第百二話 VS化け物屋敷①
清牙に来てから一週間後。それは四人で昼ごはんを食べている時だった。
「美味しいでござるな」
清牙特有のご飯を食べていると、人がやってくる。
「ひさしぶりっすね。一週間ぶりぐらいっすか?」
やってきたのは鈴玉さんだ。
「それぐらいだね」
「はい。そうだ。ご一緒してもいいっすか?」
「どうぞどうぞ」
椅子を勧めると、空いている席に鈴玉さんが座る。
「ハムハム。なにか様でござるか?」
「そうっす。ぜひ、一緒に依頼に行かないっすか?」
「「依頼?」」
Sランク冒険者が行く依頼なんて俺達につとまるのか?
「依頼の内容としては、そんな難しくないっす。たんなる調査依頼なので」
「調査依頼になぜSランクが?」
鈴玉さんに、疑問に思っている事を聞く。普通は調査依頼なら、最大でもAランク冒険者が受ける依頼だ。
「実は、とある村で化け物屋敷らしい団体の目撃情報があったんすよ」
「「化け物屋敷の!?」」
化け物屋敷。六大盗賊団の一つで、白金貨二十枚の懸賞金がついている盗賊団。あまり好戦的ではないが、小国を一つ落とした事もあるので、Sランクで討伐依頼が出ているはず。
「見間違いかもしれないっすが、もし本当だった場合かなり大変な事になるから、私が派遣される事になったんすよ」
「そんな依頼になんでボク達を……」
「そりゃあ、誘える人がバベルさん達しか居ないからっすよ」
なんだ。ただのぼっちか。
「というか、俺達を誘う必要があるのか?」
「もちろんっす。バベルさん達は強そうだし、さすがに私だけでは厳しいかもしれないので。数を相手にするのは苦手なんすよ」
なるほど。相性か。人外の領域でも、得意不得意があるんだな。
「私だけでも出来る事は出来ますが、万全を期してバベルさん達を連れて行きたいっす」
「なるほど。良いぞ」
Sランク冒険者が居るなら、大丈夫だろう。
「ボクも」
「せっしゃも行けるでござる」
「ムシャムシャ。我の力の波動は最強にゃ。どんなやつでも怖くない」
三人とも行くと言う。ニャルカの波動はあまり当てにならないけど、強い奴には強いからな。
「じゃあ、決まりっすね。明日の朝、北門の前に来てくださいっす」
「はい」
鈴玉さんはそう言うと、俺達の席を離れていった。
――化け物屋敷か。
――気をつけろよ。六大盗賊団はAランク冒険者のパーティすら撃破したんだ。
――ああ。だけど、こっちには人外の領域、Sランク冒険者が付いている。
――油断は禁物。
――それは分かっている。
出来るだけ準備してから行こう。
◇
「これで、バベルさん達の得体の知れない力が分かるっすかね」
店を出た鈴玉は呟く。
「あの良く分からない気配。全員……いや、桜さんだけはとくに何も感じなかったすね」
鈴玉はバベル達と会ったころから、彼らの変な気配を感じ取っていた。バベル、エル、ニャルカ。まるで人じゃないものが居る。もしくは人じゃないか……そんな気配を。
「まあ、桜さんは何も感じなかったけど、才能だけは凄かったっすね。最後は私を越える……」
そういった鈴玉の声は、少しさびしそうだった。
◇
「よーし。集まったっすね」
翌日、準備を整えて、俺達は北門に集合していた。
「準備バッチリだよ」
「いつでも斬れるでござる」
「よし。行くっすよ。サモン『竜王』」
鈴玉さんが召喚したのは、この前と同じ竜。今回は、最初から大きかった。
「じゃあ、乗るっす」
鈴玉さんの言葉で俺達は竜の背に乗る。
「皆乗ったっすね。出発っす」
竜は空へと羽ばたき、北へと飛んだ。
「早いでござる」
「だけど、ぜんぜん風を感じないな」
こんなスピードで飛んでたら、何も捕まる所がない竜の背じゃ吹き飛ばされてしまう。
「ああ。それは、小白の能力っすよ」
「なるほど」
便利だな。爆虫にもそういう能力つかないのか。
――爆虫は乗るようじゃなくて、爆発する為に居るのだろう?
――だなー。
爆虫は爆発する虫だ。乗る為に居る虫ではない。
「このペースなら後数時間で着くっす」
「じゃあ、しりとりでもしようか」
「それがいいでござる」
こうやって、俺達の時間は過ぎていく。
◇
「着いたっすよ」
竜が降り立ったのは、森の一画。開けた場所だ。
「この森?」
「そうっす。近くの村の村人が、ここで変な屋敷を見つけたんすよ」
「なるほど」
化け物屋敷の頭領は、支配系と召喚系の狭間にある様なユニークスキルを使い、屋敷を召喚する。屋敷は外からの攻撃じゃビクともせず、あの戦神しか破壊出来なかったほどの強度を持つという話だ。
「そう、いままでそんな屋敷はなかったから報告が来て、もしかしたら化け物屋敷かもしれないという事で、私が派遣されたっす」
「そうなんですか」
化け物屋敷は、召喚された屋敷の中から出ることはない。じゃあ、安全かといわれれば、そうでもない。やつらは屋敷に閉じこもり、魔物を外に吐き出すのだ。屋敷から吐き出される魔物は、討伐してもきりがない。元を断たなければ、ゴキブリなみの繁殖力で、次から次へとわいてくる。
「じゃあ、行くっすよ。小白『形状変化“竜槍”』」
鈴玉さんがユニークスキルを使うと、竜が変化し、槍へとなる。
「出発っす」
鈴玉さんの後を着いていき、俺達の探索は始まった。
時には魔物に襲われ、時には木の根に引っかかり、時には桜が毒キノコを食べて倒れ、俺達は終に、変な屋敷へと到着した。
「ああ。これは確定っすね。本で見た屋敷の絵とそっくりっす」
目の前に在る屋敷は、普通の洋館だ。しかし、不気味な雰囲気をただよわせ、今にも何かがとび出してきそうだ。
「よーし。突入するっす」
「ひゃっはー。行くでござるよ」
こいつさっき毒キノコ食べて倒れたのに、あっというまに元気になったな。
「準備万端。いつでも良いよ」
「突撃」
洋館の入り口を開け、俺達は探索を始めた。
VS化け物屋敷は長くなる模様。反省しています。




