↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/70

ストームドラゴン4

 「はぁはぁはぁ・・・・・」


 俺は地面を力強く蹴りながら、ほとんど全力で森の中を疾走していた。この森の木々は広葉樹が多いので、落ち葉で滑らない様に気をつけながら走る。他にも通行の妨げになるほどの大きな木の根や、背の高い草等が行く手の邪魔をしたりするが、それでも可能な限り急いで走った。

 だが、地上を走る人間よりも、空を飛ぶドラゴンの方が圧倒的に早いのは仕方のない事である。

 追いつかれてその巨体を活かした高速タックルやウイングアタックを仕掛けてきたり、風のブレスが飛んできたりする事が何度もあった。

 その度に全力で横っ飛びして回避したり、アイギスで防御したりつつ、反撃と牽制の意味を込めてグレネードリボルバーが火を吹いた。

 もうね、一撃もらっただけでアウトな感じの攻撃ばかりなんだよ。

 例えるならば、ダンプカーに執拗に追い回される原動機付き自転車みたいな感じ?

 もう馬力や重さ、スケールなんかがそもそも違うって。

 この段階になるとシルバーナイト装備の優秀な防御力でも、防御や回避に失敗すれば連続攻撃をくらってしまい、致命傷になりかねない。ボウガンの弾が勿体無いとか言ってる場合じゃあない。

 ほんと致命傷をもらわない様にするだけで、精一杯である。


 そもそも筋力や素早さ等のステータスだけで言えば、ドラゴンは人間を圧倒しているのだから、比べる事すらアホらしいくらいである。

 それでも人間がドラゴンに勝てる部分があると言うならば、それは知恵と工夫しかないだろう。

 馬鹿正直に作戦も無く、真正面から剣を振りかざしてドラゴンと戦うのは蛮勇でしかないという事を、ディナントの町の冒険者達が証明している。

 だから、卑怯と言われ様が何だろうが、俺達が生き残っていればいいのである。

 武器を使い、戦術を練り、効率良く戦う。

 それは文明を持った人間にしか出来ない事である。


 なので俺は文明の利器を大いに活用している。

 無計画にひたすら全力で走るのでは、何時かはスタミナ切れで倒れてしまい、致命傷をもらいかねない。

 だから、直前に強壮薬Sを飲んでから、この追いかけっこを始めた。

 これで当分の間はいくら走っても息切れや疲労に悩まされなくて済む。

 その代わり、効果が切れたらヤバイがな。


 途中で俺はPDSから打ち上げタル爆弾を幾つも取り出して、ジグザクにダッシュしながら大量に設置、そしてドンドン自動で起動させる。


 シューーーーーー、ドドーーーン!!


 打ち上げられたタル爆弾が上空で幾つも炸裂し、上空に爆弾の花火を咲かせる。

 大タル爆弾とかと比べたら小さい火力であるし、設置した数の半分もストームドラゴンに命中しなかった。だが、牽制としては非常に役立った。

 打ち上げタル爆弾は上空に真っ直ぐにしか飛んでいかないが、向こうは俺をガムシャラに追いかけて来るので、正に地雷原に突っ込んでくる状態である。

 そうやって地味にダメージを蓄積させていった。


 にしても、カウンターでストームドラゴンに何度もダメージを与えたりしているのに、飛行しているのを打ち落とす事が出来ないわ。

 ゲーム内じゃあ大型モンスターが空を飛んでいても、閃光玉でピヨるとか一定ダメージで撃墜出来たのだが、現実ではいくらやっても落ちる気配すら見えない。

 なんだよ、何度も徹甲榴弾を頭部や翼に命中させているのに、平気なんかい?

 予想以上の防御力と面倒な飛行能力に悪態をつきたくなる。

 まあ、やはりトラップで打ち落とすのが一番確実というか、現実的なんかな。

 

 しかし、何度も追いつかれたりして進路変更を幾度も繰り返していると、段々自分の現在地や方角がどのあたりなのか分からなくなるな。

 方位磁石があっても、いちいち確認する暇なんて無いからだ。

 それに地形は戦闘の余波でだいぶ様変わりしているのであまり当てにならない。

 だが、山岳地帯なので平坦地では無いから、感覚的に地面がどの角度に傾いているのかは判断出来る。そうすると、なんとなくトラップがあるエリアの方角は分かるので、その方角を信じて進んだ。



