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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第六章 エンシャル帝国編
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第八十九話 武闘大会本戦「俺は女はなぐらん!」

 本戦は四日掛けて行われる。一日目は少しばかり汚い手を使って勝利。二日目はジュカルまで行かせることなく、三人で相手をボコボコにして勝利。今日は本戦三日目、準決勝だ。


「まさかここまで来るとは」


 ジュカルはベンチに座ったあと、そう言う。


「ここまで来れば勝てなくても賞品は貰えるけど、優勝めざすよ!」

「我が居るから勝利はまちがいにゃい!」

「いや、お前ぜんぜん役に立ってないじゃん」


 ニャルカが役に立った戦いなんて昨日の一試合だけ。あとは一発で吹き飛ばされて負けてる。


「にゃ! まだ本気をだしてにゃいだけにゃ!」

「ならさっさとだせ!」


 ニャルカは数会わせみたいなもんだからな。ニャルカと喧嘩していると、ジュカルが言う。


「どうやら、相手も来たみたいだぜ」


 ジュカルの言葉に相手ベンチを見ると、そこには主人公君がいた。


「あれ主人公君じゃん」

「主人公君? 確かあの時絡まれていた子でしょ?」


 そういえばエル達には決闘のこと話していなかったな。だから会ったのはギルドですれ違ったときだけか。


「少し情報を集めておいたけど、みんな強いよ」

「へー」


 あの時は弱かったけど、あれから強くなったのかな。もうかなり経ってるし、主人公君なら強くなってそうだ。


「さて、始まるよ」


 エルの言葉と同時に、先鋒は試合場に出るよう言われた。



 ◇


『準決勝が始まりましたね』

『でござるな。どっちが勝つか見物でござる』


 相手の先方はメイドさん。クールそうな外見で、主人公君とは同い年ぐらいじゃないかな。


『エルフィル選手は神出鬼没な攻撃で定評があり、フリージア選手は火や水をまとわせたナイフを投げる戦闘をします』

『今までの試合を見ても、どっちが勝つか予想がつかないでござる。

『そうですね。お! そろそろ始まります』


 実況がそう言うと、審判によって試合開始が宣言された。

 試合が開始されると、エルはユニークスキルによって消える。メイドさんは投げナイフを構え、油断なく辺りを警戒している。


「っ!」


 メイドさんはなにかの気配をさっすると、その場を避ける。すると、今までメイドさんが居た場所の右側に何かが通りすぎ、闘技場の壁になにかが突き刺さり、ナイフが現れた。


『あーっと! いつの間にか闘技場の壁にナイフが刺さっています!』

『壁に柄まで刺さるとは、かなりのナイフでござるな。みすりるの投げないふかもしれないでござる』

『ミスリルですか。一本金貨五枚はすると思いますよ?』

『エル殿は豪遊も無駄遣いもしないから、お金は持っているのでござるよ』


 うーむ。まさかミスリルのナイフを持っているとは。


「ミスリルのナイフですか」


 メイドさんがポツリと呟く。


「あなたナイフがミスリルなら、私のナイフはヒヒイロカネです! 『属性投与火』!」


 メイドさんがユニークスキルを使うと、持っているナイフが火に包まれる。


「は!」


 そのナイフを闘技場の地面に投げていく。着弾すると爆発し、闘技場が穴だらけになる。


『着弾すると爆発するナイフですか』

