第三十七話 脱獄準備
「あー」
牢獄生活二日目。桜が突如声を上げた。
「どうした桜」
「宿屋に置いてきたせっしゃのぷりんはどうなるでござるか?」
「……ニャルカが食べるか、そのまま腐るか。十中八九ニャルカが食べるだろうな」
「ガーン」
いつもは倒れてもすぐに復活する桜が、今は絶望で倒れ込んでる。
「はあー。此所は牢獄だぞ。何でそこまで気楽に過ごせるんだ」
俺達の掛け合いを見て、ジュカルが腕を組みながら聞いてくる。
「そりゃー。絶望しながら過ごすより、楽しく過ごした方が良い」
「……俺はそこまでポジティブになれん」
そうだな。俺も前までは絶望してたかもしれないが、エルや桜。ニャルカと冒険して、いろいろ変わった。
「はあ、それにしても刑務所のご飯は不味いね」
「本当でござるよ。それに、量も少ないでござる」
「そうだな」
兎に角不味いのが、このご飯だ。多分この肉はゴブリンの肉だと思う。
「よし、脱獄しよう」
「そうだね」
「お前達はご飯が不味いだけで脱獄するのか」
「もちろん。それに、もう脱獄の準備は出来ている」
「! どう言う事だ」
俺は、昨日の内に脱獄の準備は整えていた。
「まず、ここを脱獄するには、手錠。外のAランク魔物。見張っている小人をどうにかしないといけない」
「そうでござるな。でも、無理でござろう」
外に出るには、手錠を付けた状態で、Aランクの魔物と小人を相手にする必要がある。ここまでやったら、Sランク冒険者も突破は難しいだろう。しかし、見ていたら分かるが、ここの者達は舐めている。看守達もそれに傲っていては、何時か脱獄される。今がその時だ。
「まず魔物だが、それはこいつで対処出来る」
「それは!」
「しっ! 静かに」
「ご、ごめん」
エルが大声を上げそうになったのを、急いで口を塞いで止める。
「それってニャルカの粉だよね」
ニャルカにこの前貰っておいた粉だ。
「おい、それってシュナの粉じゃないか?」
ジュカルがそう、声を上げる。シュナの粉って確か図書館で見た世界一辛い粉だっけ?
「まあ、この粉をあの魔物の目と鼻にぶっかける」
「鬼畜でござるー」
「バベルくんは容赦ないねー」
「だが、どうやって持って来た。入る前に荷物検査があったはずだ」
確かにそれで、俺もローブやナイフを取り上げられたし、桜も夜桜を没収されて、暫く沈んでたし。
「それが、小人と手錠をどうにかする方法に繋がる」
「どうやって繋がるのでござるか?」
「こいつだ」
「「「な!」」」
俺が呼ぶと、石のベットの影から、一匹の爆虫が出現した。
「お前はユニークスキルが使えないはずだろ、何で召喚系で呼び出した様な物が居るんだ?」
「もちろん、もともと召喚していたのを、こっそりと付いてこさせたんだ。可成り神経つかったぜ。何時ばれるかヒヤヒヤしたが、意外と警備はザルだったな」
「そいつにシュナの粉を運ばせたのか。それで一体どうするんだ?」
「爆虫を使って、手錠と牢を壊す」
今度の言葉で、三人とも言葉を失っている。
「ほ、本気なの?」
「もちろん。あ、手錠を壊すのは俺だけだ。召喚した主なら爆発の影響をあまり受けない」
「……せっしゃも壊して欲しいでござるよ。せっしゃなら爆発に耐えられるでござる。主殿一人だけでなく」
「……何言ってんだ。お前は元々巻き込むつもりだったぞ」
「そうでござるか。主殿は相変わらず優しいでござ……え?」
桜がショックを受けているが、桜なら怪我をしない事は計算ずみ。まあ、桜が言い出さなければ俺だけ爆破するつもりだったが。
「ジュカルも行くぞ」
「お、俺もか!?」
「計画をここまで聞いたんだ。来てもらうぞ」
「はあー。分かったよ。どうせ俺もこのまま処刑される。最後に博打を打つのも良いな」
ジュカルも覚悟を決めたようだ。
「決行は、今日の昼。職員達が昼休みに入る、気の抜けた時だ」
「え、夜じゃないのか?」
「もちろん。こんな所一秒も居たくないでござる」
「はあー。分かった。この大博打に乗ろう」
「では、決行は昼だ」
「「「おー」」」
俺達は、気づかれることなく、脱獄の準備を始めるのだった。そして、他の三人も顔に不安の表情はない。脱獄は、無理だと疑った奴から失敗していく。
――さあ、脱獄を始めよう
桜「今日は奮発してぷりんを買ってきたでござる。でざーとに食べるから、ここに置いておくでござる」
~そしてラーメン屋へ~
ニャルカ「にゃ、これはプリンではにゃいか! ここに置いてあるという事は、食べて良いという事。我が食べるに相応しいにゃ」
こうして、桜のプリンは、とあるケットシーの胃袋に消えていった。




