第三十六話 刑務所入所そして脱獄計画
「囚人番号3420番3421番3422番ここがお前達の部屋だ」
どうも、あのデブ貴族を殴った後、問答無用で刑務所にぶち込まれたバベルと申します。
「横暴だー」
「そうだそうだ。あれは正当防衛だ(暴論)」
「そんな事よりおうどん食べたいでござる」
三者三様看守に暴言をはく。最後のは暴言でないか?
「はあ……矢っ張り刑務所に入ったね」
「頃合いを見て逃げれば良かったんだ」
あの後調子に乗って殴りすぎたのがいけなかった。
「主殿、エル殿。すまんでござる。せっしゃが殴ったばっかりに」
「良いんだよ。どうせ桜が殴らなければ、エルが殴ってたから」
「そうだよ」
三人の反省が終わったところで、牢屋の中を見渡す。中は質素な石造りの部屋で、石のベットに藁を引いたベットとは言えない物と、小さなトイレが設置されてる。
「男と女が別々じゃないのか?」
「それは、此所の所長が金にガメツイからだ」
突然聞こえて来た声の出所を探ると一つのベッドに、男が一人座っていた。
「俺は3400番だ。よろしく」
「ああ。よろしく。それで、どう言う意味なんだ?」
「そのままの意味さ。男女別々の部屋を作るぐらいなら、金を貯めたいらしい」
「ふーん」
目の前の男はルームメイトだろう。茶髪で、軽い印象を受ける。が、ものすごく目つきが悪い。凄いギャップだ。
「あ! 自己紹介をしておこう。3420番のバベルだ。俺を此所に送った貴族を精神的に抹殺してやろうと思っている」
「おお、怨んでそうだが、何をしたんだ?」
「ちょっと気に入らなかったから、殴っただけだ」
「貴族を殴ったそうなるだろ!」
そうかな。あれは貴族と言えないだろ。出所したら絶対に社会的にも精神的にも追い詰めてやろう。
「ボクは3421番のエルフィル。エルで良いよ。あの貴族を吊してやろうと思ってる」
「発想が過激だな! しかも貴族に」
エルの感想ももっともだと思う。
「せっしゃは桜。番号に捕らわれない人間でござる。月光国出身の侍でござるよ。あの貴族は“数虎谷”に突きおとして、大虎のエサにしてやろうと思ってるでござる」
「お前達は発想がいちいち物騒だぞ!」
そうかな。発想は普通だと思うけどな。
「それで、3400番さんは?」
「ああ、俺はジュカル。指名手配犯だ」
「ふーん。なるほど」
「お、怖がらないのか?」
「べつに」
お前より恐くて、酔うと寒いギャグを吐く蛙とか居るしね。
「うーん。そうだ、自己紹介が単調でござる。何かぎゃぐをいうでござる」
「え!?」
「それはいいね」
「えー!?」
知らないうちにジュカルがギャグをする事になったようだが、面白いからいいや。
「えーと。……布団が吹っ飛んだ」
「「「…………」」」
「古いでござる」
「空気が氷河期になった」
「ごめん。聞くに堪えないよ」
「お前らひどいな!」
ジュカルがそうツッコムが、あれは無いと思う。あの酔ったときの蛙(笑)と同じレベルだ。
「よし、この寒くなった空気は捨てて、楽しい話をしよう」
「「おー」」
「はー」
こんな空気はスパッっと忘れよう。
「そうだ、お前達は貴族を殴ったって言っていたが、誰を殴ったんだ」
「たしか、ドックス公爵だったかな?」
「な! 公爵家の者を殴ったのか!」
「そうでござるな。だけど反省はしても、後悔はしていないでござる」
そうだ。あの貴族(笑)は殴ったときスッキリしたしな。まあ、俺は反省もしてないが。
「公爵を殴ったんなら公開処刑だろうな」
「「「え!」」」
「気づいてなかったのか!」
「ああ」
まずったな公開処刑か。別にそこまでやったつもりはないんだが……。
「……脱獄だな」
「そうだね」
「無理だな」
脱獄を決めると、ジュカルがそう断言してくる。
「どうしてでござる」
「第一にこの手錠だ」
ジュカルの言葉に、自分に付いてる手錠を見る。
「これはユニークスキルを封じる手錠なんだよ」
「そうなのか」
確かに今は爆虫の図鑑が出てこない。それに、魔力の流れが凄いく重い。
「それにな、外を見てみな」
ジュカルの言葉で牢屋の外を見る。そこには、唯一の出口に小人が見張っており、大きな獣が、扉の外に入る。
「あの小人は、ここの所長がユニークスキルで召喚した物だ。それに、外の獣は“黒獅子”Aランクの魔物だ。ここの副所長がユニークスキルで捕まえたらしい。此所は死刑囚が入る牢だから、厳重に警戒している。諦めた方が良いな。まあ、ドックス公爵は執念深い事で有名だ。公開処刑まで五日って所か」
「……それは」
ユニークスキルも封じられ、外ではAランクの魔物が警戒。タイムリミットは五日か……。
「もう積んでるな」
「どうするでござるか?」
「……明日から頑張ろう」
取り合えず現実逃避をする事にした。
◇
「うわー!」
囚人の荷物を押収した部屋で、一人の看守が悲鳴を上げた。
「どうした!」
この刑務所の副所長が、一人の看守の悲鳴に声を上げて駆けつける。
「今、囚人番号3421番から取り上げた短剣を触った奴が、自分の心臓を串刺しにしようと……」
「それでどうなった!」
「全力で止めましたので、今は気絶しました」
「……そうか。串刺しにしようとした短剣は」
副所長はその短剣を探そうと辺りを見渡し、気絶している看守の、側に落ちているのを発見した。
「ツッ、凄い呪いだ!」
「矢張り呪剣ですか」
看守も副所長も、呪剣を見るのは珍しくもない。この仕事をしていると、呪剣に体を操られた犯罪者を見る事は、さして珍しくないからだ。
「すぐに、封布に包んで封印するんだ」
「は!」
看守は封布に短剣をくるみ、慎重な手つきで呪剣を保管している部屋へ、入って行った。
「ふう、あのレベルの短剣を見るのは初めてだ。あの3421番も短剣に操られていたのか? いや、そうは見えなかった。まさか、あの短剣を制御していたのか」
副所長はそう呟くが。
「無いな。ユニークスキルを使っても、あのレベルの呪剣を操るのは至難の業だ」
無理だと結論付け、副所長は部屋を出て行った。どこかモヤモヤするのを感じながら。




