メガファイヤ・カッター』!!」
メガファイヤを圧縮し、貫通の一点に特化させた魔法。
この手の魔法はオリジナルより数段難易度が高く最悪爆発の危険もあるが、リューゼはそれを難なくこなし、ギセルの心臓めがけ飛んでいく。
「くっそ!!シールド!!」
ギセルは上級シールドを発動し、防御する。
それらは長い間拮抗する。
長い、長い間。
「「うぉぉぉぉぉ!!」」
「私の、負けか。」
そう言ってリューゼは膝をつく。
目の前にはギガントロックチェーンを引き千切り開放されたギセルがいた。
「………金貨、5枚か。」
「………いいぞ、持ってけよ。」
リューゼはそういって倒れた。
息遣いが荒い。
それを見てギセルが上を見て考えながら口を開く。
「………なぁ、その金でさ、一度やりたかった事があんだ………こないか?」
魔法を妨害される筈なのに普通にシールドを発動する
ギセルェ………。
当然修正、申し訳ない………。