 「見えた!」


 ようやく、ウサ正宗が待つトラップエリア周辺に入った。

 まだ目的地まで距離があるが、壊されたトラップの残骸が遠くに見える。


 もう少し走れば追いかけっこも終了だ。

 そう思うと気合が入った。


 バシュバシュッ


 そこで予想外の位置からデカイ矢が飛んで来て、ストームドラゴンの翼に命中した。

 かなり遠くからの攻撃だが、突き刺さった矢は城塞設置型バリスタの矢の様だ。

 その矢は見事に翼の皮膜を突き破り、俺に迫っていたストームドラゴンはそのダメージに堪らず地面に激突していった。


 「GYUOOOOOOO!!」


 まだ、ウサ正宗が居る場所からは遠いハズ。誰の攻撃だ?

 だが、墜落したのでここで攻撃を仕掛けない訳にはいかない。

 ストームドラゴンは飛行していた勢いもあって、地面に盛大に勢い良く頭から突っ込んでしまい、もがき苦しんでいる。

 攻撃のチャンスだ。


 装備を瞬時装着でグレネードリボルバーからアイスコフィンに切り替える。

 俺は墜落したストームドラゴンに突貫していった。


 四肢に力を込めて、全力でアイスコフィンを上段から振り下ろす。

 氷の刃がきらめき、鋭利な断面を見せる。

 一撃で左の片翼が半分に切断した。

 これで飛行がし辛くなったハズだ。

 

 そして更に攻撃を仕掛ける。

 胴体に横に切り払い、下から切り上げ、そして振り下ろし。

 怒涛の三連撃を決める。


 だが、向こうも黙って攻撃を受けてくれない。

 尻尾を無闇やたらと振り回して俺を弾き飛ばしたのだ。

 その攻撃の衝撃で俺が手に持っていたアイスコフィンが、クルクルと回転しながら遠くに飛んでいってしまった。


 「マジかよ。」


 吹き飛ばされたが直ぐに受身を取って体勢を整え、立ち上がる。

 ストームドラゴンに背を向けてアイスコフィンを回収できる程の余裕は無い。

 既に地面から抜け出して、ストームドラゴン二号は怒りに染まった血走った目を俺に向けているからだ。

 頭には地面に突っ込んだ時に付いた土が付着していたり、胴体は無数の爆弾の黒い跡や刃物の切り傷がある。翼は片方にはデカイ矢が刺さったままで、もう片方は半分に切り裂かれている。

 そんな状態でも、まだまだ元気がありそうだ。


 ストームドラゴン二号は四つん這いで凄い勢いで俺に突進してきた。


 それを俺は無様に全力で横方向に飛んで回避しようとする。

 だが、相手の方が俺の動きを一歩学習したのか、俺の避ける方向に軌道修正してきたのだ。

 

 「ぐはっ!!」


 まるでサッカーのボールを蹴るかの様に軽く吹き飛ばされる。

 空中で放物線を描くように10メートル以上は飛んでいった。

 着地の瞬間、背中を丸めてゴロゴロ転がる様にして、衝撃をなるべく逃がす様にする。

 最後は勢いを殺し切れずに木に激突してしまったので、息が詰まった。


 ストームドラゴンは直ぐに追撃をして来るだろう。

 だから、ふらつく頭を抑え込んで、なんとか起き上がる。

 当たる瞬間に後ろの方向にあらかじめ飛んでいたから、これでもダメージは少ない方だ。

 もろに喰らったら、シルバーナイト装備が威力を軽減してくれても、中身の俺には甚大なダメージであったであろう。

 金属鎧の特徴として、衝撃は完全に防げないんだ。

 利点は爪や牙等の斬撃は確実に防げるし、尻尾アタックでもダメージが少ない。

 だが、質量を活かしたタックル等の打撃とかは危険なのだ。

 鎧が無傷でも中身が持たないと言う訳だ。


 予想通り俺を吹き飛ばしたら直ぐに方向転換したのであろう。眼前にストームドラゴンが土煙を上げながら迫ってくる。


 「アイギス!!」


 アイギスを展開してその突進をガードする。

 無色透明な防壁に気づかず、そのまま俺に迫る。


 ガンッッッ!!!


