第百三十話 Aランク冒険者
第九章の始まり始まり。
あの盗賊団の事件から一週間が経過した。いろいろあったが、桜は動けるまでに回復し、ニャルカも少女の姿から元の姿に戻った。ニャルカによると『我は元の姿を気に入っているから』だそうだ。まあ定期的に少女に戻ったりもしているが。そんないろいろな事があった一週間だが、それ以上の驚きが目の前にはあった。
「バベル君ついにここまで来たね」
「ああ」
エルは目の前の物に感動し、涙を流す。
「バベル殿。これが噂の……」
「ああ。これが、……Aランクカードだ!」
俺達の目の前にあるのは四枚のAランク冒険者の証。世界で数百人しか居ないといわれるAランク冒険者に俺達は成ることが出来た。
イレギュラーのデュラハン討伐。化け物屋敷のボスに、今回、死霊団福団長、団長、絶影法団ボス、百匹のカラス幹部の拘束の功績が認められ、ついにAランクへと至った。
「よかったよ。ついにここまでたどりついたね」
「そうでござるな。それにユニークスキルも全員9になったし、良い事もあったでござるな」
桜の言うとおり、俺達は全員LV9になった。俺は新しい爆虫が追加されたが、ニャルカと桜とエルはとくに変わりなかったようだ。
「よし、じゃあお祝いしようか」
「ああ。豪華な昼飯を食う事にしよう」
Aランクになったお祝いとして、今日は少し豪華な昼飯を食う事となった。
ついでに言うと、このあいだニャルカはずーっと寝ていた。
◇
「ひさしぶりだな」
昼ご飯を食べ終わったところで現れ、そう言ったのは主人公君。ほんとなんでいつもご飯を食べてるところに現れるんだろう。
「そうだな」
適当に返事を返すと主人公君は空いている椅子に座る。
「ねえ、だれだっけ?」
「確か武闘大会でバベル殿に負けていた」
「そういえば居たにゃ」
突然の主人公君襲来にエルと桜とニャルカはヒソヒソと会話を始める。
「約束は覚えているな」
「…………」
……なんだっけ。え? なにか約束した? すっかり忘れた。……ここで忘れたと言ったらどうなるんだろ。
――バベル。ほら事件のあった日にこんど会ったら決闘をしようと……。
――ああ。そうだったな。身に付けている魔道具を巻き上げる賭けをしたんだっけ。
完璧に思い出した。
「あ、ああ。もちろん覚えている」
「……まあいい。僕と決闘してくれるね?」
「まあ暇だしいいぞ」
この前の俺では主人公君には勝てなかっただろう。しかし、今の俺なら勝てる。マモンと同化をして圧倒的に力を得た俺なら。
「バベル君絶対忘れてたよね」
「それは言っちゃだめでござるよ」
「意地っ張りにゃ」
そこうるさいぞ。
◇
「準備はいいか?」
「ああ」
ここは冒険者ギルドの訓練場。そこで、俺達は向き合っていた。
「気絶、戦闘続行不可能と判断されたら負けだ。回復薬などの使用はなしにしよう」
「それでいい」
たがいにルールを確認する。エル達はフラフラと一緒についてきてボーっと観戦している。いつのまにか出現していた主人公君達のパーティメンバーは主人公君を応援していた。なんだろうこの違い。
「レオ兄がんばって!」
「負けるんじゃないわよ!」
「レオ様なら勝てます」
「今度こそ勝のよ」
「ああ。三度目の正直だ」
二度あることは三度あるとも言う。一方で俺の仲間は……。
「お腹減ったでござるな」
「我眠い」
「これ終わったらなにしよう」
ちっとはお前達も応援しろ。
「じゃあコインが落ちたら戦闘開始だ」
「分かった」
「じゃあいくよ」
主人公君はポケットから硬化を取り出し、投げた。その硬貨が地面に落ちると同時に主人公君は動く。
「『聖剣召喚』」
召喚系のユニークスキルによって剣が呼び出され、主人公君の手元に出現する。
