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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第六章 エンシャル帝国編
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第八十八話 武闘大会本選「勝負はね、勝てばいいんだよ」

 ――闘技場控え室。


 俺達が今居るのは控え室。そこで俺達は試合開始を待っていた。係員さんの話によると、初戦は俺達からなので、ここで待っていてくださいとの事。今は本選の始まりの挨拶をしているので、俺達はここで待っている。本選ともなると、貴族なども観戦に来るので、いろいろ大変らしい。


「いよいよだね」

「ああ」


 本選。それは猛者たちが集まる本物の試合。油断したら負ける。


「優勝するよ!」

「ああ」

「にゃ!」

「おう」

「…………」


 俺達が優勝のために声を上げていると、控え室の扉が開く。


「皆様。始まりますので、移動してください」


 いよいよだ。武闘大会本選が始まる。



 ◇



 俺達がやってきたのは闘技場のベンチ。向こうのベンチには相手チームがたむろしていた。俺達が居るベンチは野球場のベンチと似ている。エルは油断なく相手チームを見据え、ジュカルは余裕そうにベンチに座っている。ニャルカはフラフラと歩き回り、仮面の男はベンチに座って沈黙。


『さあ! 武闘大会本選第一試合! 始まります』


 実況の声が聞こえる。


『えー。今回は解説として特別ゲストをお呼びしています』


 へー。本選ともなると解説が居るのか。


『解説の桜さん。よろしくおねがいします』

『よろしくでござる』


 凄く知ってる人だ。


『では、時間も押してきているので、ここで本選のルール説明をいたします。それぞれのチームは先鋒、次鋒、中堅、副将、大将になり、一対一で戦う勝ち抜き戦。勝てば次も戦え、負ければ敗退。相手チームを全滅させれば勝ちです』


 俺達は先鋒エル。次鋒ニャルカ。中堅俺。副将ジュカル。大将仮面の男と別れている。それより、なぜ桜が解説なんだ!


 ――今日の用事ってこの事だったんだな。


 ――ああ。一言言ってくれれば良かったのに。


 すごくビックリした。


『気絶。降参。試合続行不可能となった場合負けです。それと、本選に限っては殺さなければ腕や足が無くなる攻撃も可能とします。この日の為にエンシャル帝国最高峰の回復魔法士ヒーラーをお呼びしているので、一瞬で生えてくるそうです』


 つまり殺さなければなにをやってもOKと。爆虫は過剰攻撃なところがあるからこのルールは助かった。


『では、始めましょう!』

『どんな戦いを見せてくれるのか楽しみでござる』


 係員さんに、先鋒は試合場に上がるように言われる。


「エル。勝てよー」

「うん。ボクが五人抜きするから!」


 それは無理だと思う。

 エルは試合場に上がり、相手の先鋒も上がってくる。


『選手の紹介をしましょう。エルフィル選手はBランク冒険者でどこから来るか分からない攻撃をしてくる猛者です。対するチーム“フルーダーズ”先鋒のギール選手はCランク冒険者であり、Bランクの魔物を倒した実績があります』


 データによると、相手はCランク冒険者四人。Bランク冒険者一人のチーム。大将についているあのBランク冒険者がネックだな。


『では、試合スタートです!』

「「「おおおおおおおおおおおお!」」」


 試合開始後、エルはユニークスキルで姿を消す。下が土だというのに、消えたエルは砂埃も立てずに、気配を消す。


「どこだ!」


 相手が見渡しているうちに、背後から現れたエルによって気絶させられた。


『おーと。試合開始30秒で決着がつきました。桜さん。いまのはいったい?』

『アレはエル殿のユニークスキルでござる。せっしゃは気配の消し方よりも一発で気絶させた技が凄いと思うでござる』

『と言いますと?』

『エル殿は短剣の柄で気絶させたのでござるが、それに無駄な動きが一切ないでござる。まるで暗殺者のごとく』

『なるほど』


 エルはうちで一番厄介な奴だからな。


 その後の試合は一方的だった。次鋒、中堅、副将まで一発でしとめる。しかし、五試合目で……。


『あーっと! エルフィル選手捕まった』


 五試合目、バトルアックスを背負った、みるからにパワーファイターのハゲ男に、エルは腕を掴まれる。


「くっ!」

「少し油断したな。一瞬息遣いがした」


 腕をつかまれ、持ち上げられたエルは、相手の大将の手刀によって一瞬で意識を刈り取られた。


『あー! ここまで四人連続で抜いたエルフィル選手、ここで負け!』

『強いでござる。一瞬だけだしたエル殿の気配を見事に捕らえて一瞬で捕まえるとは!』


 相手のハゲ頭かなり強いな。


「にゃっはっは。我は冥王。あんな奴相手ににゃらん!」


 ニャルカはそういい捨てて試合場に上がる。


『出てきたのは次鋒ニャルカ選手。妖精族の選手とは珍しい。仲間らしいですが、ニャルカ選手は強いですか?』

『はっきり言って、弱いでござる』


 『我は弱くにゃい!』とニャルカが叫んでいるが、ほおっておこう。


『だけど、精神攻撃に体勢耐性がないと精神を支配され、自滅させられるでござる』

『なるほど。特化型というわけですか』


 さて、どういう試合になるか。


「我が相手ににゃってやろう。ありがたくおもえ!」

「ほざけ。妖精族になにが出来る」


 そう言いあい、試合が開始された。


 結論。あっさり負けた。もちろんニャルカが。皆騒然としている。あそこまでえらそうな言動をしといて、開始三秒で負けるとは。試合の状況としては、ハゲ頭に捕まれ、試合場の壁に叩きつけられて、気絶した。目をくるくる回して、『我はまけてにゃ~い』と戯言をボヤいている。


 ――次はお前の訳だが、どうするんだ?


