第22話
もえちゃんとつのちゃんにも癒しの呪文を唱えようとしたが、できなかった。あれはいわちゃんが相手だったからできた、奇跡のようなものだったらしい。俺達は二人が目を覚ますのを待った。
目が覚めた二人は、大事なものが帰ってきたことに揃って喜び、芦田を倒したことに揃って安堵し、りいちゃんの変わりように揃って驚いた。俺は何度も何度もお礼を言われて、すっかり恥ずかしくなってしまった。
それから俺達は、ステージに車座になって勝利を噛みしめていた。
「それにしても……たまき様、なんで裏切るフリなんてしたんですか?」
もえちゃんの疑問に、たまき様は得意げに答えた。
「うふふ。このところ芦田が頻繁に現場に来てたでしょ。アイツ、客席の下手……坊やの辺りをじっと見てたの。それで、坊やの力に気づいてるんじゃないかと思ってね。どうせバレてるなら、相手に対策される前にやっちゃった方がいいでしょ?」
「だとしても、先に相談してくれてもよかったんじゃないですか?」
「敵を騙すにはまず味方からって言うじゃない」
たまき様はもえちゃんの怒りをさらっと受け流した。
そういえば、ひゃっこのみんなに聞けていなかったことがあった。
「みんなは……アイドルは、もう辞めちゃうんですか?」
ひゃっこのみんなは、芦田に大事なものを人質に取られていたからアイドルをやっていた。それが返ってきた今、続ける理由は……もう、無い。
みんなもそう思っているのだろう。揃って口を閉ざしてしまった。
「あ……ごめん。みんなの気持ち、考えないで……」
「ううん。ハルはひゃっこのこと、ずっと好きでいてくれたんだもん。寂しい……よね」
いわちゃんの優しい言葉に、涙が出そうになる。
「あたしは、続けてもいいって思ってる。けど……」
いわちゃんは他のみんなを順に見た。
「私は……まずは閻魔大王にハンコを返さないといけませんし、一応労使関係にありますから簡単には……随分と欠勤してしまいましたし……」
もえちゃんが申し訳なさそうに呟いた。
「アタシも、きっと家族が心配してるから、帰ってやらねぇと……」
つのちゃんも、普段からは考えられないほど小さな声で言った。
「わたくしはもうたくさんよ。オタクなんてチョロい男ばっかりで飽き飽きしてたの。これからはもっといい男誑かしたいわ」
たまき様はひらひらと手を振った。
「儂は……どうしようかのう。自由の身にはなったが、アイドルというのもなかなかに面白いものであった。もう少し歌い踊っていたい気もするが……皆次第、だな」
りぃちゃんはそう言って控えめに笑った。
「……でも」
いわちゃんが真っ直ぐな視線を俺に向けた。
「明日のワンマンライブは、絶対にやり遂げる。一年間応援してくれたハルの……オタクのみんなの気持ちは本物だから、ワンマンを成功させて応えてあげたい。それは……みんな、一緒だよね」
ひゃっこのみんなは力強く頷いた。