「はあっ!」
主人公君の剣から光の斬撃が出現し、俺に向かって来る。しかしすでにマモンと一つになった俺は、赤の炎をそれを受け止めた。
「……なんだその炎は。それに目の色が」
主人公君は俺の変化に警戒し、一歩下がって聖剣を構える。
「あれがバベルの同化か。あんま変わってないにゃ」
「目の色が変わるだけじゃなくてもっと凄い変化が見たいなー」
「そんな事よりおうどん食べたいでござる」
仲間からは結構辛口の評価が。というか最後はなにを言ってるんだ。
「まあいい。全てを斬るまで!」
主人公君は剣を握ってこちらに向かって来るが、俺は距離を取り、爆虫の図鑑を召喚する。
「……周りに人が居る状況ではあまり使いたくはない技だけど」
俺は流星型、地雷型、手榴弾型、さまざまなタイプの爆虫を大量に召喚する。そして、爆虫を召喚した事で失った魔力は青の炎で回復し、爆虫達に赤の炎を纏わせる。
この姿でしか使えない技だし、消費がべらぼうだが、カッコイイから一回実戦で試してみたかった技だ。
「なにをする気だ?」
召喚した爆虫は百を超え、まだまだ召喚される。危機を感じた主人公君は俺に向かって特攻してくるが、すべて遅い。
地雷型は地面に潜って主人公君の周りに潜伏し、爆虫達は手榴弾型の爆虫を持って空へと上がる。
「今回も俺の勝ちかな? “絨毯爆撃”」
爆虫達は手榴弾型を主人公君の頭上に落とし、一緒に落下する。主人公君は落ちてくる爆虫を斬るが、数が多すぎる。止めどなく落ちてくる爆虫。あたりには地雷型。この戦い方は青の炎で魔力を回復し、赤の炎で主人公君の防御を突破するほどの爆発力を得なければ不可能な技だった。
「また、僕の負けか」
次々と降ってくる爆虫、そして自身の周りを囲む地雷型に時限型。さまざまな方向から襲いかかる爆虫を対処しきれず、爆虫達は一斉に主人公君に落ち、止めをさした。
――勝ったか?
――多分勝っただろう。彼なら死にはしないだろうし、お前の勝ちだ。
今回はなんとか勝てたが、対策されると不味い。爆発に強い装備を身に付ければさすがに与える威力は落ちるし、倒すあいだに俺がやられる。
――それとバベル、残念なお知らせが一つ。
――なんだ?
――八岐大蛇の魔核で補充された魔力が切れた。最低Aランクの魔物の魔核で補充するか、お前の魔力をコツコツ貯めて私にくれないと炎は使えない。
――え?
Aランクって大変なんだよ。倒すのも大変、見つけるのも大変。買うのも楽じゃない。俺の魔力も休日の戦闘をしない時ぐらいしか補充出来ない。
――つまり?
――最低三万の魔力を補充したら一回だけ使える。まったく前までは魔力を自動生産する機能があったんだがな。
……俺の全魔力を毎日補充しても十五日かかる。……主人公君なんかで消費しなければ良かった。
「バベル君。勝ったね」
俺が炎を使えなくなった事に沈んでいると、エル達がやってくる。
「ああ。後は主人公君から魔道具を回収してくるだけだ」
「……少しは容赦してあげたら」
「ダメ」
――ケチだな。
――はっ!
――それと、少し外に出るぞ。
マモンはそう言うと、俺の横に出現する。
「……えーとどなたですか?」
エルは突如出現したマモンの混乱し、桜は驚きながらおやつを食べる。
「この姿で会うのは初めてだな。私はマモン。バベルの中に居るものだ」
「へー。本当に存在したんだ」
エル達に俺の中に居るマモンの事を話しても半信半疑だったし、今回証拠を見せられて少し混乱しているらしい。
「うん。まあ初めまして。よろしく」
「ああ」
マモンとエルは固い握手を交わした。これが、マモンの存在をみんなに認めてもらう瞬間だった。
もう第九章は終わりの方まで書き上がってるのでバンバン投稿していきます。