『そうでござるな。あれに巻き込まれたらひとたまりも無いでござる』


 しかし、エルは現れない。


「っ!」


 メイドさんはその場を離れる。すると、今までメイドさんが居た場所をなにかが通り過ぎ、闘技場の壁にナイフが突き刺さっていた。そこから連続でナイフが壁に突き刺さる。

 ……妙だな。エルなら一端離脱するし、あそこまで外さないと思うのだが。


「一気に仕留めるつもりだったでしょうが、それは愚策です!」


 メイドさんはナイフを構えて、一気にエルが居るであろう場所まで地面を蹴って走り、――体を切り裂かれた。


「え?」


 メイドさんは驚き、さらに前方から飛んできたナイフによってとどめを刺された。


「バベル君もよく言ってたよ。勝ったと確信した時が一番油断するって」


 エルがそう言って姿を見せ、同時に現れたのはナイフによって闘技場に張り巡らされ、固定されたワイヤー。


「ボクは君をコントロールしていたんだ。特注のワイヤーを張りながら、君を誘導していた」


 なるほど。エルは闘技場の壁に両端にナイフが付いた特注のワイヤーを固定。そして、メイドさんをワイヤーに気づかせないように、ナイフを投げながらメイドさんを誘導。これにはナイフに目をいかせて、柄に括り付けられている透明化されたワイヤーを気づかせない一石二鳥の作だ。

 エルは必殺スキルによって、触れていなくても他の物を消せる様になった。だから、刃が付いたワイヤーに触れていなくても消せる。動き回りながら罠を張れた。派がついたワイヤーはメイドさんの前に張り、後はそこに誘き出す。勢い良く飛び込んで来たメイドさんは、すでにそこでチェックメイト。

 ……慢心している奴ほど嵌めやすい相手は居ない。


「君は反対側に空いている穴に気づかなかったかな? あれに気づいていればナイフとナイフを繋ぐ何かがあるって気づいただろうに」

『はっ! エルフィル選手の勝利です!』


 エルの説明が終わると同時に、エルの勝利が宣言された。



 ◇



「うわー。負けた」


 メイドさんとの対戦はエルの勝利だったが、次の対戦相手はツンデレ娘だった。ツンデレ娘は前にあったときとは比べものにならない魔力を持っており、火の魔法で闘技場をすべて攻撃する事が可能だった。すべてを攻撃するなんて、防御が低いエルにとっては弱点。無理だと判断したエルは降参を宣言して、ベンチに戻ってきた。


「ドンマイ。次はニャルカか」


 正直ニャルカには期待していないんだけどな。今度こそジュカルまで回るかもしれない。


「にゃっはっは。我に掛かればすぐ勝てるにゃ」


 ニャルカは身の程なんて知ったことかという宣言をして、試合場に上がっていった。




 取りあえず結果としては引き分け。ニャルカにしてはよくやった方だろう。試合展開は、いつも開始と同時ににゃーにゃーなにか宣言していたニャルカが今回は初っぱなから相手チームの次鋒、ツンデレ娘に混乱波動を当てに行き、詠唱をしていたツンデレ娘は当たってしまった。あとは混乱して変にこねくりまわした魔法が暴走して、二人ともども爆発して引き分けとなった。


「次は俺か」


 担架で運ばれていくニャルカを見ながら呟く。


「うん。相手チームの中堅はあの小さい子。小さな体から放たれるパンチは大の大人を三発で鎮めるほどだよ」

「なるほど」


 主人公君達のチームの中堅はあの妹系か。話を聞く限り拳を主体とするファイター。あの小ささだから攻撃も当たりにくい。動かず逃げず。いつも『ぶにゃー』と叫びながら吹き飛ばされるニャルカとは大違いだ。


