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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第六章 エンシャル帝国編
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第六十八話 都市サフランと依頼

「見えて来たよ。サフランが!」


 国境から歩いて二日。俺達は終に、目的地の都市サフランに到着した。


「やっと着いたでござる。ここまで来るのは大変でござった。シュナの粉で死にかけたりしたでござるからな」

「我が天空へと旅行したのも良い思い出にゃ」

「じゃあ、もう一度星になってみるか?」

「にゃにゃにゃ。それは勘弁にゃー」


 星になる事を拒んだニャルカは置いておき、サフランを見る。低めの壁に囲まれていて、周りに麦畑とそれを警護するらしき槍と剣を持った人が巡回している。


「取り合えず宿を取ってCランクの依頼を受けるよ」

「「「おー」」」


 ギルドのノルマをクリアするために、俺達は都市サフランの門に並んだ。



 ◇



「じゃあ、ギルドに行こうか」

「おう」


 サフランに入り、高くなくそれでいて防犯設備が整っている宿の三人部屋を取った後、俺達はギルドに向かっていた。


「サフランは平和な都市で、辺りに危険な魔物は少ないそうだよ」

「そうなのか。じゃあ、討伐クエストは少ないのか?」

「分かんない。Bランクの依頼がなくても、Cランクの依頼はさすがにあるでしょ」

「まあ、そうだにゃー」


 そんな会話をしながらギルドに入る。ギルド内は酒場と掲示板。それに受付があり、酒場には依頼を完了して飲み会らしき物をしている男四人と、数名の冒険者らしき人物が居る。

 掲示板の方に移動して、Cランクの依頼を探すと、六枚の依頼が貼ってあった。


「どれにするか?」

「なるべく今日中に終わる依頼がいいでござる」

「にゃー。我も我も」

「うーん。これとかどう?」


 エルが指を指した依頼は、森に棲み着いた大鬼三体の討伐。備考を読むと、ここから徒歩30分の所に在る森に棲み着いたオーガは、常に三身一体で行動し、Dランク冒険者数名とEランク冒険者が多数犠牲になったとの事。


「オーガが三体一緒らしいから難易度は高いけど、その分料金は良いよ。ここから徒歩30分だし、爆虫に乗れば今日中に依頼を達成して帰ってこれるんじゃないかな?」


 なるほど。今はお昼を過ぎたところだが、オーガ三体なら目立つだろうし、今日中に達成出来るかもしれない。


「よし、これにするか?」

「にゃ!」

「いいでござるな」

「決まりだね」


 満場一致でこの依頼に決まり、受付にこの依頼を持って行く。


「この依頼は受けさせて下さい」

「はい、ではギルドカードを提示してください」


 マニュアル通りの対応をする受付嬢さんに、ギルドカードを見せると、受付嬢さんの時が止まった。そして、呟いた。


「脱獄王……」と。


「脱獄王だと!?」

「あの英雄?」

「実在していたとはな」


 受付嬢さんの呟きを聞いて、ギルド内に居た冒険者達は口々に声を上げる。


「あなた達はまさか英雄?」


 一体誰と勘違いしているのだろうか。


「一体どういう事でござるか?」

「脱獄王といえば。悪徳貴族に連れ去られそうになった猫獣人の親子を救い、悪徳貴族に殴りかかったヒーロー。刑務所に入ったが、その次に日には刑務所で大暴れして逃げ出した英雄。今その貴族は民衆の間では『スッキリした』『いい。酒のつまみだ』『ざまぁ』などと言われ、今はその悪徳貴族は社交界でもそれを噂され、社会的にも落ちたそうだ。それからは脱獄王は弱小貴族や民衆からは支持される英雄へとなった」


