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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第五章 月光国編
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第四十四話 月光国と抜け道

「じゃあ行くか」

「ふにゃー」


 俺達は数日間の密航(?)の末、終に月光国に到着した。寝ているニャルカは担いで持ち、準備しておいた荷物も持ち、エルにユニークスキルで消してもらって、甲板に出る。


「ここが月光国か……」


 エルは、船の上から月光国を見て、絶句する。それもそのはず。俺が見ても絶句するしかない程広い。まだ横を遠目から見ただけだが、兎に角でかいのだ。桜が言うには、月光国には町や村と言える物が一つしかないらしい。兎に角広い都市と、でかい畑。海からの恵みで成り立つ国が、月光国だという。

 月光国に一つしか住む場所がないのは、沢山の危険地帯と九尾といわれる魔物が原因らしいが、そこら辺は詳しくない。


「では、行きましょうか」

「……なあ、桜。その言葉遣いは、治らないのか?」

「治るも何も、これが私の素ですよ?」

「うーむ」


 これが素だと言われても、今一ピンとこない。桜は、矢っ張りござるの語尾と、アホなことしか考えてないイメージしかないので、違和感しかない。


「桜ちゃん。言っちゃ悪いかもしれないけど、ボクも違和感しかないなー」

「そうですかエル殿。これも、父上に会うためには、必要な事です。あんな語尾では怒られてしまいますよ」

「そうか」


 仕方ないのか。俺は、桜の取って付けたような語尾が好きだったんだけどな。桜が敬語を喋るなど、天地がひっくり返ってもあり得ないと思っていたんだけど。


「なあ、桜。聞きたいんだが、性格はどっちが素なんだ」


 語尾などが違っても、こっちのキリッっとした桜が素なのか。あっちのハッチャけて、何時も腹減ったと言っている桜が素なのか。


「……ふふ。秘密でござる」


 桜はいたずらを考えた子供の様に笑って、そう言った。


「うん。矢っ張りお前は桜だな」


 俺は、桜にそう返した。



 ◇



「うーむ。どうやって入ろうか?」


 俺達は、月光国の門の前で、悩んでいた。


「本当だね。考えてみれば、ボク達って可成り怪しいよ」


 月光国の門は町に設置されているが、そこから入ると入国と同じなので、審査は厳しいそうだ。


「船員でもないのに、島国の月光国に居る俺達ってメチャクチャ怪しいよな」

「そうですね。では、一つ抜け道があるので、そこから出入りする事は出来ますが……」

「本当か!」

「はい」


 どうやって入ろうか迷っていると、桜が希望をもってくる。


「よし、そこから入ろう」

「こっちですよ-」


 他にどうしようもないので、桜の案内でその抜け道に行く事にした。




「ここです」


 桜に付いていくと、海岸の左端に到着した。そこには特に何も無く、岩壁が在る位だ。


「本当にここなのか?」

「はい。この岩陰に……」


 そう言って桜は、岩壁の一部を手探りで触りだした。

 少し待つと、桜が動きを止める。


「ここです」


 桜は岩壁の一部を、手で前に押した。すると、岩壁がずれて、壁が現れた。


「おお。凄い!」

「ふにゃー。カッコイイのにゃ」

「ここが秘密の抜け道です。当たり前ですが、他言無用でお願いします」


 秘密と言っても、そんな抜け道を月光国の不法入国で使って良いのだろうか……まあいいや。責任をとらされそうになったら逃げよう。くろまめに乗れば、逃げ切れると信じてる。


「では、行きますよ」


 桜を先頭に、中に入る。抜け道は岩に穴をあける構造になっており、前が見えないほどに暗い。しかし、桜もエルも、スルスルと進み、ニャルカも特に臆していない。


「あれ? もしかして、前が見えないのは俺だけか?」

「あ! バベル君は夜目が利かないのか」

「主殿は不便でござるな」


 失礼な俺はお前達みたいな超人ではいないんだ。夜目も利かんし、体力も常人より少し強い程度。魔力も400ほどで、普通の魔法使いより少し多いかな? といった位だ。それに、俺は今魔法が使えない。あれ? 魔法が使えない魔法使いっていったい……。


 ――ププ。魔法が使えない魔法使いって。ただの役立たずじゃん。


 ――し、失礼な。俺にはユニークスキルがあるし、魔力を見られる眼がある。それに、魔法が使えないのはお前のせいだろ!


