ストームドラゴン2
遅くなっしまったので、早めの投稿です
交代で仮眠を取りながら、じっと洞窟の出入り口を観察して待つ。
山頂に近い為か、夜中の冷え込みはきつかった。
だが、火を焚いてしまう訳にもいかず、毛布を被りながらひたすらストームドラゴンが出てくるのを待っていた。
以前に夜間の襲撃を受けているので、ストームドラゴンは決して昼間だけ活動をする生き物では無い事が分かっている。
だから、夜中も見張る事になったが、結局出てこなかった。
朝日が昇る頃に、取り合えず朝食を簡単に済ませてしまう。
皆緊張で眠りは浅いだろうが、仕方ない。
猛獣の傍で寝ている様なモノだ。
まあ、猛獣といってもライオンやトラでは、ストームドラゴンの持つ凶悪さや強さに敵わないだろうが。生き物としての格が圧倒的に違いすぎる。
「それにしても出て来ないな。
俺達が観察を初めてからもう半日は経つが、まるで出て来る気配が無い。」
「そうですね。
出入り口となる場所はこの洞窟だけでは無く、他の場所からも出入り出来るのかも知れません。」
「その可能性はあるんだよな。
まあだから、洞窟からだけじゃなく、上空から見えない場所に待機しているし、カモフラージュとして見えにくい様に葉っぱ等で偽装しているんだが。
最悪なのは俺達が逆に先制攻撃を受ける事だからな。」
「そうなるとこの戦いは長期戦になるかも知れませんね。
私とご主人様は問題無いでしょうが、里の六人は少し疲弊してきていますね。」
隠れ里の連中は、二人一組になってそれぞれの持ち場で待機している。
本当は個別にバラバラになっていた方が、より大きい範囲をカバー出来るのだが、洞窟の入り口で罠に嵌める事を前提にしたら、あまり広範囲をカバーしても意味が無い。
だから、二人一組で交代で休みながらにしたのだ。
そのままジリジリと時間が過ぎていった。
微妙に緊張したまま、何時の間にか昼頃になっていた。
「一度、昼食にしよう。
休憩をしないと長期戦は厳しいだろう。」
そういってPDSから昼食のサンドイッチを取り出そうとして瞬間。
「ご主人様!
ストームドラゴンが出てきます!」
小声でウサ正宗が注意を呼びかける。
小石を他の連中に投げつけて、洞窟を指して応戦の構えを取らせる。
気だるい雰囲気は消え去り、皆慌てて洞窟を見て、戦う準備をした。
バッサバッサバッサ
その蒼い巨大な体は昼間に見るととても鮮やかである。
翼を羽ばたく力強い音を周囲に響かせながら、洞窟からストームドラゴンが顔を出した。
そして、ストームドラゴンの体が胴体まで洞窟から出た瞬間にトラップを発動させた。
バシュバシュ
投網の様な物が洞窟の入り口の上空を覆い、逃げる暇も無くその網に捕らわれるストームドラゴン。
「GUGYAAAAAAAAAA!?」
突然の奇襲にまんまと引っかかり、網が翼に絡まってしまい、雄たけびを上げながら墜落していくストームドラゴン。
そうはいってもストームドラゴンの飛んでいた高度は高くは無かった。だが、その巨体故の重さがあった為、洞窟の前の木々に突っ込んでいった。バキバキ周囲の木々をなぎ倒しながら墜落していった。
当然墜落している最中にも追撃を加えている。
城塞設置型ボウガンを任されていたミコとコゲトラの二人が放った巨大な矢が、見事にストームドラゴンの翼に突き刺さり、貫通していた。流石にこの矢は当たればダメージになる様だ。
俺もボウガンを胴体に命中させたが、角度が悪かったせいか竜の鱗に弾かれてしまったが。
「GAAAAAAAAAAAAA!!」
翼の皮膜が大きく破れ、ダメージに暴れるストームドラゴン。
辺りの木々が暴れる度に倒れていくが、拘束は簡単には解けない。
その凶暴な咆哮で辺りから一斉に鳥が羽ばたいていった。グレートアウル等の飛行型のモンスターも恐れをなして逃げていく程である。
だが、ここからは俺とウサ正宗の攻撃のターンである。
「いくぞ、ウサ正宗!!」
「はい、ご主人様。」
隠れていた場所から飛び出して、アイスコフィンを構えて墜落したストームドラゴンに駆け出しいった。
ウサ正宗も愛用の大型ナイフを構えて速攻で駆け抜けていく。
ストームドラゴンは未だ墜落の衝撃と、投網の絡まりから抜け出せていない。
今が攻撃の最大のチャンスであった。
走って近づいて行くと、まだこちらの接近にストームドラゴンは気づいていない様だ。尻尾の向きが俺達に向いているので、背中を俺達に向けている状態なのだ。
墜落してうつ伏せの状態になり、投網にもがき苦しむストームドラゴンに斬りかかって行く。
俺は特に翼を重点的に攻めていった。
翼の付け根を果敢に狙い、片方の翼を切り落としておきたいのだ。
再び空を自由に飛ばれてしまうと非常に厄介だからである。
一気に近づき、大胆にストームドラゴンの体を足場にして翼を目指す。
当然、行きがけの駄賃に、胴体にアイスコフィンを突き刺して、斬り付けながらである。
そして翼に攻撃が出来る所で大きくジャンプして、全力でアイスコフィンを振り下ろす。
「でりゃーーー!!」
渾身の一撃は、右の翼の根元から半分以上を切り裂く事に成功した。
良く動かす部位だからだろうか、派手に出血していた。
俺が翼を狙っている最中にウサ正宗は頭部、特に目を中心に攻撃していた。
風のブレスの攻撃を恐れないその戦闘姿勢には頭が下がる。
暴れているので頭部への攻撃は至難の業である。だが、ウサ正宗は平然とこなして見せた。
