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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第七章 清牙帝国編
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第百一話 おしえて、エルフィル先生!

「なあ、エル。ちょっと尾行を教えてくれないか?」


 エルとニャルカが居る宿の部屋で、俺はそう言った。


「えーと。なんで尾行を?」


 ベッドに座っていたエルが、驚愕の目をしながら聞いてくる。


「そりゃ。知っといたらいろいろ便利だからな」

「バベル君が尾行を覚えると、碌な事にならなそうなんだけど」

「大丈夫大丈夫」


 俺は常識人だから、変な事には使わない。


 ――なにを言っているんだ。バベル君。お前が尾行なんて覚えたら、人の弱みでも握って強請るのだろう?


 ――勝手に決め付けるな。俺は、自分の正義の為に覚えるんだ。その過程でお金が手に入っても、別にいいじゃないか。


 ――はあ。


 マモンのため息を聞きながら、エルに向き直る。


「はあ。別にいいよ。変な事には使わないでね」

「もちろんだ」


 神に誓おう。神は信じてないけど。


「じゃあ、さっきちょうど出て行った桜ちゃんでもつけようか」

「それがいい」


 桜ってなにをやっているのか知りたいし。でも、仲間をつけるなんて人間的にちょっと駄目な気がする……。まあいいや。


「よし、じゃあさっそく行くぞ」

「うん」


 宿には昼寝をしているニャルカだけを残し、俺達は宿を出た。



 ◇



「居た」


 市場に桜の姿を見つけ、俺達は建物の影に隠れる。


「桜ちゃんの場合は、気配なんか消すと逆にバレちゃうから、普通にしよう」

「分かった」


 普通に普通に。


「人ごみにまぎれてつけるけど、視線は向けちゃ駄目。別の事に視線を向け、視界の隅で捕らえるんだ。これは訓練しだいかな」


 なるほど。地面でも見つめてるか。


 ――地面を見つめながら歩くなんてただの不審者。


 ――そうか。じゃあ、もっと考えよう。


「少し変装もするよ」


 エルが取り出したのは、メガネと帽子。


「これだけでも結構変わるもんだよ」


 エルがメガネと帽子を付けると、活発そうなメガネ美少女が誕生した。


「よし、行こうか」


 準備を整え、桜の後をつける。


 ――あ、肉まんを買っているぞ。


 ――そうだな。20個も……。


 肉まんを大量に買った桜は、食べながら通りを歩く。


 ――むむ。ゲームしてる。


 ――本当だ。あ、負けた。


 尾行を続けていると、桜が賭けリバシーの店で惨敗している場面を見つけた。

 あいつアホだからこういうのは難しいかな。だけど、桜なら勘で勝ったと言っても信じられる。


 ――図書館に入ったぞ。


 ――本当だ。すぐに目を回して出てきたけど。


 頭から煙をふきだしているし、数行読んでギブアップしたのかな?

 桜は勉強も出来るはずなんだけどな。あいつチャクチャクとポンコツ化してないか?


 ――む、飯屋に入るぞ。


 桜は図書館から出て直ぐに、飯屋に入って行った。


「ボク達も行くよ」


 飯屋の名前は……ラーメンや魔豚。すっごく縁があるな。中に入り、桜が座った席の隣に行く。


「ジャンボラーメンを一杯」


 桜の一言に、他の店と同じく他客が驚きの声を上げ、亭主が大きな小悪魔と驚く茶番を終わらせた後、俺達もラーメンを頼む。

 相変わらず美味しい。


 桜がジャンボラーメンを食べ終わるタイミングで俺達も食べ終え、少し時間をずらして店を出る。亭主が涙目だったけど、鬼の目にも涙ということわざを思い出した。


「おや。路地裏に入った」


 桜は店を出ると、路地裏に入る。俺達はその後をつけた。


 ――絡まれていた女性を助けたぞ。


 ――本当だ。


 桜は路地裏に入った後、絡まれていた女性を助けていた。


 ――なんども頭を下げてるな。


 ――ああ。だけど、なんか頬を赤く染めてないか?


 これは百合の到来!?

 ちなみに、俺達に絡んできたチンピラは倒して身包みはいどいた。


 ――む。ここは孤児院か?


 ――本当だ。


 桜が次にやってきたのは、小さな木造建築の建物。そこには子供が一杯居るので、孤児院だと分かる。桜が孤児院に顔を見せると、子供が群がる。あっというまに子供の山が出来た。


「……桜ちゃんこんな事をやっていたんだ」

「そうだな。桜らしい」


 桜はポンコツでも、優しかった。


「桜ちゃんの良いところを見つけた事だし、あれはボク達がやろう」

「あれ?」

「うん。桜ちゃんが気づいているか分からないけど、孤児院を取り囲む様に10人ほどの人がいる。さっきちょっと確認したけど、武器を持っていたし、この孤児院を襲うつもりじゃないかな?」

「な!?」


 こんな貧乏そうな孤児院を襲うなんて、なんて無駄な事を。桜なら集団でも問題なく対応出来そうだけど、あの子供山を崩したくない。


「俺に任せろ」

「うん。任せた」

「『爆虫の図鑑』『爆破調整』『サイレント』サモン『爆虫(集中型)』×10」


 召喚したのは10匹の爆虫。それをエルが言った場所に送る。


「もういいかな? 爆発しろ」


 この声は爆虫に届かない。が、命令は届く。音はなかったけど、爆発したのは分かった。


「これで大丈夫だと思う」

「じゃ、このままにして帰ろうか」

「そうだな」



 ◇



 路地裏を出て、エルと分かれる。エルはあいつらを衛兵さんに引き渡すといって衛兵さんを呼びに行った。やるまえだから証拠はないと思うけど、エルならなんとかするだろう。


 ――そういえば、尾行を覚えてなにをするつもりだったんだ?


 ――別に、覚えておくと便利だと思っただけだ。弱みを握ってゆすろうなどとはこれっぽっちも思っていない。


 ――はあ。そうか。


 マモンはため息を隠そうともしなくなった。


 ――これからどうする?


 ――しばらく町でも歩くか。


 俺は観光がてら、町にくりだす事にした。




 ――夕方。


 広場のベンチで座っていると、となりにだれかが座ってくる。


「バベル殿!」


 隣に座ってきたのは桜だ。


「どうしたんだ?」

「お礼を言いに」

「お礼?」

「はい。あいつらを退治してくれたのは、バベル殿でござろう?」


 なんだ。バレてたのか。桜なら気づくとは思ってたけど、


「そうだけど。別に礼を言われるほどでもないだろう」

「いや、子供達を怖がらせる事がなくてよかったでござるよ」

「そうか」

「はい。ありがとうございました」


 桜はそう言って、笑いかけてきた。

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