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ストームドラゴン3

 その咆哮はそれなりに遠くからであった。

 だが、ようやく念願のストームドラゴンが退治出来たと思って油断していた俺達は、この近辺に敵が居なくなったと思い、気を抜いてしまっていたのだ。

 そんな時に、俺達に向かって一直線に風のブレスが飛んで来た。


 ズガガガガガーーーー


 渦を巻き、木々をなぎ倒しながら、俺達に迫る風のブレス。

 正気に戻った俺は、ウサ正宗を庇いながらアイギスを展開した。

 辺りに吹き荒れる風が、危機感を大いに煽る。

 もう少し遅かったら、暴風の餌食になっていた所だ。

 やべー、やべー。


 上空からの遠距離攻撃がストームドラゴンの得意とする戦術なのに、すっかり油断していたわ。

 真上からブレスを放たれていたら、または咆哮が無ければモロに喰らっていたかもな。

 遠距離からの風のブレスは、俺からすれば比較的防ぎやすい。

 無色透明のブレスという非常に面倒な特性があるが、周囲に甚大な被害を与えながら高速で迫ってくる場合は、防御する方向さえ間違わなければアイギスで確実に防げるからだ。


 だが、今回の事態は想定外であった。

 遠くの空を飛んでいるストームドラゴンを目視で確認して、思わずため息が出そうだ。

 まさか二頭同時に出現するなんて。

 つがいなのか?

 なんにしろ、こいつも討伐しておかないと、話しにならん。


 どうやら、二頭目のこいつは洞窟の奥から先ほどやって来たらしい。

 ブレスが飛んで来た角度からいって、間違い無さそうだ。


 「ウサ正宗、取り合えずこの場所を移動しよう。

 上空に居られたんじゃあ、有効な攻撃が当たらん。」

 「分かりました。

 まずは合流ポイントから離れる方向に向かいましょう。」


 確かにストームドラゴンを引き連れて行く訳には行かないよな。

 それから俺達は森の中に逃げこんだ。

 全力疾走してとにかく距離を取っていく。

 あの場に留まっていたら、ひたすら狙い撃ちにされてジリ貧だったからな。

 転倒しない様に気をつけながら、木々の間を高速で駆け抜ける。


 上空の制空権を取られているが、森の木々はそれなりに視界を遮ってくれる。

 ストームドラゴンは風のブレスを乱発して無軌道に放ってくるが、俺達の方には全然当たらない。

 その結果、盛大に木々が吹き飛ばされ、なぎ倒されていく。地面もごっそり抉られたりして酷い有様である。

 うーーん、激しい自然破壊活動だな。


 

 にしてもどうするか。

 今現在、ストームドラゴンから、かなり離れた場所に俺達は居た。

 わき目も振らずに逃走して甲斐があって、距離を稼げたのだ。

 木々に体を隠しながら、ストームドラゴン二号 (勝手に命名)の現在位置を確認する。

 やっこさんは激オコ状態で森の上空に居た。相変わらず辺りにブレスを所構わずジャンジャン放っていた。

 

