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第8話

 三時間後、いわちゃんから返信が来た。どうやらレッスンをしていたらしい。いわちゃん曰く、修行を手伝えるかもしれないから準備をして部屋に来てほしい、とのこと。俺は大量の蝋燭とライター、そして"光"を持って彼女達が住むマンションに向かった。

 九階の一番奥の部屋の呼び鈴を三回鳴らすと、いわちゃんが顔を出した。

「いらっしゃい。修行の用意はできてる?」

「うん。持ってきた」

 リビングに入ると、ローテーブルとたまき様のソファが端に寄せられ、広いスペースができていた。他のメンバーは壁際に立っている。たまき様だけは、大量のクッションをソファみたいに重ねて寛いでいた。

「まずは蝋燭を並べて、それに向かって力を使ってみるんだよね?」

「うん、そうらしい」

 つのちゃんがローテーブルの長辺が俺と平行になるように動かし、俺といわちゃんともえちゃんで新聞紙を敷いた上に蝋燭を縦に十本並べた。ライターで火を点けると、小さな炎がゆらゆら揺れた。

「"光"が必要って言ってたけど、何を使うの? ライター?」

「いや、これにしようと思って」

 俺は鞄から"光"──ペンライトを取り出した。

「ライターの火をずっと持ってるのはなんか怖くて……それに、これが一番手に馴染んでるから」

 そう言いつつ俺は、ペンライトの色をなんとなく水色に変えた。

「それ、ライブでオタクが持ってるヤツだろ!」

 つのちゃんにガハハと笑われた。

「……まぁ、紛うことなき"光"ね」

「持ち運ぶのには適してますし」

 いわちゃんともえちゃんは納得してくれたみたいだ。りぃちゃんは面白そうに俺を見ているし、たまき様はというと半分寝ていた。

「……じゃあ、やってみる」

 俺はローテーブルから少し離れたところに立って、ペンライトを蝋燭に向けた。

「そういえば、"呪文"は考えてあるの?」

 いわちゃんの質問に俺は固まった。やべ、何も考えてなかった……! みんなは黙ってしまった俺を訝しそうに見つめている。

 アキラじいちゃんは、心に馴染んでいて言いやすい言葉にしろって言ってた。なんだろう、こんにちは、とかか? いや、全然しっくりこない。俺がいつも言っている言葉……ああ……あれしか思いつかねえ!

「タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー! ダイバー! バイバー! ジャージャー!」

 俺がそう叫んだ瞬間、ペンライトの先からふわりと風が巻き起こり、並べた蝋燭の手前の二本が消えた。

「き、消えた……!」

 俺は驚きと同時に感動を覚えた。本当に俺には呪力があったんだ……!

 しかし、ひゃっこのみんなの反応はイマイチだった。

「それ、ライブでオタクが叫んでるやつだろ!」

 つのちゃんにガハハと笑われたのはいい。いわちゃんともえちゃんが若干引いた目をしている。

「ま、まぁ……あんたがそれでいいなら……」

「……それで力を使えるんなら、何も言いませんけど」

 ……なんか釈然としない。 

「ほうら、見らさい! あらくしの目に狂いはらかったのよ!」

 たまき様は一瞬起きて声高に叫ぶとまたうたた寝に戻った。かなり酒が入っているようだった。

 そこへ、パチパチと小さな拍手が聞こえてきた。手を叩いているのはりぃちゃんだ。

「初めてにしては上出来だよぉ。でもぉ、まぁだまだ頑張んないとだねぇ」

「うん、頑張ります……けど、どうしたら上手く力を使えるようになるのかな? 繰り返し練習するしかないのか……」

「それなんだけど」

 いわちゃんが小さく挙手をした。

「あたしともえちゃん、あとたまき様……は今は寝てるけど、あたし達が力を使う時のコツみたいなの、参考になるかなと思って、それで来てもらったの。あんたの呪力とは違うものだから、役に立つかは分かんないけど……」

「ううん、是非聞かせてほしい。教えてください!」

 俺が頭を下げると、いわちゃんはふふっと笑った。

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