シムサ・アドラ
トランプ家主催のパーティー前日、ブルーはポンパの街中を歩いていた。
先日起きた爆破テロの緊張も、パーティーというイベントにより吹き飛ばされていた。それだけトランプ家の催し物はすごいものだと言うことだ。歌自慢以外にも大会はあるらしく、様々な分野で結構な人数が招待されたらしい。
表通りを歩いているとき、彼は人ごみの中に非常に目立つ山のように盛り上げた黒髪の女性の後ろ姿を見た。赤いドレスを身にまとった人だ。彼はその女性についていった。もちろんストーカーではない。面識があるのだから…。
その女はマッジの八百屋の店先に並んだ果物からリンゴを早歩きで何気なくスーと取っていった。女はそのリンゴをかじり八百屋の隣のパン屋の店先販売をしているところからクロワッサンをまた何気なく盗み、かじったリンゴを置いていった。そしてまたしても、女はかじったクロワッサンをパン屋の隣の花屋に置き、大きな花束を盗んでいった。不思議なことにそれぞれの店のものは気づかなかった。それだけ彼女の盗みの腕はすごいと言うわけだ。女は裏通りに入っていった。すると女は急に振り返った。とっさにブルーは建物の陰に隠れた。女は気のせいかというを顔をし、また歩き出した。しかし、女は誰か下品な声の男に呼び止められた。
「そのお花お綺麗ですね、お嬢さん。いや、花なんかよりあんたの方が綺麗やな〜。」下品な声の男が言った。そして女は顔をしかめた。
「俺の女にゃならねーか?」下品な男とは別にかすれた男の声が女の耳もとでした。
一瞬の出来事であった。女はかすれた声の男に肘で攻撃し、花束を目くらましに使い下品な男の首元にどこからか出したナイフを突きつけた。
「動かないで…。」女が口元に笑みを浮かべながら言った。
かすれた声の男は地面にうずくまったままで、下品な男の首元にはナイフが突きつけられたままだった。女はナイフを持っていない方の手で男の胸元に入っている財布を取った。
「あーら、いいものみーつけた。」
女はナイフで男のヒゲをスパッと切り落とし、「いただいくわ。」言って立ち去っていった。
ブルーは腰を抜かした男とうずくまってる男に「だいじょうぶっすか?」とサラッと言って、女を追いかけた。
しかし、追いかけた先には誰もいなかった。
ブルーの首元に急に冷たい何かが押し付けられた。ナイフだ。
「あーら、ブルーじゃない!」女はナイフをブルーの首元から離した。
「もしかして、さっきからずっと私のことをつけてきてたの?」女は言った。
「あー、まぁ、そのなんだ…あれだ。」ブルーはどう答えていいのか分らずあたふたした。
「私が連続爆破テロの実行犯だと思ってるんでしょ?」
女の唐突な質問にブルーはもっと慌てふためいた。
「あなたのお友達が私が犯人じゃないかって疑っているんでしょう?」
そう、彼女はシムサ・アドラ。今までに幾つもの悪行を犯してきた女。しかしブルーにとって彼女は最愛の人であるのだ。シムに関して、ブルーの友人のウィルはいろいろと調べ上げていた。ときたまブルーもウィルの捜査を手伝うこともあった。しかし、ウィルにとってもシムは大事な人であった。それはまた今度話そう。
シムはどんな悪行を犯しても、犯人が自分だという証拠を残さない。相当な腕の持ち主である。
「こんな裏通りを通り、一目を避けるようなことをするってことは、今から君の雇い主に会いにいくのかい?」ブルーが言った・
「ええ、まぁそんなところね。いまは急いでいるからまた今度ね。」
シムはそう言い、ブルーの唇に自分の唇を押し当てた。
「よくもその邪悪な唇をこの俺に押し付けたな!」ブルーは笑いながら言った。
シムはウィンクして、裏通りの入り組んだ道の中に消えていった。