「気をつけてね。一回だけ試合見たけど、凄く早いから」

「んー。なんとかなるだろう」


 その為に少し準備をしておこう。




「レオ兄、行ってくる」

「ああ。気をつけろよ。相手はなにをしてくるか分からない」

「うん!」


 俺が試合場に立つと妹系も上がってくる。


「卑怯な手を使う奴になんて負けない!」

「その意気だ」


 まだまだだな。卑怯なっ手ってのはルールに引っかからず、それでいて強い。見た感じ対策もしていないし、すぐ倒せそうだ。ま、今回はちゃんと戦うけど。


『さあ、始まります。リン選手は速攻型のファイター。バベル選手は虫を操る召喚士。見ると召喚している間に速攻で倒せるリン選手が有利ですね』

『そうでござるな。バベル殿ならあの拳を一発受けるだけで吹き飛ばされるほど貧弱でござるからな。だけど、バベル殿ならなんとかする!』

『そうですか。お! 始まります』


 そして試合開始の宣言がされた。


「一言言っておく」


 俺は爆虫の図鑑も召喚せず、試合開始と同時に宣言する。


「俺は女はなぐらん!」


 俺の宣言と共に、客席がざわめく。


「なにを言ってるの?」

「俺の信念を宣言しただけだ!」


『なんて男気あふれるやつだ!』

『まさかバベル殿が!? いや、バベル殿は嘘をあまりつかないし……』


 妹系(なんか呼びにくいからこれからはロリっ子で)の目を見つめて答える。


「おにいさんは卑怯者なんでしょ? 嘘つかないで!」

「俺は嘘をつかない!」


 ――だけど本当の事も言わない。


 マモンがボソっと呟く。


「……嘘は、ついていないみたいだね。だけど、わたしも勝たないといけないの。だから、ごめん!」


 ロリっ子はそう言って、ナックルを付けた拳を構える。


「はあ!」


 ロリっ子は地面を蹴って俺に向かってくる。かろうじて俺に迫ってきていると分かるくらいで、体を動かすことは出来なかった。

 しかし、俺もそれは見越していた。ロリっ子が俺の半径三mの地点に足をつけると、地面に潜んでいた地雷型が爆発し、ロリっ子は吹き飛ばされる。


「俺の周りには爆虫が潜んでいる」


 さらに召喚しておいた手榴弾型をロリっ子に向かって投げる。それが留めとなった。『なぜ?』とロリっ子は最後に呟き、気絶した。


「……なぜ? か。もちろん俺は殴ってない。爆虫で攻撃しただけだ」


『前言撤回! こいつただのクズだ!』

『さすがバベル殿。期待を裏切らない』

『会場もブーイングの嵐』

『さすがバベル殿。観客を敵に回すとは』


 外野がうるさい。


「リン!」


 主人公君が倒れたロリっ子に駆け寄る。


「こんな小さな子を容赦なく攻撃して、胸は痛まないのか!」

「ぜんぜん」

「卑怯者!」

「ルール通りだ」


 俺はルール違反は犯していない。小さな子を容赦なく攻撃しちゃ駄目とか、言葉で相手を降参させちゃ駄目なんてルールはそんざいしないからな。女は殴らない発言は爆虫を設置する時間稼ぎ目的だったけど、それも別にルール違反じゃないよね。


 ――ルール違反じゃなくても人間としては駄目だと思う。


 ――そうかなー? かなり手加減したんだけどな。


 今回は罠を張るために『召喚省略』を使うはめになったけど、予定通りかな。魔力はメチャクチャ減ったけど、次の相手の副将、主人公君を倒す目処はたってるし。


『さて、あっというまに終わった中堅同士の対決ですが、バベル選手の勝利で終わりましたね』

『でござるな。あの話しは多分爆虫を設置する為の時間稼ぎが目的だったでござるな』

『なるほど。では、さっそく次ぎの中堅バベル選手対、副将レオ選手の対決です』


 怒り心頭の主人公君が試合場に出てくる。


「リンのかたきをとらせてもらう」

「そうかそうか」


 メチャクチャ怒っているのが分かるが、あまり怖くない。


『では、試合スタートです!』


 実況の言葉と同時に、審判が試合開始を宣言した。


「サモン『エクスカリバー』」


 主人公君が剣を召喚する。しかし、まだ攻撃してこない。


「君に負けた後、僕は修行を重ねた」

「…………」

「今の僕は半年前にくらべて強くなった」

「…………」


 主人公君の独白は続く。


「はっきり言おう。君は僕に勝てない!」

「…………」


 確かに強くなった。


 ――マモン。主人公君の強さは?


 ――確かに強くなっている。今のバベルでは危ないかもしれないな。


 ――まあ、それは戦ったらの話だろ?


 ――そうだが、何か作戦が?


 ――ああ。


 主人公君の目を見る。


「確かに強くなっている。だけど、こういうルールがある戦いってのはいろいろな戦いかたがあるんだ」

「なにを言っている?」

「……降参しろ」

「え?」

「しゅ……レオ君。降参してもらうと言った」


 俺は主人公君に向かって言い放った。

……。

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