 ――ほお。後悔しないのではなかったかバベル。ほれほれ、男のくせに後悔するのか? 情けないなバカル(・・・)君。


 ――ムキー。マモン、俺は怒ったぞ!


 ――ほぉう。どうやって怒るのかな? バベル君。私は実体化出来ないし、お前の精神世界に居るんだぞ。


 ――こんどそっちに行ったらおぼえてろよ!


 俺はマモンに宣戦布告をして、会話を終えた。しかし、マモンが最近生意気になってきた。今度精神世界に行ったらこらしめてやろう。あれ? あの世界ってどうやって行くんだろう。あそこに行ったのは一回きり、大蜘蛛討伐で気絶した時だけ。……また痛い思いしないと行けないのかな。


「バベル君。どうしたの?」

「少しマモンと会話していただけだ」

「ああ。バベル君の中に居るあの果実ね!」

「強欲にゃ……?」

「そうだ」


 少しボーっとしている所にエルが声を掛けてきたので、理由を説明する。


「主殿-。前が見えるでござるか?」

「んー。無理だ。前がちっとも見えない」


 前は暗く、5㎝先も見えない。もう外に光が届かない場所まで来ているので、外の明かりを頼り歩けないのだ。


「うーん。どうしよう。足下も結構起伏があって歩きにくいよ」

「そうだ! エル殿。この前買った明かりが点く魔道具は……」

「あ! 有ったね」


 エルは魔法のポーチから明かりが点く魔道具を取り出す。これは農工都市で中古品として市場で買ったやつだ。小豚亭には明かりがなく不便だったので、一時間の話合いの結果、中古品を買うことにした。桜は夜にボードゲームが出来ると喜んでいたっけな。


「うん。魔核にまだ魔力が残っているよ」


 エルはランタンの中央に在る魔核を確認しながら言う。これは魔道具なので、燃料として魔核を使う。この前狩ったオークの魔核が丁度いい大きさだったので、今は燃料として使っている。


「よし点いた。では、行こうか」


 魔道具の光を照らしながら、俺達は抜け道を進んだ。




「ここです」


 歩く事数十分。桜の案内でたどり着いた場所は少し広くなっており、一部が土壁になっている。


「この掛け軸の向こうが、私の実家です」

「そうなんだ」


 土壁には穴が空いており、そこには掛け軸が掛かっている事から、向こうが家だというのが分かる。


「作戦としてはエルに姿を消してもらって、こっそりと家を出る。そのまま何食わぬ顔で正面玄関から『ただいま』と言って入り、桜は家出したことを謝る。それでいいかな?」

「はい。分かりました。謝るのは癪ですが、仕方ないですね」


 声を殺して。最終的に作戦を確認する。


「じゃあ。集まって。姿を消すから」


 桜の言葉に、俺達は掛け軸の前に集まる。


「あ!」


 しかし、俺は地面の石につまずいて転んでしまった。


「うわあ!」


 そして、俺はそのまま勢い余って桜を押し出してしまった。掛け軸の向こうに。


「「桜(ちゃん)」」


 すぐに体勢を立て直して、掛け軸の向こうに倒れ込んだ桜の後を追う。

 そこには、槍を持ったおっさんに倒れ込んだ桜が居た。


「……エル。これはどういう状況かな?」

「うーん。いろいろとマズイ状況なのは確かだよ」

「……なんでござるか貴様ら! 拙者の家に忍び込むとは良い度胸」


 倒れ込んだ桜には目もくれず、俺達を睨むおっさん。


「さっきからの気配は貴様らか! この者も、お前達のなか……桜?」


 おっさんは倒れ込んだ桜の顔を確認すると、動きを止める。


「ふみゅ。……父上?」

「「え!」」


 桜は自分を覗いている顔を見て、そう言う。


「ねえ。バベル君。言っちゃ悪いけど、全然似てないよ」

「俺もそう思う。本当に父親か?」

「は! 貴様らは何者でござるか!」


 桜を見て唖然としていた桜のお父さんも、俺達を見直して槍を構える。


「そうか分かったぞ。貴様らが桜をさらったんだな! 拙者の名前は夜月栄一郎。月光国の将軍として、盗人を退治する。問答無用!」

「ち、父上! ちが……」


 桜のお父さんは、桜の声も聞かず勝手に自分の中で結論付けると、俺達に斬りかかってきた。

次の更新は二日後~!

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