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第7話

 翌日の昼前まで寝ていた俺は、スマホの着信音で目が覚めた。電話だ。どうせ怪しい通信会社のセールスだろ、と放置しかけて、昨日のりぃちゃんの言葉を思い出した。

 電話の相手に全て話せば、何か分かる。

 俺は意を決して電話をとった。相手は田舎に暮らすアキラじいちゃんだった。

『よお、ハル! 元気にしてるか?』

「……アキラじいちゃん? どうしたの、急に」

『虫の知らせってやつかな、なんだか胸騒ぎがしたんだ』

 じいちゃんは一度言葉を切ると、低い声で言った。

『ハル、お前、ろくでもないことに巻き込まれてるだろ。物の怪とか、そういった類いの』

「……! なんで、それを」

『……お前には隠してたが、うちの先祖は陰陽師をやってたんだ。遠い昔の話だけどな。そのせいか、今でもたまに呪力を持った奴が生まれる。何を隠そう、俺もその一人だ。そしてハル、お前もな』

「……マジ?」

『大マジだ』

 俺はじいちゃんの台詞に唖然とした。先祖が陰陽師だなんて初耳だし、じいちゃんも呪力を持ってるなんてこれっぽっちも知らなかった。

「なんで教えてくれなかったの?」

『俺はこの力のせいで、昔から厄介事に巻き込まれてきたからな。お前にはそんな思いをさせたくなかったんだ。それに、お前の父ちゃんはからっきしだしな。言わない方がいいと思ったんだ』

「そっか……ありがとう」

 じいちゃんは俺を守るために黙っていてくれたのだ。にも関わらず、俺は厄介事に自分から飛び込んでしまった。

「なんか、ごめん。俺……」

『いいんだ。いつかこうなる予感はしてた。それで、何があったんだ?』

 俺は昨日の出来事を洗いざらい話した。じいちゃんは俺の話を黙って聞いてくれた。そして話し終えると、ぽつりと尋ねてきた。

『ハル、お前はどうしたいんだ?』

「彼女達を助けたい。だから、力をちゃんと使えるようになりたい」

 俺は即答した。

『この先、今回以上に大変なことに巻き込まれるようになるかもしれないぞ?』

「構わないよ。いわちゃんは……おれにとって、本当に大切な人だから」

 じいちゃんは数秒の沈黙の後、分かった、と小さく呟いた。

『今から大事なことを教える』

「……はい」

 俺はごくりと唾を飲み込んだ。

『呪力を使う上で必要なものが二つある。それは、"光"と"呪文"だ』

「光と、呪文……」

『光に関してはこのご時世どうとでもなるだろ。俺は蝋燭の火を使ってたけどな。呪文についてだが、お前の心に馴染んでいて、口にしやすい言葉にしろ』

「じいちゃんの呪文は?」

『俺のは自分で作った俳句だ』

「へぇ、どんなの?」

『恥ずかしいから内緒だ』

 じいちゃんはくつくつと笑った。

「じゃあ、光と呪文を用意すれば、俺も力を使えるようになるの?」

『それだけじゃ駄目だ。修行をしないと思った通りには使えない』

「しゅ……修行!?」

 マンガの中でしか聞かない単語が出てきて、声が裏返ってしまった。だが、じいちゃんは大真面目な口調で続けた。

『そうだ。何度も何度もひたすら練習して初めて、力はお前のものになる』

「でも、修行って……何すればいいの?」

『俺はまず、火の点いた蝋燭を並べて、それに向けて呪文を唱えた。そしたら火が消えて、風を起こせると分かった。ひとつできるようになれば、あとは勘で徐々に色々できるようになる』

 じいちゃんは簡単そうに言うが、俺にはまったく想像がつかない。

「そんなもんなの……?」

『案ずるより産むが易し、だ。まずは蝋燭相手にやってみろ』

「わ、分かった……」

『ハル、最後にもうひとつ、一番大事なことを言うぞ』

 一番大事なこと。俺は息を飲んだ。

「な……何?」

『俺はハルのことが大好きだ。ばあちゃんも、お前の父ちゃんも母ちゃんもだ。だから、敵わないと思ったらすぐ逃げろ。お前が傷ついてまでやらなきゃいけないことなんて、この世には無いんだ』

「じいちゃん……」

『でも、修行はきっちりやれよ。力は使えるに越したことないからな』

「……分かった。俺、頑張るよ」

 俺は電話を切った。じいちゃんの気持ちはありがたかったし、心配をかけてしまって申し訳なくもある。けど、いわちゃんのため退くわけにはいかない。

 まずは……修行か。俺はパンッと両頬を叩き、いわちゃんへのLINEをしたためた。

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