ブルース・クリントン
官邸で聞こえていた爆発音はブルース・クリントンにも聞こえていた。
爆発があったペネロピは彼の家からそう遠くはないところであったので、音だけでなく地響きもし家が軋んでいた。
ブルース・クリントンは小さい頃に両親共に行方不明になっていて、毎日ポンパの街中でストリートパフォーマーとして歌をうたっている。彼にとって歌うことは親がいない悲しみなどを紛らわせてくれるものであった。
ブルーはとっさにテレビをつけた。テレビには深刻な顔つきのニュースキャスターが現場にいるキャスターに変わる場面であった。
『では、現場にいるグリマーキャスターに変わります。』
『はい、私グリマーは爆発があったペネロピに来ております。見てください。あの歴史的建造物が木っ端みじんに吹き飛んでしまっており、黒い煙が立ち上っております。』
テレビには漆黒の闇の中に真っ赤な炎と黒煙、そして掌から水を出す消防士が映っていた。
ここで説明しておくが、この世界には特殊な能力を持った人間が多くいる。いわば超能力であるその能力は一族に代々受け継がれるものもあれば、急にその力に目覚める者いる。この消防士もどちらかだろう。無論、ブルーもそういった能力を持っている。
『今回の事件に関して、ポンパ警察署署長のハインツ・カーター氏に問い合わせたところ、先週のバンパーの森の山火事事件との関係が深いとおっしゃっておりました。詳しい情報が入り次第、また後ほどお伝えします。」
ニュースが終わり『野菜を買うならマッジの店!」というCMが流れた。
”ピンポーン”
玄関のベルが鳴った。
ブルーは時計に目をやるともう10時をまわろうとしていた。
こんな時間にだれだろう、とつぶやきながら玄関に向かいドアを開けた。
ドアを開けるとそこにはピンクのスーツにピンクのズボン、ビンクのワイシャツにピンクのネクタイの全身ピンクずくめの男が立っていた。
「こんばんは。私、ドランプ家に仕えるモース・フリンでございます。私はヘレンお嬢の命により、来る10月21日に予定されているトランプ家主催の大宴会の招待状をお渡しにきました。」ピンク男が言った。
「はいっ?!なんだって?トランプ家っていうとあの財閥の?」
「さようでございます。トランプ財閥頭首バーナバス・トランプの娘、ヘレン・トランプさんが開催する大宴会、いや今時の言葉でいうとパーテーです。」
ブルーはヘレン・トランプという名を幾度か聞いたことがある。
父親は資本家であらゆるカテゴリにおいての仕事をやってのけた人物で、母親は元ベレスト皇帝の娘三姉妹の姉。宇宙船からドアノブのネジいたるまでの工業製品を作るトランプ財閥。
「しかしまたなぜこの俺を招待するんです?」
「実はですね、この大宴会、いやパーテーではですね、歌自慢大会なるもの開催するのですよ。それ故にポンパの街中で歌っていらっしゃるクリントンさんにぜひ出場していただければなぁと。」
確かにブルーはポンパでは結構名の知られた歌手である。歌手と言っても道ばたで歌って、自分の前に置いた帽子の中に小銭を入れてもらう程度である。何度か新人歌手のオーディションに応募したことがあるが、そこまでの実力は無い。突き返されるのがオチだった。
「大きな声じゃ言えませんがね、優勝者には賞金も出ますから!」出場しようかしまいか考え込んでいるブルーにモースが言った。
賞金という部分をブルーは聞き逃さなかった。事実、彼の収入と言ったらストリートパフォーマーとして小銭ももらう程度であり、その他は親の遺産も何も無い。両親の財産も親の体とともに行方不明になってしまったのだ。
ブルーはその大会に出ることに決めた。




