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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第八章 ガルハ王国編
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第百十一話 鈴玉の話

 時は少しさかのぼり、ここはエンシャル帝国の皇帝が住む城だ。そこに、鈴玉リンユーは来ていた。

 正式な訪問ではないので魔道具で姿を隠し、小白バイニャンに乗って城の周りを飛び、目的の部屋の窓を探す。


(えーと。あの人の部屋はどこだったっすかね~)


 なにぶん鈴玉も前回訪問したのは五年も前なので、部屋の正確な位置は覚えていない。しかし大体の位置は覚えているので、そこを重点的に探す。


(おっ。ここっすね)


 数分後、鈴玉は目的の部屋を見つけた。その部屋の窓を外し、魔道具で姿を消した竜を外に停留させる。鈴玉はそれを終えると、部屋の中へと入った。

 部屋の中は執務室だった。なかなかお目に掛かる事はない豪華な執務室には、呆れた表情をする美少年が一人椅子に座っていた。


「はあ。あの気配はやっぱり君か」


 その人物はエンシャル帝国の皇帝。そして、Sランク冒険者“大切断”エクルだった。エクルはいままで持っていたペンを置き、椅子に座ったまま鈴玉に向き直る。


「あはは。エクルさんもあいかわらずまったくお変わりなく」

「まあ、一五年以上前からこんな容姿だからね」


 エクルは王になる前、15歳の時から容姿も背格好も変わっていない。老けた様子も見せず、つねに美少年のままだ。


「それで、なにか用? 正式な訪問もしないで、窓から入ってくるなんて君じゃなかったら殺してたよ」

「そうっすか。あ、用はちょっと気になる事があったんで確認に来たんすよ」

「確認?」


 物騒な事を言うエクルを受け流し、鈴玉は用件を言う。


「最近なんか変な感じがしないっすか?」

「…………」


 鈴玉の言葉を聞き、エクルは沈黙する。少しの間沈黙が続き、エクルが口を開いた。


「確かにそうだね。……君も?」

「はい。なんか、二つ名持ちが暴れているような気配が」

「……ふむ」


 エクルは考え込む。それは体感にして一分ほどだ。


「いつ頃から?」

「だいたい二週間ほど前からっすかねえ」

「そんな前から……」


 エクルは気配を探ったりするのが苦手だ。だから、世界で強大なものが目覚めても、ほかの世界の強者達からどうしても一歩遅れてしまう。それでも、やはり遅くても感知出来るのは強者の証明だろう。


「場所は?」

「あー。そこまでは分からなかったっすねえ。ニコルソンさんなら位置まで分かると思うっすけど」

「迷宮王か……」


 エンシャル帝国のもう一人のSランクの名前を上げ、エクルは沈黙する。


「駄目だね。彼は迷宮の800層あたりに居るから」

「そんな行ったんすね。じゃあしょうがない」

「まあ、二つ名持ちが暴れていても、すぐ収まるでしょ」

「……そうだと良いっすね~」


 鈴玉の意味深な言葉に、エクルは少し考える。


「エニシダには警戒するように言っておこう」

「まあ、それぐらいした方がいいっすよ」


 鈴玉は伝える事は終わったと判断し、窓枠に足をかける。


「もう行くんだ」

「はい。私も国をあまり離れる訳にはいかないんで」

「ん。じゃあ、しばらく会わないかな」

「いやー。案外一年以内には会うかもしれないっすよ」


 鈴玉は予言めいた言葉を言い残し、小白に飛び乗った。


「じゃ!」

「うん」


 二人はそこで別れた。強大な、嫌な予感を抱えて。



 ◇



「はあ。なんか食べてくっすかねえ」


 鈴玉は小白を小さくして頭に乗せ、エンシャル帝国の帝都の町並みを歩く。


「クルゥ」


 小白は可愛い鳴き声をだして賛同した。


「じゃあ、なにか買うっす」


 店を探して町並みをフラフラ歩いて入ると、鈴玉は見知った顔を見つけた。


「あれはバベルさんとエニシダさんすか?」


 鈴玉の目線の先にある飲食店には、うさぎの着ぐるみを着たエニシダと、バベルが居た。


「バベルさんエニシダさんとも友達だったんすか」


 鈴玉は納得して、また町並みを歩き出した。フラフラ、フラフラ。風の向くまま気の向くまま。

そろそろ更新ペース戻します。

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