第百十話 流星は腹ぺこ
――エンシャル帝国・帝都。
四日で着いた。ここはエンシャル帝国の帝都。竜に乗って四日で、エンシャル帝国の帝都まで戻って来られた。
「じゃあ、ここでお別れっす」
「お世話になりました」
「こちらこそっすよ」
帝都についてすぐに鈴玉さんと別れ、俺達はこれっからの事を相談する。
「さて、どうする? 帝都で少し活動するか、このまままっすぐ行くか」
エルがこれからの予定を提案する。
「うーん。せっしゃ早く暑い処にいきたいでござる」
「我はどっちでもいいにゃ」
……どうするか。
「今日は帝都に泊まって、明日一番にガルハ王国に向かおう」
「それはいいでござるな」
「うん。ボクも良いと思う」
ニャルカはとくに何も言わず、あたりをフラフラと歩きまわっている。
「じゃあ、ボクが前回泊まっていた宿を取るから、バベル君は食料の買い出しに行って」
「分かった」
「せっしゃは?」
「桜はニャルカと遊んでこい」
居ても多分邪魔になる。
「分かったでござるよ」
桜はニャルカを抱いて、町中に消える。俺は買い出しに、エルは宿を取る為に、それぞれ別れた。
◇
「これで一通り買ったな」
保存食や切れていた旅用の道具を買い込み、宿へと向かっていた。
――なあ、バベル。アレはなんだ?
――あれ?
マモンが気にする方を向くと、うさぎの着ぐるみを着た何かが、倒れていた。
「…………」
あれって絶対エニシダだよな。猫の着ぐるみじゃないけど、あれは絶対にエニシダだと思う。
――流星か?
――そうじゃないか。
うさぎの着ぐるみを着て倒れているなど、あの着ぐるみ馬鹿以外ありえない。あれは見なかったことにして放置した方が良いのかな。
――しかし、構ってくれといった雰囲気を感じるぞ。
マモンの言うとおり、うつ伏せで倒れた着ぐるみ馬鹿は、構ってくれ構ってくれという雰囲気をかもし出している。しかもチラチラこっちを見てくるのだが。
――こっちをチラ見しているぞ。
――無視しよう。
――こっちをじっと見つめているぞ。
――無私だ無視。
――ちょっとずつこっちに近づいて来ているきが……。
――逃げるぞ。
這いつくばってこっちに近づいてくる着ぐるみ馬鹿を確認して、俺はいそいで逃げる事にした。
「わっちゃっちゃ。なにも逃げる事はないだろう。バベル」
しかし、回り込まれる。
「なにを……」
着ぐるみ馬鹿は俺の肩に手を置いて、言った。
「ご飯奢って」
と。
「ムシャムシャパクパク。生き返る-」
着ぐるみの口にどうやってご飯が入るかは分からないが、多分永遠に分からないのだろう。
「近衛騎士団の騎士団長をしているなら、お金も持っているんじゃないか?」
「わりゃのお金は、フィギュアを買いそろえる為に全部なくなるにょだ」
ただの無駄遣い野郎か。
「せめてご飯を食べる分ぐらいは残しておけよ」
「過去二〇〇回ほどそんな事をやったけど、一度として成功しなかった」
のめり込むのはいいけど、俺にまで迷惑を掛けないで欲しい。
「いやー。三日三晩食べていなかったから、バベルが通りかかってくれて助かった」
「お礼は良いからなにかくれ」
「……わりゃはお金を持っていない。上げる物もこの前ひろったバナナの皮ぐらいしか……」
「いるか!」
バナナの皮をほしがるなんて、芸人しか居ないだろう。バナナの皮より現金だ。
「……じゃあ、わりゃが出来る事ならなんでもしよう」
「ん? 今何でもするって言ったね」
一国の騎士団長になんでも命令出来る権利なんて夢のような報酬ではないか。
――悪魔の取引……。
マモンがボソっと失礼な事を言う。
「さあ、なんでもするがよい」
「じゃあ、願いを三つに増やしてくれ」
「それは駄目だろ! その願いは駄目ってそうば決まってるにょ!」
「じゃあ二つで」
「二つでも駄目」
でも何でもするって言ったよな。
「じゃあ、国庫からお金を……」
「わりゃにはそんな事出来ない。なぜなら、金庫の番号をしらないから」
お前なら壊せると思うのだが。最悪金庫ごと持って来てくれれば、あとは罪を着ぐるみ馬鹿に被せれば。
――悪魔か!
別に悪魔ではない。たんなるジョークだ。
「じゃあ、俺達ガルハ王国に行きたいんだけど、そこまで連れてってくれないか?」
「むむむ。さすがにわりゃはそう長いこと国を出られないけど、アルバス王国の国境あたりまでならOKだ」
さすがにガルハまでは行けないか。まあ、国境前まで連れてってくれるなら、それで良いか。
「じゃあ、それで頼む」
「分かった。どこに集合だ?」
「明日の朝一番に北門で」
「分かった。それじゃあ」
そう決まると、着ぐるみ馬鹿は飯屋を去って行った。
俺も会計をすませて、エルが取っている宿へと帰った。
◇
「ひー。ふー。みー。と。うむ。全員居るな」
次の日、俺達果てなき夢とエニシダは帝都の北門に集まっていた。
「じゃあ、この箱に入ってくれ」
エニシダが魔法の鞄から取り出したのは、四角い箱。四人が入っても大丈夫そうな箱を、エニシダは軽々と持ち、地面に置く。
俺達はそれに次々と入り、蓋を閉められた。
「じゃあ、飛ぶぞー」
外から声が聞こえて、浮遊感を感じる。なにかに包まれたと思ったら、次の瞬間、エニシダの声が聞こえてきた。
「着いたぞー」
と。




