第17話
うっ……俺は何を……。そうだ、たまき様に何かされて、気を失ったんだった……。
ゆっくり目を開くと、そこは知らない部屋だった。長机に椅子が五個置かれ、壁際には鏡が並んでいる。ここは……楽屋……?
俺は体を起こそうとした。が、全く動けない。というより、腕や脚そのものが無くなってしまったかのようだ。どうなってるんだ……!?
しばらくもがいていると、部屋のドアが開き、いわちゃん達四人が入ってきた。彼女達の姿は、何故かやたらと大きく見える。
「……ダメ。やっぱりハルと連絡がつかない」
「そんな……まさか、既に芦田に!?」
「なんて汚ねぇ奴だ!」
いわちゃん達は俺を心配してくれているらしい。ここだよ! 俺はここにいるよ! と彼女達に呼びかけようとするが、声にならない。ダメか……と思ったその時、急に景色がまっ逆さまに落ちていき、目線が床と同じになった。痛みは無いが、高い所から落っこちたみたいだ。
「あ……リボンが落ちてる」
いわちゃんの大きな足がこちらに近づいてくる。彼女の手で視界が完全に遮られた瞬間、ぼわんっと煙が立ち上がり、俺は元の大きさに戻った。
「ハ……ハル!?」
いわちゃん達は目を丸くして驚いている。ただ一人、りぃちゃんだけは面白そうに笑っていた。
「なんであたしのリボンがハルになったの!?」
「お、驚かせてごめん! いや、俺にもわけがわからないんだけど……多分、たまき様だ」
たまき様の名前を聞いた四人の顔が強ばる。
「たまき様にやられたの?」
「うん……。でも、彼女は敵じゃない……んじゃないかな」
「彼女は芦田に私達の計画を漏らしたんですよ?」
厳しいもえちゃんの言葉に皆が頷く。
「でも昨日、うちにたまき様が来て……会場に入り込む方法を考えてないって言ったら、気絶させられて、今こうして楽屋の中に入れてる」
「それは……。でも、たまき様はここにはいないよ」
全員が黙り込む。
「たまちゃんをぉ、信じてみようよぉ」
沈黙を破ったのはりぃちゃんだ。
「たまちゃんはぁ、きっと裏切ってなぁいよ。そんな気がするぅ」
りぃちゃんはキッパリと言った。
「……俺もそう思う。彼女には彼女なりの考えがあるんだろう。多分、今もどこかで一人策を練ってるよ。それに、あのたまき様が芦田に一生服従することを認めるとは思えない」
全員がそれはそうだ……という顔をした。
「それならそうと、私達に一言相談してくれればいいのに」
もえちゃんは溜め息をついた。
「でもよ、こいつがいるなら作戦は決行できるよな!」
つのちゃんはガハハと笑うと鬼の姿になった。
「そうね。……あ、でも、ペンライトが無い」
いわちゃんがそう言った時、部屋の隅でコトリと音がした。見ると、ペンライトが転がっている。
「きっと、たまき様が持ってきてくれたんだ!」
俺はペンライトを拾い上げた。が、違和感がある。……なんだろう、いつもの手に馴染んだ感覚と違うような……。
「ハル、それがあればいけるよね?」
いわちゃんの声に、俺は慌てて頷いた。細かいことを気にしてる場合じゃない。俺はペンライトをぐっと握りしめた。
「よし……行くぜぇ!」
つのちゃんが楽屋のドアを大きく開け放った。




