第百四十七話 それは人類最高峰の者達
(あ、これヤバイかも)
エルニスは、二つ名持ち無双進撃の分体と戦いながら、そう思った。
【無双進撃 スライムゴッド】と戦っているといきなり無双進撃の体がちぎれ、エルニスに襲いかかってきたのだが、エルニスは当初本体よりは弱いだろうなと思って戦っていた。しかし、数分戦って理解した。これ、かなりやばい。と。
「トール。本体のほうはどう?」
「動キ無シ。分体ニ完全ニ任セル様デス」
「そっかー」
本体の無双進撃は分体に手こずっているエルニスを攻撃する様子はない。しかし、歩みは止めてその場で停止していた。
「アアアアアアアアア!」
「まったくうっとおしいね」
エルニスが分体に手こずる理由は、その異常な回復力にある。スライムという魔物は、身体の一部が消失しようとすぐに修復出来るのだが、無双進撃の分体は普通のスライムの何倍もの回復力がある。跡形もなく消えさろうとも、粒子レベルから身体を修復出来るその回復力は異常の一言だ。
「必殺スキルヲ使イマスカ?」
「うーん『戦の王』はまだとっておきたいし、もう一つはやめておいたほうがいい」
エルニスはトールの提案を却下し、分体と戦う。そもそもエルニスの特徴はその火力にある。エルニスは強い。だが、圧倒的な火力で跡形もなく消し去れるが、粒子レベルから復活する相手では相性が悪い。
エルニスは破壊兵器のようにさまざまな方向に特化していないし、魔導王のように多種多様な魔法も使えない。だが、その圧倒的な火力でのし上がってきたエルニスも、何度か回復力の高い魔物と戦った事がある。
「サブスキルを使うよ」
「了解シマシタ。アレ、デスネ」
戦神のエルニス。彼女のユニークスキルは珍しく、サブスキルが豊富だ。そのうち一つに、このような異常な回復力を持つものに効果的なサブスキルが存在する。
「アアアアアア!」
「ひさしぶりだなー。これつかうの。サブスキル『戦王の審判』」
トールの前方についている砲台に光が集まり、前方にいる無双進撃の分体に向かって放たれる。
「アアア! ア? アアアアアアアアアアアアア!」
最初は油断していた分体も、光の砲撃に浴び続ける事によって違和感を覚える。再生が遅い。いや、体が再生しない。回復能力を封じられたような、なにか絶大な存在によって死を決められたような……。
「アアアアアアアア! ア、ァ……」
分体は消える。エルニスが使った技、『戦王の審判』の効果は至って単純。ただ、相手を消滅させるだけ。この世から、戦王の名において。
「結構この技リスクあるんだけどなー」
「マアイイデショウ。使ワナケレバモット酷イ事ニ為ッテイタカモシレマセンシ」
「だね」
無双進撃の本体は、自身の分体を倒された事に驚いた。骨があるやつがいた。油断出来ない存在かもしれない。無双進撃はそう考え、他の二つの戦場も傍観する。
◇
――無双進撃本体後方。
「……弱い」
破壊兵器ストックの前には、無双進撃の分体がさらに分裂して、数百のスライムがうねっていた。それぞれ意思を持ったように動き、ストックに襲い掛かってくる。
「ほんと……弱い」
ストックは手に持つ二本の剣を使い、分体を切り裂く。分体の回復力ならすぐに復活すると思われたが、分体は回復する事なかった。二つに切り裂かれた分体はひっつく事なく悲鳴を上げながらドロドロに溶ける。
「……まあ……相性がいいだけか」
ストックのサブスキルである『武器投与』は、自身が召喚した武器にさまざまな効果を投与できる。ストックが今回投与したのは、回復阻害という驚異的な回復力を持つスライムなどに有効な効果を投与した。効果は読んで字のごとく回復を阻害するというもの。これにより、分体はさらに分裂して手数を増やすという作戦に出た。
「でも……数が多いっ!」
そう、分体は敵の特性を見極め、分裂して数を今この瞬間も増やしている。その数約1000以上。
「「「「アアアアアアアアアアア!」」」」
「……うっとおしい。チェンジ」
ストックがチェンジと言うと、剣が光り輝き、変化する。変化したその姿は機関銃といえるものだ。
「……死ね」
「「「「アガアアアアアァアァアアァア!」」」」
機関銃から無数の散弾が放たれ、分裂した分体を一気に殲滅する。ストックの攻撃で分体の数はみるみるうちに減り、千は居た分体は百にまで数を減らした。
「けっこう減った。……チェンジ」
ストックがそう言うと、機関銃は光輝き、一つの爆弾になった。
この武器が切り替わるのは、ストックのユニークスキルだ。その名は【武器は万と変化するLV10】。召喚系のスキルだが、その効果は所有者が知っている武器に無限に変化する球を召喚する事。ストックが武器と認識したものすべてに切り替わる、召喚系の中でもかなり強いユニークスキルである。