俺の攻撃とタイミングを合わせる事で、ストームドラゴンに大きな隙が出来たのだ。
「GUGYAAAUSUU!?」
目を大型ナイフで貫かれて、翼を大きく引き裂かれた痛みと怒りに震えるストームドラゴン。
俺はジャンプ斬りから着地して、駆け出そうとして瞬間に吹き飛ばされた。
尻尾を使った攻撃を喰らったのだ。
「げはっ。」
安定のシルバーナイト装備一式を身に着けていたが、打撃による衝撃までは完全に中和してくれないのだ。
まあ、ウルフ系の装備ならばミンチになっても可笑しくない威力の攻撃であろうが。
「大丈夫だ、攻撃を続けろ!」
ウサ正宗にそう呼びかけつつ起き上がる。
かなりのダメージだが、まだまだ動ける。
というよりも止まっているのが最悪だろう。
ほら、ストームドラゴンが追撃をする為に、風のブレスの溜めをしている。
「アイギス!!」
不可視の防壁を前面に展開してブレスに備える。
次の瞬間、ストームドラゴンが俺に向かって風のブレスを口から吐き出して、そしてアイギスとぶつかって炸裂した。
ズガガガガガーーーーーー
アイギスの効果圏内から外れた周囲は、凶悪な威力の暴風圏にさらされた。
辺り一面は抉れてしまい、木々は更になぎ倒されていった。
俺はなんとかそのブレスをやり過ごしていたが、相変わらずとんでもない威力である。
やはり隠れ里の六人に、トラップを発動させたら逃げておくよう言っておいたのは正解だったな。
この近辺で待機していたら、風のブレスの余波で、巻き添えになる可能性もあった。
今やストームドラゴンの周辺は、戦闘前とは見る影も無く、荒れ果てていた。
回復薬を取り出して飲む。
尻尾攻撃の痛みがそれだけでかなり取れた。
「よし、いけるぞ。」
俺が風のブレスを防いでいる間もウサ正宗は果敢に攻撃していた様だ。
翼の片方がほとんど取れかかっているが分かる。
傷口から見ると、俺が斬り付けた傷口を大型ナイフで更に広げたのであろう。
ウサ正宗は冷静にストームドラゴンの爪の攻撃や尻尾攻撃を避けながら、カウンターで大型ナイフを当てていた。
流石にこの頃になると投網の拘束から抜け出していた。
風のブレスが完全に投網を吹き飛ばしていた。
俺を狙っていたのもあるが、同時に投網の拘束を破る意味があった様だ。
金属製の強靭な投網であったが、風のブレスには敵わないわな。
だが、既にストームドラゴンはかなりのダメージを負っていた。
初めの翼に対するボウガンの攻撃に始まった猛攻。
そして胴体や頭部の攻撃などかなり加えている。
何時もならば、逃げ出していても可笑しくないダメージ量だが、翼のダメージが大きすぎて羽ばたくことすらしない。
今度こそ仕留めて見せる!!
俺もウサ正宗の攻撃に合わせて、攻撃していった。
常に相手の攻撃を誘い、隙が出来たら攻撃するという安全な攻撃をしていたのだ。
そうはいっても、相手はドラゴンである。
一度のミスで致命傷になる攻撃の相手に対して、ノーダメージでいられるのはなかなかハードである。
俺は避け切れないと判断したらアイギスを展開すれば問題無いが、ウサ正宗はそんな事は出来ないから回避するしかない。
そんな綱渡りの攻防を繰り返していった。
だんだん出血の所為か、ストームドラゴンの動きが鈍くなってきた様に感じる。
「ウサ正宗!!
これで決める!!」
「はい、ご主人様。」
そして向こうもこのままではジリ貧だと思っていたのであろう。
動きを止めてブレスの溜めに入った。
俺は構わずダッシュでストームドラゴンに接近して行った。
俺の直ぐ後ろにはウサ正宗が着いて来ている。
そしてストームドラゴンのブレスの溜めが、何時もよりも早く終わった。
ブレスを吐き出そうと口を開いたその瞬間に俺は叫んだ。
「アイギス!!」
相当ストームドラゴンに接近していたので、俺との距離は後10メートルも無い位置である。
そこから、アイギスをストームドラゴンの口の手前に展開した。
スガガガガーー
ゴボゴボっと、口から大量の血を吐き出してゆっくりと倒れていくストームドラゴン。
普段よりも溜めが短いので威力も小さいのであろう。
だが、口の前で展開されたアイギスに阻まれて、風のブレスはほとんど口内で炸裂してしまった。
凶悪な威力を持っているそのブレスを吐き出せなかった為に、風のブレスは逆流してしまったのだろう。
その結果、口から内部をズタズタに破壊されてしまった。
倒れていくストームドラゴンに油断無く近づいていって、アイスコフィンで首を一刀両断する。
抵抗なくスパッと切断する事が出来た。
死んだのを確認してからPDSにストームドラゴンの亡骸を収納する。
「ウサ正宗、お疲れ様。」
「ようやく討伐出来ましたね、ご主人様。」
二人で健闘を称えあいながら、拳を合わせた。
「これで一応目的は達成と言ったところかな。
随分時間が掛かってしまったから、ディナントの町の連中はもう俺らが死んだと思っているかもな。」
「そうかもしれませんね。
後で討伐成功の報告だけでもしておきましょう。」
「だな。
んじゃあ取り合えず、あいつ等六人と合流するか。」
そして集合ポイントに向かって歩き出そうとした時。
「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
再び大きな咆哮が聞こえてきた。
これはまさか・・・・・
二体目!?
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