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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第四章 王都編
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第二十九話 中二病

 俺はくろまめに乗り、エルと桜と王都に向かって進んでいた。


「あー。暇だ」


 そう、矢張り旅の道は暇だ。魔物も盗賊も襲ってくる気配がない平和な旅ほど暇な物はない。

 そんな退屈な旅路で、エルが提案してきた。


「じゃあ、しりとりしようか」

「お、いいでござるな」


 しりとりとは、最初の人が言った言葉の後ろをとり、繋げていくゲームだ。このゲームはとある冒険者からもたらされたらしい。なんでも『故郷のゲーム』だとか。うん、十中八九日本人だと思う。


「じゃあ、バベル君から」


 俺からか、まあここは定番に。


「リンゴ」

「次はせっしゃでござるか。うーん。ごーるでんらいだー」


 それは一体何処のライダーだ。


「あ、だね。……アイスマン」


 それは何処のスーパーマンだ。


「エルの負けだ。んがついた」

「あ! 本当だ」

「早く終わったでござるな。せっしゃにはすとっくがあったのでござるが」

「そうかそうか」


 そんな話をしながら、俺達は王都に向かっていく。



 ◇



「美味しそうな匂い」


 あれから夜になり、初日の旅は終了。俺達は街道の横で野営をしていた。


「早く食べるでござるよ」


 旅の途中で狩った一角兔とオークを焼いているが、桜が全部食べてしまうだろうな。そんな事を考えながら、オーク肉に手を伸ばす。


「「「いただきます」」」


 オーク肉にかぶりつく。すると、肉汁が溢れ、口に中を蹂躙していく。


「美味い」


 そう言ってしまうのも必然だ。そして、匂いにつられて変な奴がやって来るのも必然だったのかもしれない。


「にゃっはっは。我こそは、冥王ニャルカ。我はその焼き肉を所望するにゃ!」


 茂みをかき分けてやって来て、そう言い放ったのは、一匹の二足歩行の猫だった。


「……あの猫はなんでござるか?」

「分からない。アホだという事は分かる」


 オーク肉を焼いている所にやって来た猫は、二足歩行でマントを着け、肩からがまぐちを提げている。


「おい人間! 聞こえているのかにゃ!」

「生意気だな」


 俺はこの猫を抱き上げて、睨みつける。


「にゃんなのにゃ。我は冥王であるぞ。頭が高い!」

「うるさいぞ。こう言う奴は教育しないと。ちょっとこっち来い」


 俺は猫の首を掴で、木の陰に連れて行った。




「すみませんでしたにゃ」


 俺が少し教育すると、すぐ素直に成った。素直に成ると可愛いな。


「それで、何なんだお前は」

「ふっ。我こそは冥王ニャルカ。妖精族最強にして、世界を征す者にゃ!」

「もっとちゃんと自己紹介しろ」

「すみませんにゃ」


 素直だけど、何か俺のこと怯える目で見てくるんだけど。ちょっと爆虫の威力を見せて寄生型で脅しただけなんだがなー。


「その子矢っ張り妖精族だよ」

「妖精族?」

「うん。異種族なんだけど、小さな妖精や、喋る猫のケットシー等の可愛い姿の者が多いんだ」

「ふむ」


 確かにこのアホ猫は、エメラルドグリーンの目に、フワフワな毛。何か愛くるしいな。


「そうだな。この毛並みはやばい」


 ニャルカの毛並みはフワフワで、何時までも撫でていたい程だ。


「ゴロゴロ。お前は撫でるのが上手いにゃ」

「そうか?」


 俺の膝の上で丸くなっているニャルカを撫で続ける。


「可愛いでござるな」

「ああ。そうだ、何でお前はここに?」

「は! そうだ、人間。気安く我に触るにゃ」

「うるさいぞ」

「すみませんにゃ」


 急に生意気になったな。この猫にはもう少し教育した方がいいのか。


「実は、三日もたべて居らず、食べ物を別けて頂きたいにゃ」

「素直にそう言えば良いのに」

「すみませんにゃ」


 俺は焚き火で焼いていたオーク肉の串焼きをニャルカに差し出す。


「はむ、美味しいのにゃー!」


 ニャルカは夢中で食べ進める。あの小さな口の一生懸命食べているのも可愛いな。


「そうにゃ、忘れる所だったにゃ」


 ニャルカはそう言うと、がまぐちから何かの小瓶を取り出す。


「なんだそれ?」

「これは我の秘蔵の一品にゃ。ご飯にはこれを掛けなければ始まらないにゃ」


 小瓶の中身は赤い粉で、それをオーク肉の上に掛けると、オーク肉はたちまち真っ赤に染まる。


「はむ、矢っ張りこれにゃ」


 何か恐いが、ニャルカが美味しそうに食べてるところを見て、桜もオーク肉を差し出す。


「せっしゃも食べてみたいでござる」

「にゃっはっは。我がそんなそんな事をすると思うか。我の活躍で世界は救われているのだぞ。もっと崇めよ」

「掛けてやれ」

「はい、分かりましたにゃ」


 ニャルカの頭をハリセンで叩くと、素直になる。


「どれ、一口」


 桜は、オーク肉を一口食べると、表情が抜け落ちた。


「……辛いでござるー!!」


 そのほんの数秒後、桜は口からファイヤーブレスを出しながらそう叫んだ。


「矢っ張り辛い物か」


 あの赤い物を見た時核心したが、今一確証が無かった。だけど、桜が確かめてくれたな。


「バベル君なんで止めなかったの!」

「ノリで」

「ノリなの!」

「人間は貧弱だにゃ。我の足下にも及ばない」


 ニャルカがそんな事を言うが、桜はとても辛い物に抵抗があり、激辛カレーを一気のみ出来ると思う。その桜が口からファイヤーブレスを出すなんて。どんな辛さだよ。


「にゃっ、体がうずく」


 オーク肉を食べ終わると、ニャルカが突然そんな事を言い出した。


「大丈夫なの?」

「辛いでござる! 辛いでござる!」


 エルが心配して、桜は水を求めて駆け回る。


「我の体に封印されたアレが目覚めようとしている」

「なにが目覚めるの?」

「にゃ、これを沈めるため、我は少し休む」


 ニャルカはそう言うと、毛布にくるまり眠りだした。というか、それは俺達の物だ。


「……ボクもつかれた。バベル君。ボクは休むから」


 エルもそう言って、眠りだした。


「……濃い一日でござった」

「そうだな」


 今日の出来事で分かったが、ニャルカは厨二病の気配を感じる。

――教育風景。


バベル「分かってるのか。この岩をも砕く威力を内側から体験させてやる事も出来るんだぞ」

ニャルカ「にゃにゃにゃ」

バベル「大型で吹き飛ばすことも、大空から突き落とす事も出来るんだぞ。分かったら大人しくしろよ」

ニャルカ「にゃにゃにゃー」


ニャルカは終始震えていたそうだ。

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