決戦のとき!そして………。
広場の中央で凄まじい切り合いが始まる中、自分はといえばずっと広場の奥の門を注視していた。
高さは7m、明らかにゴブリンエンペラーに合わせたサイズだ、おそらくあれがやつの寝室かなにかなのだろう。
『あ、あの………!まだいるんです………一人、あっちに連れて行かれて………。』
おれは比較的元気だった女性の言葉を思い出していた。
「………だが、そうなればあの中を突っ切らなければならない………やはり決着がついてからでなければ…………。」
「こんのぉ!!」
「マダクルカァ!!」
ジャイアント・キリングとゴブリンエンペラーは一見互角な戦いを繰り広げていた。
しかし、実際はジャイアント・キリングのメンバーは少しずつ傷をつけられているが、エンペラーには一撃も入っていない。
エンペラーの足元を見れば、地面がちょくちょく揺れたり振動したりしているのがわかるだろう。
リューゼさんがちょくちょくバランスを崩そうと土魔法で地面を振動させてはいるのだが、でかすぎるのかちょっと揺れたくらいではビクともしないのだ。
それに、Cランクの剣士も加勢しようとはしているのだが、巨大ゴブリンに阻まれている、こっちは時間をかければ倒せるが、ジャイアント・キリングが力尽きるまでに加勢できるから五分というところだ。
こちらも土魔法で地面を振動させて妨害しているが、残念ながら全く損害が与えられてはいない。
「くそっ………どうすればいいんだっ!!」
「俺がいくっ!!」
Dランク冒険者が何人か駆け出していく、もちろんエンペラーではなく巨大ゴブリンの方ではあるが、それをみて次々と駆け出す。
「………シャア!!先輩に負けてられるか!!俺達もいくぞぉ!!」
「「「おうっ!!」」」
Eランクの人間もそれに合わせて突撃していく………。
巨大ゴブリンの骨の大剣がブンブン振り回される。
そのせいでランクの低い人間はまるで近づけないが、俺のような遠距離武器をサブで持つ人間は既に取り出して補助に回っている。
「さて………新しい相棒だ………!!」
おれが取り出したのは普段の弓ではなく、クロスボウだ。
銀貨20枚とかなり値がはるが、ろくに練習してない弓より3日も練習すれば使えるクロスボウの方が遥かに頼れるという理由により、決戦に備え有り金叩いて買ったのだ。
それでペチペチ攻撃するうちに巨大ゴブリンはボロボロになっていき、骨の大剣もへし折れていた。
これで低ランクも近づける。
剣を取り出し全員でトドメをさそうとしたときだった………。
渾身の巨大ゴブリンの拳が俺の隣の冒険者に迫る。
若い、非常に若い男、いや青年だった、15くらいだと思う………。
そして、拳はついに獲物を捉えた。
そいつをかばって前にでた、俺の胴体に。
「がはっ…………!!」
おれは凄まじい衝撃で吹き飛んだ。
宙を待っているのが分かる。
空中に浮き上がる感覚が妙に気持ちいい。
それは落下にかわり、おれは3m程の高さから地面に衝突した。
リューゼ視点
「コーイチ!!?」
視界の端でコーイチが宙を舞うのを見て思わず手が止まる。
彼と出会ったのはDランクの昇格試験のときだった。
所詮Eランクだろう、そう舐めてかかっていたが、彼は恐ろしいくらいの手札をすべてぶつけ私に戦いを挑んだ。
正直立ち回りだけならCランクに匹敵するだろう、だが彼には致命的な弱点があった。
攻撃力の不足だ。
彼はDランクなら絶対に貫けなければならない初級シールド魔法をついに貫くことができなかった。
内心落とすか迷ったが、欠点を抱えたまま昇格させるのはコーイチのためにならない、そう思って昇格は先送りにした。
その気持ちを私は抑えたが、逆にそのせいで正直傷つけるような物言いになってしまった。
こいつは、惜しい。
教官をやる事は珍しい事ではなかったが、こんな気持ちは初めてだった。
それからちょくちょく冒険者ギルドで会ううちに、少しずつ彼との中は深まった。
そして今回の掃討戦では彼に囚われているであろう女性の救出を任せた。
下手なDやEに任せる任務ではない、だがCランクは貴重な戦力だ、引き抜くわけには行かなかった。
町に送り届けるためにこの戦いのうちに戻ってくる事はないだろう、そう思っていたが、彼は帰ってきた、どんな手を使ったのかは知らないが、色々不思議の多い彼だから、まぁあまり気にしなかった。
死者が出ることは十分覚悟していた、それがまさか、彼になるとは………。
「おいっ!支援を頼む!!」
そうジャイアント・キリングのメンバーの一人がこちらに叫んだので私ははっとなり、支援を続ける。
いつも使うメガファイヤでは致命打にならない、地面を揺らすのでは妨害にならない。
見ればあの巨大ゴブリンも倒れ、CランクやDランクが駆け出してきていた。
ここで、決める!!
