第三十話 旅の道
「なあ、何で俺の頭に居るんだ」
あれから一夜あけて、俺達は街道を歩いていた。そして、あの厨二病猫のニャルカは俺の頭にしがみついてる。
「ふにゃー、お前の頭はいい感じなのにゃ、我の眷属と成らぬか」
「放り出すぞ」
「すみませんにゃ」
このアホ猫は俺の頭が気にいったらしい。それに、俺はくろまめに乗ってるため、あまり振動がないのも良いとの事だ。
「はあ、まあ邪魔さえしなければ良いんだけど」
「にゃははは、褒めて使わす」
こいつの偉そうな言葉はこれから無視しよう。多分病気みたいな物だから。
「バベル君! 何か近づいてくる」
エルが突然そう叫ぶ。桜も夜桜を抜き、ニャルカは俺の頭でワクワクしてそうだ。
「そうだ、ニャルカって妖精族最強なんだよね。もし襲ってきたら撃退して強さを見せてよ」
エルは純粋に最強という言葉を信じてるのだろう。だが、俺にはニャルカが小刻みに震えだしたのが分かる。
「わわわ、分かったにゃ。下等なる人間に我の強さを見せてやるにゃ」
ニャルカは俺の頭で、震えながら助けてと言っている気がするが、俺は千尋の谷に突き落とすタイプだ。と、言う訳で、行ってこい。
「にゃにゃにゃ。それはないのにゃ」
ニャルカがショックを受けてるが、気にせず突き落とそう。
「あれは、オークでござるよ」
街道の横、草をなぎ倒しながらやって来たのは一匹のはぐれオークだった。
「ふっふっふ。勝ったにゃ!」
オークを見た途端ニャルカは大声で勝利を確信する。
「にゃはははは。我こそは、冥王ニャルカ。我が波動をくらえ『混乱波動』」
ニャルカが偉そうに叫ぶと、プニプニとした肉球から、何かのビームらしき物が放たれる。
「我が波動は全てを支配する。闇に落ちた魂よ、我の糧と慣れ」
そのビームが当たったオークは目の焦点が合わず、自分の武器で自分の頭を叩きだした。
「我が支配の波動には誰も敵わぬ」
ニャルカのその一言で、オークは自滅した。
「おお、凄い」
確かに凄かった。多分あのユニークスキルは支配系に属する物だと思う。
「我の力に不可能はなし」
「その割にはさっきまで震えてたよな」
「にゃ、にゃんの事にゃ!?」
「正直に話せよ」
「はい、我のユニークスキルは二足歩行の者にしか効かないにゃ。それ以外だと効果が著しく下がるのにゃ」
「なるほど」
こいつが突然元気になったのはオークが二足歩行だったからか。それにしても、曖昧な条件だ。そこがユニークスキルらしいけど。
「これはお昼ご飯にしちゃおうか」
「賛成にゃ」
「やったでござる」
ここ最近オーク肉ばかりだな。美味しいからいいけど。さっさと解体を終わらせて、王都に向かおう。
オークとの一戦が終わり、俺達はまた街道を歩いていた。
「なあ、ニャルカ。そのがまぐちって魔道具か?」
俺はふと、ニャルカのさげているがまぐちから、魔力を感じたのでそう聞く。
「そうにゃよ」
「ふーん、魔法のポーチみたいな?」
「そうにゃ、この闇の袋には様々な危険魔道具が入ってるのにゃ。例えば――冥界七大魔道具の一つ。“死期の仮面”」
そう言って、ニャルカが出してきたのはいかにも厨二という感じの仮面だった。冥界七大魔道具と称するとは、さすが厨二病。
「これは何だ?」
この仮面は魔力も感じないし、ニャルカの手作りだと思う。
「にゃはははは。それを付けて相手を見ると、その者の死期が分かる闇の魔道具にゃ」
「ふーん」
取り合えず、付けてエル達を見てみる。
「特に何も見えないぞ」
「にゃ! そんなはずはないにゃ。いくら死期が遠かろうと、白く光るはずにゃ」
いくら見ても見えないと思う。これニャルカの手作りだから。
「可笑しいのにゃ。故障か」
その後も、エル達に付けて貰ったが、特に何も見えなかった。
◇
「……あれが王都じゃない?」
街道を歩いていると、エルが叫ぶ。
「本当だ。やっと着いた」
歩く事(俺は歩いていないが)五日。俺達は終にアルバス王国王都グラムニアに到着した。
「ここがお前達の目的地かにゃ?」
「そうだ、お前はいつまで俺の頭に居るんだ?」
「もちろん我が飽きるまでにゃ。人間、光栄に思うよい」
「ゴミ箱に捨てるぞ」
「すみませんでした」
ニャルカはたまに、俺を怯えた目で見てくる時がある。ただ大型の威力を見せて、時限型と寄生型で脅しただけなんだが。
「ご迷惑でにゃければ、一緒に居させてほしいにゃ」
「まあ良いけどさ」
この毛並みはやばいし。撫でさせてくれるなら。
「じゃあ、入るでござる!」
「そうだな」
そして俺達は、門の前に並ぶのだった。
【冥王の支配波動LV3】 所有者 ニャルカ
系統 支配系
メインスキル『冥王波動』二足歩行の者を支配する。時間は、相手の強さと自分の強さに比例する。クールタイムは一日。
サブスキル『混乱波動』二足歩行の者の思考を鈍らせる。何も考えられなくなり、自滅する可能性大。クールタイムは三時間
『催眠波動』二足歩行の者を眠らせたり思考を操作する。記憶操作やすり替えなどが可能。クールタイムは五時間。
必殺スキル なし




