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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第九章 果てなき夢編
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第百三十五話 猫姫VS冥王~親子対決~

「ほら、もう始まりそうだよ」


 エル報告を聞き、街の広場まで行くと、そこにはニャルカとニャストさんが対峙していた。その二人を取り囲むように野次馬根性でやって来た妖精族達がたむろしている。


「ニャルカ。吾輩に勝っても冥王の地位は手に入らないぞ」

「べつにいいにゃ冥王にゃんて。我はあの日勝てなかった奴を倒しに来ただけにゃ」


 ニャルカはすでに少女の姿になっており、油断成らない目つきをしている。


「どうやら、傲慢をものにしたようだな。だが、その程度で吾輩は倒せん!」


 その言葉と同時にニャストさんは変化する。身長は一メートルを超し、猫と狼を足したような外見の、二足歩行の野獣になる。鋭い牙に逆立った毛を見れば正気を疑うが、その瞳にはしっかりと理性が見えた。


「ニャルカの覚悟、しかと受け取った。吾輩も本気で行かせてもらう」

「わー。冥王さんが本気になった」

「結界はろ結界」


 ニャストさんの言葉に周りの妖精族達がざわつき、どこからか巨大な魔道具を運んでくる。


「結界はったよ」

「これで安心」

「観戦観戦!」


 ニャルカとニャストさんを取り囲む結界が張られる。その強度はかなりのもので、人間では作れないほどだ。


 空間に魔力のかたまりが出来たと思ったら、ニャストさんはそこから一本の槍を取り出す。


「“冥槍グラムスラム”これを握るのは久しぶりだな」


 狼と猫をたしたような姿のニャストさんが持つには少し似合わない槍は、魔力が意図的に見えないようにされている事からかなりの性能と推測出来る。


冥界(妖精の里)に伝わる伝説の槍だ。それとニャルカ、冥界七大魔道具をかってに持っていったであろう」

「そうにゃ。後で返しとくから勘弁にゃ」


 そのような会話が終わると同時に空気が変わる。騒いでいた妖精族達も静まり返り、結界の中央では魔力が高まっていく。


「吾輩も本気で行く」

「全力の冥王に勝たにゃいと壁を越えたとはいえにゃいにゃ」


 すでに一触即発。なにかの切っ掛けで勝負は始まる。というかそろそろニャルカの性格を元にもどさないと違和感が凄い。あんなマジメなニャルカなんてニャルカじゃない。


 ――ひどい言われようだな。人も猫も変わるんだ。いつまでもアホのままではないと思うぞ。


 ――そう……なのか。


 ニャルカの変化に寂しいような気持ちでいると、群衆の誰かが声を上げた。


「勝負始め!」


 誰かが放ったその言葉とともに二人は戦闘を開始した。まず最初に動いたのはニャルカ。両手に白い炎を発生させ、波動を放つ。


「『混乱波動』にゃ」


 炎の効果で範囲は拡大し、ニャルカの前方を埋め尽くすほどの波動が放たれる。しかしニャストさんは動かず、余裕の笑を浮かべる。


「“冥将覇断”」


 ニャストさんは槍を立てに振り下ろした。その攻撃は空間をゆがめ、波動を切り裂く。(・・・・・・・)


「にゃ!?」


 波動を切り裂いた槍の斬撃はそのままニャルカまで真っ二つにしようと迫る。ニャルカは驚きつつも斬撃を避けた。せまってきた斬撃は結界に当たり、破壊する。結界を破壊すると斬撃はそのまま消えていった。