 ありゃあ多分、俺らがストームドラゴン一号 (同じく勝手に命名)を殺したのを確信しているな。

 俺らをどうにか炙り出そうとしているのだろうが、そんな適当な攻撃では当たらんよ。


 遠目からストームドラゴン二号をよーく観察してみる。すると、ストームドラゴン一号とは明らかに違う点があった。

 そうか、夜間に渓谷で奇襲して攻めてきたのはこいつの方っぽいな。

 腹に大きな傷跡が残っているよ。

 多分インビジブルブレードの傷跡だろうな。

 って事は、討伐したストームドラゴン一号がディナントの町を襲った個体か?後で確認するかな。


 「どうするよ、ウサ正宗。

 俺の手持ちの手札では、遠距離から遣り合うのは得策じゃあないんだが。

 一番無難なのは仕切り直しかな。

 一度大きく撤退してからまた後日、洞窟の前に陣取り、罠に仕掛ける。

 同じ手は喰らわない可能性もあるが、有効な手段だ。」

 「その場合は逃げ切れる事が前提でしょうね。

 ご主人様と私だけであればそれも不可能では無いでしょうが、隠れ里の六人も含めると、奇襲を喰らう可能性の方が高そうですね。」

 「ああ、確かにそうだな。

 この事態は想定してなかったが、取り合えずヤツラは合流ポイントで大人しくしているだろう。

 最悪俺らが来なければ、自力で下山する事になっているし。

 ・・・・・・・そーだな。それなら残っているトラップを活用していくのが一番戦い易いかな。」


 前回使っていない未使用のトラップは、未だに洞窟周辺にそれなりに残っているハズ。

 風のブレスで幾つかは駄目になっているだろうが、それでも用心を重ねていたので、離れた場所にも幾つかあるのだ。

 特にコストがかかっている城塞設置型バリスタは回収したいし、無事ならば活用したい。

 あれが残っていれば拘束弾で上空にいるストームドラゴンを打ち落とす事すら可能だからだ。

 接近してブレスを放ってこようとしたら、再びのアイギス自爆コンボで攻めたいんが、タイミング良くいかないとなー。アイギス自体そもそも防御の為のもんだからさ、遠距離に展開出来ない仕様だから難しいんだわ。


 「不測の事態に備えておいて助かりましたね。

 やはり備えあれば憂い無しといいますね。」

 「本当にその通りだよ。

 んじゃ頑張ってストームドラゴン二号の目を掻い潜って、洞窟周辺のトラップまで行きますか。」


 そして、上空に居るストームドラゴン二号に見付からない様にして移動していく。

 俺もスニークミッションはそれなりにしていたから、隠密行動はそれなりに得意である。

 まあ、ウサ正宗には遠く及ばないが。


 ガチャガチャ音を立てない様に気をつけながら走っていく。

 こういう時は、シルバーナイト装備はよろしくない。

 金属鎧は防御力では優れているが、余計な音がするんだよ。

 その点、革の鎧は軽いし音がしない点で優秀である。

 デメリットは傷がついたら普通は修復不可能とか、防御力自体が金属鎧に劣る等があるけどな。

 そこは使い分けでいいと思う。PDSがある俺なら複数所持するのも苦労しないし、装備の着脱も簡単に済むからだ。


 そんな事を考えながら移動していった。

 そして、目的のトラップを設置してある場所まで、なんとか無事に見付からないで戻ってきた。

 ストームドラゴン一号を討伐した地点からそう離れていない。

 まあ、洞窟を出て来た瞬間にストームドラゴン一号はトラップで打ち落とされたからな。

 そんなに洞窟から離れる訳が無い。


 ストームドラゴン二号は、今は風のブレスを吐くのを止めている。

 やはりブレスの使用は魔力や体力なんかを大きく消費するんじゃないだろうか。

 しかもずっと森の上を飛行しっぱなしだし。

 まあ彼らの生態がどうなっているのか知らないが、取り合えず洞窟から離れてくれたからよかったわ。


 「あった!

 まだ無事に残っているトラップがあったぞ。

 ここの城塞設置型バリスタも無事だ!」

 「こちらも投網投射トラップも二機は無事です。

 他はブレスの影響で全滅ですね。」


 俺とウサ正宗は今、洞窟から離れたポイントに設置してあるトラップを確認していた。所謂、想定外の事態に対する備えで設置していた物である。


 「それは仕方ない、ってあそこにいるは・・・・・

 コゲトラとテムジンじゃないか?」


 ここから距離はあるが、洞窟付近の城塞設置型バリスタに取り付こうとしているラビッター族二名が居るのが遠めにも分かった。

 合流ポイントで待機している様に厳命して置いたのに、戻ってきやがったのか。


 「そうですか。

 説教は後回しにしましょう。

 ストームドラゴンが彼らに気づく前に、行動しなくてはなりませんね。」


 こちらの城塞設置型バリスタは、大型だから目立つが、森の上空に居るモンスターを攻撃する事を想定していたから、発見し辛い場所に設置してある。

 だが、洞窟周辺にある城塞設置型バリスタは、洞窟から出て来たストームドラゴンを撃墜する為に設置しているのだ。角度的に森の上空から見ると丸見えになる場所も存在するので、今は非常にデンジャーな状況である。

