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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
最終章 二つ名持ち編
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第百四十三話 【無双進撃 スライムゴッド】

 ソレは1000年前、古代文明を滅ぼした怪物だった。ソレは、なぜイレギュラーとなったのか覚えていない。気付いたら、古代竜王、海王、暴牛という二つ名持ちの最強格に囲まれていた。

 自身がなにをしたのか覚えていない。しかし、今の状況が絶望的であるとは分かった。


『こやつをどうする?』

『我が領域を荒らした罪は深い。死して償ってもらう』

『それでいいのか? 死は一瞬だ』


 ソレはほんの少しだけ記憶を取り戻す。自身が人間の国を壊滅させ、大量の人を喰らったと。そして、古代竜王、海王、暴牛のナワバリを荒らしたと。

 彼らも、人々が死に絶える程度なら黙っていただろう。実際に彼らは何度もあった人々の滅亡を傍観していた。しかし、ナワバリを荒らされて黙っているような存在ではない。


『では、封印しよう。永遠の苦しみを味わってもらう』


 そしてソレは大陸の最北端に封印され、永遠の苦しみを味わうこととなる。ソレがどのような苦しみを受けたのか、それは表す事も出来ないだろう。ソレは苦しみつづけ、約1000年の時が経った。




 なぜ目覚める事が出来たのか、それは分からない。ソレは、そんな事を気にする余裕もなかった。1000年ぶりの外。普通なら喜ぶはずだが、ソレはすでに狂っていた。


 ――復讐だ。俺がこうなってのは全て人のせいだ!


 こうしてソレは復讐鬼となる。

 あまりにも無茶苦茶な思考。1000年間封印されていたのはすべて自身が悪いのだ。ソレが封印されたのは陸海空の最強である二つ名持ちの領域を荒らした罰。イレギュラーだったとはいえ、全ては自分が起こした事だ。しかし、ソレは人を憎んだ。1000年の苦しみにより狂ってしまった二つ名持ちは、憎悪に身を任せて進撃する。


 ソレは人々にこう名付けられた【無双進撃 スライムゴッド】と。



 ◇



 無双進撃は無茶苦茶な思考回路をしていたが、少しは冷静だった。無双進撃は二つ名持ちのナワバリを迂回しながら進む。少しでも他の二つ名持ちの気配があれば離れ、人を見つけたらのみ込む。

 無双進撃は二つ名持ちには近寄らず、人間を、森人エルフを、小人ドワーフを、魚人を、獣人を喰らう。


 ――気配がする。沢山の人の気配が。


 無双進撃が狙いを定めたのは、北の果てに在る国キノコ王国とタケノコ帝国。つねに小競り合いを続ける両国を見つけた無双進撃は、大きく体を広げた。


 中堅国である二つの国は、国土が狭い。しかし、平均から見るとかなり広い土地は、一瞬にして無双進軍にのみ込まれた。

 スライム状の体を広げ、人を、家を、作物を、全てをのみ込み両国を一瞬で更地にする。世界でも有数の軍事力を持つ国の軍はなにも出来ずに国とともにのみ込まれ、全ては無双進撃の養分となる。


 ――ああ。この感覚を覚えている。快感だ。もっとのみ込もう。


 無双進軍はゆっくりと進む。すでになぜ人を滅ぼそうと思ったのかは理解していない。ただ、欲望に身を任せて進撃する。無双しながら進撃する二つ名持ちは、もう止められないのかもしれない――


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