「……さようなら」
ストックは爆弾を分体の群れに放り投げる。その爆弾は分体達が逃げる前に爆発した。そしていつの間にかストックの手には小さな玉が握られている。
「はあ。まだ……終わりじゃないのか」
ストックは目の前にたたずむ巨大なスライム、【無双進撃 スライムゴッド】を見ながらそう呟いた。
◇
無双進撃の腹部右には、魔導王フウタが居た。魔法を唱え、出現した一体の分体を攻撃するが、分体は攻撃を受けたそばからすぐさま再生する。
「やっかいですね」
フウタもこのような敵とは何度か戦った事があるが、ここまでの再生能力を持つ魔物とは戦った事がない。
「【異常再生 スライムジェネラル】よりやっかいだ」
フウタは山に籠もって修行しているあいだ、二つ名持ちに片一歩突っ込んだ魔物【異常再生 スライムジェネラル】と戦った事がある。あり得ない回復力ですぐさま復活するため、三日三晩戦闘が続いたが、最後に勝ったのはフウタだった。
「アアアアアア!」
「だが、あの時すでに対策は出来ている」
フウタは【異常再生】と戦ったあと、このような再生能力を持つ魔物の対策を考えた。
「しばらく、時間を稼いでくれ。いでよ! 『ベヒモス改』」
フウタが魔法を使うと、地面に魔法陣が現れ、真っ白いベヒモスが現れる。
「ウガア!」
「三分だ」
「ウガ!」
ベヒモスとフウタは少しのあいだ会話し、フウタは魔法の準備に、ベヒモスは分体に飛びかかる。ベヒモスを召喚したのは、ユニークスキルではなく魔法だ。無属性に分類される転移魔法をフウタが改造し、遠くから仲間を呼び出す魔法、召喚魔法を開発した。
これで分かるとおり、フウタは四つの属性を操る人類でただ一人の存在だ。が、フウタがもっとも得意とするのは火でも水でも風でも土でもなく、無だ。フウタは、魔法使いの王であり、無属性を操る存在なのだ。
「無よ、いざなえ。永遠の無よ――」
無属性魔法を使うさい、フウタは詠唱をする。無属性とはコントロールが難しく、無詠唱で魔法を使えるフウタでも無属性だけは詠唱を必要とする。
「ベヒモス、そろそろ大丈夫です」
「ウガア」
フウタが詠唱をしているあいだ時間を稼いでいたベヒモスは返事をして、光の粒となって消える。
「アアアアアアアアアア!」
「これで終わりです。最上級無属性魔法“無”」
分体は居なくなった。フウタの魔法で、跡形もなく。そう、ただいなくなった。
「さて、この魔法も本体のほうには通じそうにありませんね」
フウタは前にたたずむ【無双進撃】を見ながらそう言った。
◇
――強い。この者達は、俺が直々に相手しなければならないようだ。
無双進撃は理解した。こやつらは羽虫ではない。自分が、本気で相手しなければならない存在だと。
戦神、破壊兵器、魔導王を叩きつぶすために【無双進撃 スライムゴッド】は動き出す。それは絶望の前奏曲。
戦神達はあまりに舐めすぎていた。二つ名持ちという存在を。それを今から知ることとなるだろう。
名前【戦王車トールLV10】 所有者 “戦神”エルニス
系統 召喚系
メインスキル 『戦王車召喚』魔核を燃料とし、さまざまな特性の砲撃をする戦車を召喚する。
サブスキル 『砲台展開』隠してある10の砲台を展開する。
『????・????』???
『戦王の審判』戦王の名において敵を一体消滅させる。自身の魔力の半分を失い、自身より強い者には効果がない。
『????』???
『????』???
必殺スキル 『戦の王』戦王車がロボットに変形する
『最終兵器・零キャノン』世界最高火力をたたき出す。
名前【武器は万と変化するLV10】 所有者 ストック=???
系統 召喚系
メインスキル 『武器の元』所有者が知る限り全ての武器に変化する。(所有者が武器と認識すればなんにでも変形は可能9
サブスキル 『武器強化』変形させた武器の火力を上げる。
『武器投与』武器にさまざまな効果を投与する。炎体性、毒攻撃、破壊、エトセトラエトセトラ。
『????』???
必殺スキル 『??????』???
『??????????』???
名前【魔法の王ぞ】 所有者 フウタ
系統 補助系
メインスキル 『魔法強化』自身の使う魔法の威力、射程を超強化する。
サブスキル 『魔力暴走』自身の魔力を意図的に暴走させて魔法の威力を超強化する。しかし、命中率は
下がり、所有者の精神にダメージを負う。
必殺スキル 『無を操る者』真に無属性魔法を操れる。(人間界単位で365日経過すると再度使用可能)
『魔法神強化』自身の使う魔法が一時的に神が使う魔法と同等の威力まで強化される。(人間界単位で666日経過すると再度使用可能)