 ストームドラゴン二号の大質量を受け止めたアイギスが大きな音を立てる。アイギスはその攻撃を受け止めてもビクともしなかった。

 頭からぶつかって来たので、相当な衝撃が相手にもいったのだろう、ストームドラゴン二号も頭を振っている。


 直ぐにアイギスを解除して反撃でストームドラゴン二号に襲い掛かる。

 その両手には瞬時装着で新たな装備を握り締めている。


 レッドバジリスクの鉄扇:ランク6:品質S

 レッドバジリスクの素材とミスリルから作られた二対一組の金属製の扇。傷付けられた相手は毒と麻痺の状態異常を引き起こす。


 鉄扇といいながら、素材はミスリルとモンスター素材のハイブリット品という代物。ちなみに双剣というカテゴリーに分類される武器なので、非常に軽くて取り回しが楽。その代わり刀身が普通の剣や刀よりも短めで、手数で勝負の武器だ。

 ウサ正宗の良く使っている大型ナイフも双剣のカテゴリーである。


 このレッドバジリスクの鉄扇で、俺はストームドラゴンに斬りかかった。 


 「おらぁ、回転斬り!!」


 レッドバジリスクの鉄扇を両手に構え、全力のダッシュで近づいて行く。

 攻撃が当たる瞬間に体全体を回転しながら武器を振り回し、ストームドラゴンの横をすり抜ける様にして鉄扇を当てていく。

 ガリガリ鱗を削り取る様な攻撃である。


 ストームドラゴンの後ろを取ると、そのまま後ろ足に張り付き、鉄扇で何度も攻撃していく。

 その巨体故に小回りが利かないので、後ろに瞬時に回りこまれると、とっさには反応出来ない様だ。

 尻尾をブンブン左右に振り回しての攻撃や、回転ウイングアタックなので俺を振り切ろうとするが、攻撃はほとんどアイギスで防ぎ、もしくは回避したのでそのまま密着状態を保つ。


 俺は後ろ脚や胴体にドンドン攻撃を加えていった。

 そうすると徐々にストームドラゴン二号の動きが鈍くなってきたのが分かる。

 麻痺が効いてきたのだ。

 それにダメージを与える毒の効果も追加されている武器なので、時間が経てば経つほど有利になってくるのだ。


 散々ダメージを与えてきたので、出血もかなりあるはずだ。

 このまま押し切る!!


 「双剣乱舞!!」


 縦横無尽にレッドバジリスクの鉄扇を振り回す、高速の連続攻撃を決める。

 ストームドラゴンはかなり酔っ払いの様なグロッキー状態である。

 好きな様に攻撃出来た。


 そしてジャンプしてストームドラゴンの背中に乗って、フィニッシュとばかりに更にレッドバジリスクの鉄扇を根元まで背中に突き刺す。


 「GOOOOOOGYAAAAA!」


 これで背中のレッドバジリスクの鉄扇を抜かない限り、麻痺と毒に侵されっぱなしである。

 瞬時装着で更に装備を交換する。


 グラビトンハンマー:ランク6:品質S

 魔力により重さを変えられる特大のハンマー。


 再びグラビトンハンマーで剣を胴体に貫通させて、致命的ダメージを与えようとした瞬間に、俺はストームドラゴンの背中から振り落とされてしまった。

 

 クソ、まだそんな暴れられる体力が残っているのか。

 だが、俺もそろそろ限界が近い。

 先ほど強壮薬Sの効果も切れてしまい、通常モードになってしまった。


 起き上がりながら、横に回転して追撃をかわす。

 まだ俺を攻撃出来る余裕があったとは。


 だが、その動きはかなり緩慢になっていた。

 だから避けられた。


 ドスドスッ


 そこに遠くからデカイ矢が飛んできて、ストームドラゴンの腹部に二本の矢が見事に命中した。

 俺はその矢目掛けてグラビトンハンマーを横方向に振り抜いた。

 腹部の矢がめり込み、グシャッという音を立てて背中まで貫通した。


 ドシーーーーーン


 その攻撃を受けて、横に倒れるストームドラゴン二号。

 どうやら今の攻撃が致命傷であった様だ。

 油断無くストームドラゴンを見据えたまま、少し待った。

 それからPDSを取り出して、二号の亡骸を収納する。


 あっという間にその巨体は俺の眼前から消え去り、その場には戦いの後のみが残った。


 「ふぅーー、なんとかなったーー。」


 一応辺りを警戒してからヘルメットを外して、PDSから水を取り出して浴びる様に飲む。

 まだ日は高い位置にあるが、かなりの長時間戦っていたのだ。

 のどが渇いて仕方なかった。


 そしてその場に座り込んで、ぐったりモードになった。



お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。