「大技を使う!!それで足を止めるから、その間に決めてくれっ!!」
そう私は叫ぶ。
私は外の世界で魔法を学びたい、そう思って森から出てきた。
そうして私はエリート魔法学園、『ガンチュエン』に入学し、順調に成績を伸ばした。
元々エルフは魔法の種族だし、何より生まれたものは例外なく最初から魔力操作ができる。
だが、ついに超えられなかった壁が存在した。
清々しいまでに高潔で、努力家で、才能があった、人間にもかかわらず私は彼に圧倒されたのだ!!
彼を倒すために私は学園生活中に、BやAが使う上級魔法を一つだけでも使えるようにすることにした。
数多の努力の末、ついにそれは成功する。
「上級拘束土魔法、『ギガントロックチェーン』!!」
地面が盛り上がり、巨大な鎖がゴブリンエンペラーの足をがんじがらめにする。
これでやつは動けない!!
「クソッ!!」
しかし、私は悪態をつく。
全魔力を集中しても、私は肝心な両腕を拘束できなかったからだ。
これは本来人間に使う技だ、奴はあまりにも巨大すぎたのだ。
ジャイアント・キリングを近づかせないあの剣はそのままだったのだ。
そして、チェーンも少しずつヒビが入っていく。
「どうすればっ…………。」
俺は、朦朧とする意識の中で前をみる。
「大丈夫ですか!!」
そう助けた青年が駆け寄る。
「俺は、大丈夫だ………早く、援軍に向かうんだっ………!!」
「ゴブリンナイトは倒しました、先輩たちが………あとは、エンペラーだけです。」
「そうか………俺は休む、お前は早くいけ…………。」
青年は迷っていたが、エンペラーは疲れているが未だ無傷だ、一人でも多く人がいる。
「………はい。」
迷いに迷ってついに青年は向かった。
俺は、ギセルの言葉を思い出す。
『………ガーべリュクスも旅の途中一度瀕死の重体となったらしい、その時ついに強力な魔力の流れを感じ取り魔力操作を覚えたそうだ………。』
いま、俺のなかに流れる魔力、通常の十倍。
「スゥー、ハァー………スゥー、ハァー………………。」
深呼吸、魔力量二倍。
10×2=20倍。
「…………ゲホッ、やっと、かよっ………!!」
分かる。
体を流れる魔力の本流が。
五体にすべて流れているのが。
「………おおっ、すごい、操れる、操れる………ぞ………。」
俺は立ち上がる。
『………だがそんな面倒な手順を踏まなくても使えて、なおかつ最も強力な魔法が一つだけある………』
「身体、強化!!」
魔力を操り!俺は!ギゼルに教えてもらった強化器官に!ありたけ魔力を流し込む!!
痛い、とてつもなく痛い、過剰な魔力を流し込まれ傷んでいるのだ。
だが、既に全身骨折だ、いまさらどうという事はない!!
見ればエンペラーは足を鎖で拘束されているが、大剣を振り回し周りは近づけない。
そして、恐ろしいことに、やつは俺に背中を見せていた。
「………へっ、へへっ………へ………ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
俺は凄まじい身体能力をフルに使い、20mの距離を一歩で駆け抜け、そして飛び上がる。
「アァァァァァァアアア!!!!」
俺はその肩に、剣を思い切り突き刺した……。




