昔と幼馴染
星城高校は、県内でも五本の指に入る進学校だ。偏差値は高く毎年東大や京大に合格者を出す。部活動も盛んで、特にサッカー部と吹奏楽部は全国大会の常連らしい。
正直、俺はこの高校のことをよく知らずに入学した。中学の担任に勧められて、なんとなく受けたら受かった。ただそれだけだ。
美咲は違う。彼女は小学生の頃から「星城に行く」と決めていた。
理由は、天文台があるからだ。
星城高校の屋上には、小さな天体観測ドームがある。数十年前に建てられた古いものだけど今も天文部が活動に使っているらしい。
「蒼くんも星城受けるんでしょ?」
中学三年の夏、美咲にそう言われたのを覚えている。
「え? いや、俺は別に……」
「受けるんだよ。一緒に行こう」
有無を言わせない口調だった。昔から美咲はそういうところがある。普段はおとなしいのに、自分の大切なことに関しては絶対に譲らない。
結局、俺は美咲に押し切られる形で星城を受験し合格した。美咲は当然のようにトップ合格で、俺は真ん中らへんだったけど。
でも、同じ高校に通えるとわかったとき、美咲が本当に嬉しそうに笑ったからそれでよかったと思った。
入学してからも、美咲は相変わらず星に夢中だった。
天文部に入るのかと思ったら意外にも入部はしなかった。あとで本人に聞くと「自由に観測したいから」だそうだ。部活だと活動日が決まっていて、曇りの日でも行かなきゃいけない。それが嫌らしい。
その代わり、美咲はよく一人で屋上に行って星を見ている。特別な許可を取っているわけじゃないけど美咲は成績優秀で素行もいいから、先生たちも黙認しているようだ。
「今度の流星群、見に行かない?」
そう誘われたのは、高校一年の夏だった。
「え、どこで?」
「学校の屋上。夜なら誰もいないし、街灯も少ないから結構見えるんだよ」
「夜の学校って、不法侵入にならないか?」
「大丈夫だよ。ちゃんと許可取るから」
美咲はそう言って笑った。結局そのときは、俺の親が許さなくて行けなかったけど。
今思えば、あのとき無理してでも行けばよかったのかもしれない。
でも、そういう小さな「できたかもしれないこと」の積み重ねが、今のこの距離を作っている気がする。