 ――正直戦うのもめんどくさそうだし、あの手を使おう。


 ――え?


 ――マモンに秘密でひそかに練っていた作戦だ。


 ――そういえば予選突破祝いの時凄い作戦思いついたとか言ってたな。


 ――ああ。これがあれば負けない。


 ――どんな作戦だ?


 ――すぐ教えてやる。


 俺は立ち上がって試合場に上がる。


『バベル選手はBランク冒険者で、召喚系のユニークスキルを操る選手です』

『バベル殿でござるか。せっしゃ正直に言って、バベル殿が一番苦手でござる』

『ほお。どういう訳ですか?』

『バベル殿は未来を読めるんじゃないかってぐらい先に罠を張るでござる。いつのまにか罠にはまって、一方的にやられるのでござるよ』

『なるほど。それは怖いですね。なにわともあれ、試合スタートです』


 実況席の宣言とともに、試合が始まった。


「少し話をしましょう」

「……なんだ?」


 俺はハゲ頭に近づいて、そう言う。


「あなたの娘さん可愛いですね」

「なにを言っている?」

「魔法学校に通って二年生ですか。未来ある子供ですね」

「……まさか!」


 ハゲ頭は青ざめる。


「……話は変わりますが、俺のユニークスキルは遠距離から操作できるんですよ」

「っっ!」


 ハゲ頭が息を呑む。


『おや? 何か話しているようですね』

『バベル殿の事だからすこし揺さぶって試合を有利にすすめるつもりでござるかな?』


 近づいて話している事と、小声なので、辺りには声が聞こえない。


「どういうつもりだ?」

「……降参しませんか?」

「娘を!」

「…………」


 俺がにこりと笑うと、ハゲ頭は真っ青になる。


「……降参だ!」


 ハゲ頭は両手を上げ、叫んだ。


「そうですか。それでは」


 俺はハゲ頭のその言葉を聞くと、試合場を降りた。


『あーっと! 降参です! まさか大将が降参!』

『バベル殿ならあること無いこと並べて口八丁で降参に追い込むぐらいやるでござる』

『しかし闘技場は罵声の嵐。大将戦が見れず、まさか降参になるとは思っていなかったのでしょう』


 実況の言葉を聞きながら、荷物をまとめる。


「勝ったし、ほかの試合もつまってるから帰るぞ。帰りにエルとニャルカも見に行かないといけないし」

「な、なあ。バベル。どうやって降参させたんだ?」

「うーん。秘密だ」


 ジュカルは困惑の表情を浮かべる。

 俺達は立ち上がってエルのお見舞いに行く事にした。



 ◇



 エル達はお見舞いにいったらピンピンしていて、元気に動いていた。なにも大きな怪我はなく、明日も出られるそうだ。

 お見舞いの帰り、俺が人通りのない裏道を歩いていると、俺の肩をつかむ奴がいた。


「おい!」


 肩をつかんだのはもちろんハゲ頭。


「娘は知り合いに保護してもらった。もうお前を殺すための障害はない!」

「……なにを言ってるんですか?」

「とぼけるなクズ野郎! 娘を人質にとった事を忘れたとは言わせない」

「なんの事ですか?」

「きさま!」


 ハゲ頭は俺に拳を振り下ろしてくる。


「おっと」


 だけど、怒りでわれを忘れた拳なんてすぐ避けられる。


「もしかして、俺の言葉に勘違いしましたか?」

「なんだと!」

「俺は娘さんを人質にとったなんて一言も言ってませんよ」

「ふざけるな! 遠距離から操作して攻撃が可能なユニークスキルで娘を人質にとったと言っただろ!」

「はあ。分かっていませんねえ。俺は娘さんの話をして、その後『話は変わりますが』と言いました。さて問題です。俺は一言娘さんを人質にとっていると言いましたか?」

「!?」

「俺は、娘さんの話をした後、わざわざユニークスキルの能力を教えてあげただけですよ」

「…………」


 ハゲ頭がわなわなと震える。


「俺は娘さんの話をして、ユニークスキルの詳細を教えてあげたところで、あなたの顔色が悪くなったから降参を進めただけ。勝手に娘さんを人質にとったと勘違いしたのはあなたですよ!」

「クソがあ!」


 ハゲ頭は行き場をなくした拳を家の壁に叩きつける。


「いやー。助かりました。あなたがかってに勘違いして降参してくれて。それじゃあ」

「ちくしょー!!」


 俺は地面に這い蹲るハゲ頭を放置して、その場を後にした。


 ――なあ、クズ野郎。


 ――おう。容赦のないディスリ。


 ――恥ずかしくないのか? あんな汚い手を使って。


 ――勝負はね、勝てばいいんだよ。過程じゃない。結果だ。


 ――うん。お前はそういう奴だった。小さな頃の純粋なバベルはどこに行ったんだ。……あれ? バベルって純粋だったっけ? 小さい頃からやられたらやり返すを地で行く奴だったし、成るべきして成ったといえるのか?

 

 マモンがブツブツと呟くのを聞きながら、俺は宿屋へと帰った。

作者の好きなように書いていたらバベルはこうなった。

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