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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第四章 王都編
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第三十二話 記憶消去

「まずは宿を決めようか」


 俺達は、ウルルさんとの食事の後、宿屋を探すために裏通りを歩いていた。


「予算はどれ位だ」

「うーん。ニャルカは小さいから、三人部屋の一泊銀貨五枚かな」

「それぐらいだな」


 俺達の貯金は金貨五枚ほどあるが、何か癖になり銀貨十枚と見ると、高く見えてしまう。これでも可成り直った方だ。最初は銀貨三枚の宿で高いと思ってたからなー……。


「あれ? ……みんな誰に向かって跪いてるでござるか?」

「ん? 本当だ」


 桜の言葉で道を見渡すと、他の人達は、道の脇で一斉に膝をつき、目線を下に向けてる。


「にゃんにゃのだ?」

「おい! そこの庶民。なぜ膝を突かない」


 疑問に思っていると、俺達の目の前には後ろに三名の騎士らしき人を連れた、いかにも貴族の坊ちゃんらしき人物が居るのが目に入った。


「……暫く歩いて、良い宿を探そう」

「そうでござるな。夜は食べ放題に行きたいでござる」

「そうだ、おやじに言われたラーメン屋にも行ってやれよ」

「そうでござるね」


 目の前の貴族はめんどくさそうなので、まるっと無視して、宿の話を続ける。


「矢っ張り安い事が最低条件」

「おい! そこの平民」

「我は闇が広がる漆黒の寝床がいいにゃ」

「おい! 待て!」

「ご飯は美味しいのがいいでござるよ」

「まてと言っているのだ! 死刑にするぞ!」

「はあー。何なのさっきから、かまってちゃんなの? そんな構って欲しいならゴブリンの巣に突っ込むぞ。あそこなら一杯構ってくれるからな。もしくは太平洋に浮かべてやろうか? 寒いギャグを吐く蛙のエサにするのも良いぞ。それが嫌ならさっさと帰れ! この、貴族の穀潰しが!」


 このかまってちゃんな貴族に、暴言を吐きまくる俺ことバベル。


「おい! 俺が誰か分かってるのか!」

「はいはい貴族サマでしょ。貴族サマ」

「な! こいつらを引っ捕らえろ! 不敬罪で死刑にしてやる!」

「ほお、売られた喧嘩は買ってやるぞ。やれエル!」

「アイアイサー」


 エルは騎士の攻撃をかわしながら、手を触れていく。すると、騎士の姿は次々と消えていった。


「せっしゃでござる」


 桜は消えていった騎士が居た場所に、夜桜の峰で攻撃していく。


「な! おい、騎士ども! 何処に消えた」


 今のは、エルがLV2に成った事で手に入れたサブスキル『共に消える者』だ。


「最後にこいつでござるな」

「お、おい! 俺に手を出すと後悔するぞ。死刑だ。それが嫌ならさっさと消えろ!」

「逃がしても絶対死刑になりそうだから、逃がすわけにはいかないな」

「な! 貴族に手を出すとどうなるか分かってるのか」

「武器を抜いたから死刑だろうな。だが、俺はお前を貴族と認めん!」


 貴族とは、民のことを第一に考え、身を粉にして働くことで、民の血税で贅沢出来るのだ。こんな奴は貴族じゃない。


「ここじゃなんだから、あっちに連れて行くね」


 エルと桜はあの馬鹿貴族を引いて、路地に入っていく。


「じゃあ、ニャルカ頼む」

「にゃはははは。闇の誘惑にはあらがえない。『催眠波動』にゃ」


 ニャルカは波動ビームを、見ていた人に当てていく。


「お前達はにゃにも見ていない。ただの日常が過ぎていくだけにゃ。それと我を崇め……イタッ」

「何、条件を追加しようとしている。今の記憶を消すだけで良いから」

「にゃー」


 ニャルカには今見た事を消して貰っている。ここが裏通りだから良かったが、大通りだったら人が多くて凄い事件になっただろう。それにしても、今までの惨状に声をだしたり止めに入った者は居なかったな……。


「にゃ、終わったにゃ」

「ん? ごくろう」


 俺達は仕事を終わらせ、エルと桜が入った路地に入った。




「庶民ども! 何をしたのか分かっているのか!」


 路地裏に貴族の声が響くが、外に漏れる事はないだろう。あいつの後ろにいた騎士も、横で気絶している。


「うーんどうするでござるか? にゃるかに記憶を消して貰うでござるか」

「それは無理にゃ。我が闇の誘惑は、暫く休息にはいったにゃ」


 要するにクールタイムか。それは不味いな。どうしよう。


「そうだ! 知ってる、人には記憶を消せるツボがあるんだって」

「なるほど、その手があったか」

「ふーむ。盲点でござった」

「早く寝たいにゃ。さっさとやるにゃ下僕ども」

「な! 何をするつもりだ! 平民の分際で、俺に触るな。貧乏がうつる!」


 ニャルカは叩いておき、目の前で叫き散らしている貴族に、人間にあるという記憶を消す方法を試してみる事にした。




「あれだけやれば、記憶も消えるでしょ」

「そうでござるな。記憶が消えるだけでなく、アホになるかもしれないでござるが……」

「まあいいよ。臨時収入があったし」


 あの貴族からスッ……貰ってきたお金が、金貨十枚と、俺達の全財産を軽く越える額が手に入った。


「……話だけしか聞かなかったから分からなかったけど、王都に入って良く分かったよ。この町は、空気が重い」

「そうだな。貴族があんな事するなんて、……この国は十年と保たない」

「そうでござるな。エリミナちゃんが人気なのがよく分かったでござる。やっぱり凄いでござるな」


 王族をちゃん付けに出来るお前の方が凄いよ。絶対大物になると思う。


「うーん。矢っ張り此所かな?」

「まあ、此所が一番良いが」


 裏通りを歩きまわって、吟味した結果、この“時雨亭”って所が一番いいと思う。三人部屋で銀貨四枚。食事は別だけど、掃除も行き届いており、人気もありそうだ。


「ここにするにゃ! 我の寝床に相応しい」


 話会いの結果、満場一致で此所に決まった。




「ふむ、良いな」


 借りた部屋に入ると、ベットが三つあり、小さな机に椅子。それにタンスも置いてある。


「じゃあ、これからは自由行動で……」

「そうだねー。王都で依頼を受けるのは明日からかな?」

「我は一緒にいくにゃ」


 ニャルカはそう言って、俺の頭に飛び乗ってくる。


「ボクもいろいろ行きたい所があるから……」

「せっしゃもでござる」

「じゃあ、解散」


 そう言うと、二人とも宿を出て行き、ニャルカと二人っきりになった。


「にゃー。お前は何処に行くにゃ」

「なあ、いい加減そのお前っての止めてくれないか?」

「にゃ! じゃあ、下僕一号で」

「怒るぞ」

「にゃにゃにゃ。分かったにゃ。バベル」

「ありがとな」

「にゃ! にゃにゃにゃ」


 最後は何か照れてたが、何か照れること言ったかな?


「よし、俺は王都に行ったら行きたい所があったんだ」

「にゃ! 行くぞバベル」


 俺達も、宿を出て、目的地に向かうのだった。

貴族「は! ここは何処? 私は誰?」


てな事になったりした。(十分後にあらかた記憶を取り戻したけど)

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