 なのに、あの二名はその危険性に気づいていない様だ。

 

 「仕方ない。

 マジで見捨てる訳にもいかんし、ウサ正宗はヤツラにここから離れる様に言ってくれ。

 今回は俺が囮になろう。

 俺が当て易い位置に誘導してくるから、ウサ正宗はトラップを使って、ストームドラゴンをなんとか撃墜してくれ。」

 「ご主人様、囮の役目は私が・・・・」

 「いや、ヤツの注意を引くには火力が必要だろ。

 俺のボウガンの方が攻撃力は圧倒的に高いからな。

 撃墜に成功した後の事は、各自の判断で動こう。

 駄目なら俺がそのまま注意を引き付けたまま、戦線を離れていくから、一応の合流場所だけ決めておく。」


 そして、失敗した時は山の麓の渓谷で合流する事を決めて、俺はストームドラゴンに攻撃を仕掛けることを決める。

 コゲトラとテムジンは相変わらず城塞設置型バリスタで構えて待っているが、そこが安全地帯でもなんでも無い事に気づいていないのが笑える。いや、分かっていてやっているのかもな。

 俺達の手助けになればと思って行動しているのかも知れないが、足手まといになっているのに気づいてないのがなー。


 気を取り直して、俺は新たな装備をPDSから取り出す。

 弾の生産が面倒なのと、補給の当てが無かったから、今まで使う気が無かった武器である。


 グレネードリボルバー:ランク7:品質A+

 徹甲榴弾を連射する為の特殊機構を備えたボウガン。


 川で魚釣りをした時に釣った魚で、食べられないと思われる爆弾系の魚が多数釣れた。

 あれを暇な待ち時間の時に思い出して、特殊アイテム作成オートモードで全て弾に変換しておいたのだ。

 大量に作成出来たから、取り合えずこの戦闘くらいは持ちそうである。


 グレネードリボルバーを手に持って木々の間を静かに移動する。

 こいつの射程は決して長くないので、ある程度近づかなくてはいけないのだ。

 俺達を血眼の目になって探しているストームドラゴン二号に接近していく。


 ヤツが通った後は、荒れ放題になっていた。

 見事な八つ当たりというかなんというか、恐竜が怒りに任せて暴れまわっている感じだな。

 

 グレネードリボルバーの射程圏内に入ったら、ストームドラゴン二号の動きが止まるのを、木の陰で息を潜めてジッと待つ。

 森に降りて捜索するつもりは無いようで、ずっと飛行しているストームドラゴン二号。

 キョロキョロと頭を動かしている。その動きが止まった瞬間、俺は引き金を引いた。


 バババッ


 重い炸裂音を発しながら首に一発、頭に二発命中する。

 撃った時の反動がデカイが、なんとか抑えた。

 そして、着弾から1秒後に徹甲榴弾が炸裂した。


 ボボボンッ


 徹甲榴弾の内部に仕込まれた火薬が炸裂し、ボクサーがパンチを顔面に食らった時の様に、頭が左右にダイナミックに弾かれる様に動く。

 とんでもない衝撃を頭に喰らい、再び激オコ状態になるストームドラゴン。


 「やっべ、流石に気づくか。」


 俺が隠れている木に向かって、風のブレスを放ってきた。


 ズガガガガガーーー


 ダッシュで風のブレスの射線上から逃げつつ、お返しの徹甲榴弾をお見舞いする。

 

 バババッ


 今度は走りながらだったので、狙いが甘くて一発は胴体に命中し、二発外した。

 外すと弾がもったいねーが仕方ない。


 ここからは一直線にトラップエリアに誘導する訳にも行かない。ブレス攻撃に巻き込む訳にはいかんしな。

 それに逃げていないあいつ等の事もあるからな。

 それから俺はストームドラゴンが執拗に追いかけられた。ひたすらブレス攻撃を回避したり、アイギスで防御しながら、ウサ正宗が待つトラップエリアに向けて走り続けた。

 

 

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