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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第四章 王都編
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第三十五話 VSジャンボラーメン

「らーめんでござるー!」

「そうだねー」


 俺達はおやじに教えて貰った、ラーメン屋魔豚三号店に向かう為、大通りを歩いていた。

 あのストーンゴーレム討伐から五日経ち、今日は八の月十日だ。この世界の時は、前世と同じ。なんでも時を計るユニークスキル持ちが、計ったから間違い無いらしい。


「……ニャルカは本当どうしたのかな?」

「さあ、分からん」


 そう、今日はニャルカが来ていない。『髭が震える』なんて言って、今日は宿で昼寝をしている。


「……ここでござるな」


 桜の言葉で顔を上げる。すると、そこにはラーメン屋魔豚三号店と書かれた看板が掛かった店が在った。


「何か凄そうだ」

「ああ」


 凄い覇気を感じる。これだけ覇気を出せるなら、どれだけの実力者なのだ。ここラーメン屋だけど。


「行くでござる」


 桜は引き戸を開けて、中に入る。すると、むわっとした熱気が俺を襲った。中を見ると、四号店と同じ配置の店内だ。


「らっしゃい」


 そう言ってきたのは、おやじと瓜二つのヤクザ顔をした者だった。


「ねえ。絶対双子だよね」

「いや、おやじが言うには四つ子らしい」

「そうなの、あんな顔が四人も居るんだ」


 エルと囁きながら会話をする。そんな事を言い合っていると、桜がいきなり注文した。


「せっしゃはじゃんぼらーめんでござる!」


 桜の言葉に、店内がざわつく。


「な! 変な語尾、小さな背、女。間違いねえ“大きな小悪魔”」


 おい、今桜の事なんて言った。変な語尾は認めるが、その厨二ネームはどうにかならないのか。俺が恥ずかしい。


「じゃんぼらーめんを、完食しにきたでござる!」

「……少し待ちな」

「あ! 俺は醤油ラーメン」

「ボクは味噌ラーメン」

「お、おう」


 俺達の注文を聞き、厨房に引っ込む。


「席に着くか」

「カウンターで良いよね」

「だな」


 カウンター席に着いて、周りを見渡す。他の人は一心不乱にラーメンを食べ進め、周りが見えていないようだ。


「桜ー。ジャンボラーメンを食べきろよ。銀貨三十枚なんて払いたくないからな」

「分かってるでござる」

「あのー、ジャンボラーメンに挑むんですか?」

「ん?」


 桜と話していると、隣の席から声をかけられる。


「ああ。桜がな」

「この店のジャンボラーメンは凄いですよ? 本当に出来るんですか」

「桜なら出来るだろう」

「そうですか」


 話しかけてきた人はフードを深くかぶっており、顔が見えないが、声から女性だと分かる。背の高さからして、可成り若いのが分かる。フードから少し髪が覗いており、金髪だ。


「ふむ、俺はバベルだ。お前は?」

「私は、エリミ……エリです」

「ボクはエルフィル。エルで結構だよ」

「せっしゃは桜でござる。あともう一人あわせて、“果てなき夢”というパーティでござる」

「! あなた達が……」

「何だ俺達の事知ってるのか?」

「え、ええ。少し」


 俺が王都で活動し始めて、五日しか経っていない。エリはもしかして……考えるのは止めておこう。


「それで、エリは何を頼んだんだ?」

「あ、私はネギ味噌ラーメンを」

「なるほど」

「――待たせたな」


 待つ事数分。終に目当てのジャンボラーメンが出てきた。


「ほら、醤油に味噌。そっちの嬢ちゃんのネギ味噌だ」

「おお、美味しそうだな」

「ジャンボラーメンはカウンター席に入らないから、こっちに来な」

「望むところでござる」


 二人は、でかい机が在る場所に向かう。ラーメン屋の亭主はそこにでかすぎるドンブリを置き、砂時計を構える。桜も箸を構え、一色触発の状況だ。


「……はじめ!」


 亭主のその言葉を合図に、ジャンボラーメン対決は開始された。

 まあ、俺には関係ないし、ラーメンを食べよう。


「いただきます」


 箸を使い、麺を啜る。

 美味い! ――麺の歯ごたえが抜群だ。口に入れるとほろりと崩れるトロトロのチャーシューも絶品。

 ん? この緑色のは……ワカメだ! このワカメの塩気が良い味を出し、ラーメンを引き立ててる。

 よし、最後にスープだ。レンゲで掬い、スープを口に運ぶ。――ッ美味い! この醤油スープは少し薄く、飽きずにいくらでも飲める。


「美味いな」


 矢張り魔豚にハズレなし。


「ごちそうさまでした」


 自分の分を食べ終わり、桜を見ると、まだ麺が少し残っていた。砂時計は残り三分の一、桜の劣勢だろう。