 ――知らない内にあの貴族を社会的にも追い詰めていたみたいだな。


 ――そうだな。それにしても分からん。お前なぞただの守銭奴でしかないのに、なぜ支持されるのだ。


 ――世の中悪人が甘い蜜を吸い、善人が損をするんだ。


「いつの間にそんな事になったんだろう?」

「英雄? しっくりこないでござる。せっしゃはただ自分のやりたいように行動しただけなのでござるが」

「我が英雄に成るのは運命の定めにゃ」


 エルと桜は困惑して、ニャルカは当たり前という。やっぱりニャルカは傲慢だな。


「他にも、その話が物語りになったりしていますよ」


 なっにー! すぐに肖像権料をふんだくりに行きたいが、この世界にはそんな法律ないのか。


「そんな脱獄王達が依頼を受けてくれるなら、安心です。依頼の受注は完了しまた」


 そう言ってカードを返してくる。カードには受注依頼『三兄弟のオーガ討伐』と出ていた。


「なんか分からない内に英雄みたいなものになっていたけど、気にせず依頼を達成するぞ」

「「「おー」」」


 依頼を達成する為にギルドを出ようとすると、掲示板の前からとある会話が聞こえた。


「おうおう。ガキが一丁前に女引き連れて冒険者か?」

「ぎゃはははは。お前が冒険者になるのは10年はええ」

「お? よく見るとその女達は綺麗な顔してるじゃねえか? ガキは消えて女どもはお酌しにこいよ」


 掲示板の前に居た4人の女を引き連れた15歳ほどの少年に、さっきまで酒場で騒いでいた冒険者達が絡んできた様だ。


「んー。助けたほうがいいかな?」

「ほっとけ。あれも冒険者ギルドではよく見る光景らしいしな」


 俺達の場合は登録したときに他の冒険者が居なかったし、その後も特にああいう事に出くわさなかったが、運が悪い事に、あのハーレム野郎は絡まれたようだ。


 ――なにか。絡まれているほうをおとしめる言葉を言わなかったか?


 ――べつにー。


「フッ」


 ハレーム野郎は鼻で笑った後、何事もなかったかのようにハーレムメンバーと談笑しはじめた。爆発すればいいのに。


 ――またまた絡まれている方をおとしめる言葉を使わなかったか?


 ――なんの事かわかんない。


「無視だと!」

「舐めてんのか!」

「死にされせ!」


 三人の男はそれぞれ大剣、長剣、槍を構える。


「レオ様。ここは私が」


 メイド服らしき物を着込んだ無表情メイドが短剣を構える。


「いや、僕がやる」

「ガキが-!」

「死ねー!」

「金目のもん置いてけー」


 などと、頭の悪い悪口を叫んで三人の男は飛びかかる。ハーレム野郎は攻撃を回避すると、素手で三人の腹に高速で拳を打ち込んだ。


「な、なにをした」

「拳。だと……」

「馬鹿な」


 三人の男は数秒後床に倒れ伏した。


「さすがです。レオ様」

「さすがレオね」

「ふふ。信じてましたよ」

「レオ兄すごーい」


 ハーレムメンバーが主人公君(今命名)を褒め称える。爆発すればいいのに。


 ――たしかに早いが、ギルド内で戦闘したのは失敗だったな。


 ――だな。ギルド内で戦闘なんて厳重注意と罰金ものだぞ。


 マモンの言葉に俺は同意する。ギルドは喧嘩を売った方も買った方も両成敗だからな。あんなの適当に回避してギルド員に捕まえてもらえばいいのに。


「まあいい。行くぞ-」

「「「おー」」」


 主人公くんにこれから起こる事を案じながら、俺達はギルドを出た。



 ◇



 ――夜。


 あの後、無事依頼を終わらせた俺達は夕飯を食べ(桜が積み上げた皿の数と払った金額は全力で忘れたい)宿の部屋でゴロゴロしていた。

 桜とエルは何時も通りボードゲーム。ニャルカはエルのベッドでなにかの本を読んでいて、俺は自分のベッドで寝転がって空をボーッと眺めていた。


「なあ、なんかないか?」

「なんかってにゃんにゃ?」


 本を読んでいたニャルカが顔を上げ、こちらを向いて聞いてくる。


「なんか面白い事だよ」

「うーん。特にないよ」


 ボードゲームをしていたエルも話しに参加してくる。


「だよなー」

「何時も通りの一日でござる」

「はあ。俺はもう寝る」

「へえー。早いね」

「持っていた本は全部読んだしな」

「ふーん。おやすみ」

「ああ」


 ニャルカと桜にも挨拶をし、俺は目をつぶった。


 ――はあ、眠い。


 ――もう眠りに付きそうだな。


 ――お休み。


 ――なにか嫌な予感がするが、寝ろ。明日も早い。


 マモンのその言葉が聞こえると同時に、俺の意識は闇に落ちた。

おまけ 果てなき夢の夜


バベル「・・・・・」

エル「…………」

桜「ラーメン。ソーメン。ヒヤソーメン。すやー」

ニャルカ「すぴにゃー。すぴにゃー」

マモン「……バベルなんて夢見てるんだ……」

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