「結界壊れた」

「あぶないあぶない」

「もっと強力なの持って来ないと」


 野次馬の妖精族達がそう言ったかと思うと、あらたな魔道具が運び込まれて前の二倍の強度はある結界が張られる。


「実の子ににゃんて攻撃をするにゃ」

「息子、いや娘? ……吾輩の子ならあれぐらい大丈夫であろうと思っていたぞ」

「まったく。『催眠波動』」


 ニャルカは不意打ちで波動を当てにかかるが、ニャストさんはその波動を余裕で避ける。


「どうする息子()よ。波動は避けれるし、斬れるぞ」

「波動が斬れるにゃんておかしいにゃ。まあ、今の我は波動だけが攻撃手段じゃにゃい!」


 ニャルカはそう言ったかと思うと、がまぐちから二本の短剣を取り出す。いや、双剣と言ったほうが正しいだろう。ニャルカは双剣を握って不敵な笑を浮かべた。


「行くにゃ」

「むっ!」


 ニャルカは速かった。猫の俊敏さであっという間に距離を詰め、ニャストさんに攻撃する。驚いていたニャストさんもすぐに平常心になり、双剣の攻撃を槍で受け止めた。


「まさか武器を使うとはな。成長したではないか」


 ニャストさんは嬉しそうに言いながら、槍でニャルカを攻撃する。


仲間エルに教えてもらったにゃ」


 ニャルカはそう言いつつニャストさんの攻撃を受け流す。


「そうかそうか」


 ニャストさんは高笑いしながら攻撃を加える。ニャストさんの外見からすれば、その高笑いは獲物を見つけた獣そのもの。ニャルカはそんなニャストさんを特に気にもせず、双剣で攻撃する。


「……ラチがあかん。吾輩も、もう少し本気で行くぞ」


 ニャストさんはそう言ったかと思うと口を開け、そこになにかを作り出す。


「かっ!」

「にゃ!?」


 狼のような獣の口から紫色の光が放たれる。その光はニャルカの腕をつらぬ――かず、ニャルカは光を双剣で受け流した。


「あっぶないにゃ。我の左腕が無くなるところだったにゃ」


 光線を受け流すという超高等技をしたにもかかわらず、ニャルカはそれを誇りもせずニャストさんを責める。


「強くなった。本当に強くなったな! ニャルカ!」

「にゃ! 実の子の腕を攻撃するなんて親じゃないにゃ」


 会話のフォアボールをしている親子はそんな最中でも剣と槍をぶつけ合う。


息子()が成長した事を実感したし、そろそろ叩きつぶすぞ」


 ニャストさんがそう言うと、雰囲気が変わる。ニャルカはその気配を敏感に感じ取り、すぐニャストさんから距離をとる。


「フハハ。かっ!」


 ニャストさんはさきほどの光線を空に向かって放つ。光は結界に反射し、ニャルカへと向かった。


「にゃ!?」


 ニャルカはギリギリのところで避けるが、ニャストさんは光線を沢山放ち、上からも前からも攻撃される。

 前と上、二方向から大量に攻撃されれでさすがのニャルカも避ける事が出来ず、紫の光線が足に当たった。


「に、にゃあ」


 足に光線を受けたニャルカは地面に倒れる。ニャストさんは悪魔の様な笑でニャルカに一歩一歩近づく。


「まだ、吾輩に勝負を挑むには早かったようだな。たった三年で吾輩の三百年を越えられると思うなよ」

「年齢にゃんて関係にゃい! 我はあの日越えられなかった壁をルシファーと一緒に越えにきただけにゃ」


 ニャルカはそう言うと両手に白の炎を集め、波動をニャストさんに放った。


「『冥王の絶対波動』!」

「むっ!」


 ニャルカが放ったのは必殺スキル『冥王の絶対波動』。実力差があろうが魔力しだいでは相手を支配出来る必殺スキル。とっさの出来事にニャストさんは反応出来ずに波動をくらった。


 ――やったか?