「桜-。食べきれなかったら、お金は自分で払えよ」

「いやでござズズーる。せっしゃはお金がもうズズーないでござる」


 食べるか話すかどっちかにしろよ。


「負けるもんかー」


 桜はそう叫ぶと、今までの五倍のスピードで、食べ進める。


「は、早い!」

「ぐ、はぁはぁ」


 矢張り、あれが限界だったのか、スープを残して倒れ込む桜。


「桜ちゃん。立つんだ。諦めたらそこで試合は終了だよ!」

「……そうでござるな。まだ、諦めない」


 桜は不屈の魂で立ち上がり、スープを飲みに掛かる。


「――終了!」

「はあはあ。ギリギリでござるよ」


 桜が食べ終わるのと、制限時間が過ぎたのは、同時だった。


「主殿。こやつ、中々の策士であった。まさか、激辛らーめんだったとは」

「激辛だと!」

「ふはははは。家の売り、激辛ジャンボラーメンだ。……だが、負けちまったな」


 亭主は寂しそうに、呟く。


「……良い勝負だったでござる。せっしゃもにゃるかの激辛粉で慣れていなかったら、負けていたでござる」

「ふっ、四店王で三番目に強い俺が敗れるとはな。俺からも、良い勝負だった」


 何か友情が生まれたようだ。


「まあいいや。ごちそうさま」

「ああ。お代は結構だ」

「分かってる。美味しかったよ。エリもまたな」

「はい、また会いましょう」


 俺はそう言い、魔豚を後にした。



 ◇



「美味しかったでござるよ」

「そうだな。激辛だったのは想定外だが」

「だねー」


 大通りの端を、三人で歩いていると……。


「おい、来たぞ」

「本当か。膝を付け」


 と、いう会話があちこちから聞こえて来た。


「なんだ?」

「ん? 向こうから、何か来るでござる。周りの反応から、多分貴族」

「あんな奴に頭を下げる必要はない。隠れておこう」


 大通りの家と家の間に隠れて、貴族をやり過ごす事にする。


「来たよ」


 エルの言葉に大通りを見ると、動くソファーに乗った、男がやって来る。


「動かしてるのは、ゆにーくすきるかな?」

「そうでござるな。……それにしても、デブでござるな」

「……そうだな」


 ソファーに乗っている男は、お腹から贅肉がたっぷりと出ており、人生舐めきった様な目をしている。


「何かむかついてくる」

「そうでござるな主殿。殴ってもいいでござろうか?」

「駄目だよ。隠れた意味がない」


 止めるではなく、隠れた意味が無いか。エルも殴りたそうだな。


「おい! そこの獣人! 顔を見せな」


 デブ貴族は動きを止めると、跪いてる猫獣人の女の子に、顔を上げるように言う。


「チッ。薄汚い獣人め、顔を見せるな!」

「きゃっ!」


 デブ貴族はそう言うと、猫獣人の女の子を足蹴りする。


「……ムチャクチャだね」

「そうだな。自分から顔を見せろと言っておいて」


 そうエルと会話をして、もう一度大通りに目線をうつす。


「おい! こいつを連れて行け」

「「は!」」


 デブ貴族は後ろの騎士に命令して猫獣人の女の子を捕まえさせた。


「きゃああああ!」

「アリカ!」


 女の子の悲鳴に、母親らしき猫獣人の女性が声を上げる。


「ふはははは! こいつも連れて行くぞ!」

「は!」


 デブ貴族はまたもや騎士に命令して、母親らしき女性を捕まえさせた。


「ははははは。薄汚い獣人には教育しなけれブハッ!」


 デブ貴族は話している途中で、顔に拳がめり込んだ。


「「「カマセー様!」」」


 それを見て、一斉に声を上げる騎士達。


「貴様それでも貴族か!」


 デブ貴族を殴ったのは、桜だった。


「桜何をしている。あれ?」


 ふと横を見ると、エルまでも姿を消している。


「はあ」


 今度はデブ貴族の後ろから、エルが出てきた、頭の髪の毛を綺麗にそぎ落とす。


「つっ、エルまで! 畜生! 爆虫、全て出てこい」


 俺もローブに隠している爆虫を全て出し、デブ貴族に襲いかかった。


「やれ!」


 爆虫は騎士などに飛びかかり、爆発する。しかし、軽い火傷を負うぐらいで、大して効いていない。


「やあ!」


 俺はそんな騎士を無視して、デブ貴族を殴り飛ばす。


「グハ! はぁはぁ。俺はドックス公爵家の当主だぞ! 何をしてるか分かってるのか」

「……愚か者に制裁をあたえてるだけだ」

「主殿! 矢っ張り出てきてくれましたか」

「仲間を置いてけるか。それにしても、また語尾とれてるな」

「今は関係ありません!」


 ふと見ると、エルも猫獣人の親子を逃がして、しきりに礼を言われている。


「もうどうにでもなれだ。いくぞ桜!」

「おおせのとおりに」


 俺達はそう会話し、貴族に向かって襲いかかった。

友情、努力、勝利。ラーメン屋でも三大原則が出来るんだ(確信)

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