 ――さあ。


 ニャルカの魔力は現時点で十万は超えているだろう。さすがに十万もの魔力があればいくらニャストさんでも……。


「驚いた。吾輩の体が数秒動かなかったぞ」

「にゃ……に」


 それだけなのか。ニャルカの魔力量を持ってしてもニャストさんは支配出来ない。


 ――これはニャルカの負けか。終わったら青の炎で治療してやれ。


 ――現在、炎を生産する魔力がありません。


 ――ニャルカに分けて貰えばいい。


 ――魔力吸収マジックドレインか。あれ苦手なんだよな。


 魔法使いの高等技魔力吸収。相手の魔力を吸収して自分の魔力にする技だが、かなり難しく、俺もあまり使いたくはない。


「ニャルカ、あと数歩足りなかった」


 ニャストさんはそう言うと、ニャルカの首元を掴んで持ち上げる。その姿は凶悪な魔獣がいたいけな美少女に止めをさそうとしているようだ。実際そうなのだが。


「どうする?」


 完全に悪役となったニャストさんはニャルカに問いかける。これは美女と野獣ならぬ美少女と魔獣だな。


「にゃぁ……」


 もうニャルカの負けは決まっているようなもの。それでもニャルカは降参の言葉を言わない。


「しょうがない。絞め落とさせてもらうぞ」

「にゃあっ」


 ニャルカは歯を食いしばりながらうなるが、それでも負けをみとめない。


「……こう……さ……」

「ほう」


 ニャルカは途中まで言葉をつむぐが、最後の“ん”を言わない。


「……にゃは」


 ニャルカは笑った。ピンチの中、笑った。それは諦めた笑はない。勝ちを確信した笑。


「にゃあ!」

「なに!」


 ニャルカは気合いをいれると、力を振り絞ってニャストさんの腕を蹴り上げ、その手から逃れる。


「ごほっ。はぁはぁ。我が父よ、悪いが、我の勝ちにゃ」


 なにを根拠に言っているのだろう。ニャルカに冥王ニャストさんを倒す手段はないはずだ。しかしニャルカは負ける気がしないようだ。


「……なにを言っている?」

「我を、すぐに倒せば我は負けてた。だが、我はヒーローだからピンチの時は成長の時にゃ! 冥王が命ず。世界よ! うねるにゃ! 必殺スキル『冥王は全てを支配す』」


 必殺スキル『冥王は全てを支配す』。俺はそのようなスキルは知らない。ニャルカの必殺スキルは『冥王の絶対波動』だったはず。ならば考えられるのは一つ。新しい必殺スキルだ。LV10となった時にもう一度与えられる必殺スキル。


「なにが起こっている」

「にゃっはっは。我が成長し、LV10となった事でお前は負けるにゃ!」

「なにっ!?」


 地面がうねった。突風が吹いた。空が暗くなった。まるで世界がニャルカに支配されたような感じだ。いや、実際支配されたのだろう冥王ニャルカによって。


「地震だ!」

「台風だ!」

「結界が壊れた」


 え? いま不吉な事が聞こえたような。


「バベル君、結界が壊れてるよ」


 エルの言葉に目をこらすと、ニャルカとニャストさんを取り囲んでいた結界は綺麗さっぱり消えている。


「本当だ」


 広場の中央ではニャルカが高笑いし、ニャストさんも今どうなっているかいまいち掴めていないようだ。


「にゃっはっは。世界よ、うねり、冥王を倒すにゃ!」


 ニャルカの言葉と同時に雷がニャストさんに落ちる。


「ぐっ!」


 とっさの事でもさすが冥王。その雷を避ける。しかし、まだ終わりではない。地が割れ、ニャストさんをのみ込もうとする。鋭い風がニャストさんを攫おうとする。ニャストさんにさまざまな自然災害が襲ってくる。無茶苦茶だった。ニャルカの独壇場。そして戦いは終結する。


「にゃはは。格好良く言うなら、チェックメイトにゃ」


 ニャルカは双剣をニャストさんの首もとに置いてそう言う。すでにニャストさんは自然の驚異で満身創痍だった。


「……降参だ」


 いま、ニャルカは妖精族最強の冥王に勝利する。それは、ニャルカが冥王を越えた証明だった。

名前【冥王の支配波動LV9→10】 所有者 ニャルカ

系統 支配系

メインスキル 『冥王波動』二足歩行の者を支配する。時間は自分の強さとあいての強さに比例する。一日一回使用可能。

サブスキル 『混乱波動』二足歩行の者の思考を鈍らせる。何も考えられなくなり、自滅する可能性大。クールタイムは三時間。

      『催眠波動』二足歩行の者の思考を操作する。記憶操作やすり替えなどが可能。クールタイムは五時間。

      『音波波動』二足歩行の者に強烈な音波を浴びせる。耳が破壊され、脳がかき回される感覚に襲われる。クールタイムは五時間。

      『強化波動』味方の能力を強化する。自分自身には効果がない。

必殺スキル 『冥王の絶対波動』一体限りたとえ実力差があろうと、魔力しだいで支配出来る。支配しているかぎり一秒事に魔力を規定量消費する。

      『冥王は全てを支配す』冥王は全てを支配出来る。new

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