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第16話

 それから俺達は作戦を練った。決戦は明後日……ワンマンライブのリハーサルの日になった。

「リハーサルには確実に芦田も来る。相手の懐に飛び込むよりは、勝ち目があると思う」

 いわちゃんの言葉に全員が頷く。

「私とつのちゃんがメインで攻撃します。ハルさんには、我々のサポートをしていただきましょう」

「ガハハ! 頼んだぜぇ!」

 もえちゃんとつのちゃんが俺を頼りにしてくれている。二人の信頼に応えたいという思いを込めて、俺は力強く頷いた。

「いわちゃんとりぃちゃんには、どこかに控えててもらう?」

 俺の言葉に、二人は首を振った。

「あたしも一緒に行く。"怨み"が無いから力は使えないけど、黙って待ってるなんてできない」

 いわちゃんが側にいてくれるのは正直とても心強い。彼女こそが俺の力の源でもあるからだ。

「私も行くよぉ。なんかぁ、その方がいい気がするぅ」

 りぃちゃんが大きく挙手をして言った。

「りぃちゃんの予感は当たる……だよね」

 彼女はニカッと笑った。

「では、段取りも決めておきましょう。リハーサルは午後ニ時から始まるので、一時には我々は会場に入ります。ハルさんにはそれくらいを狙って来てもらいましょう。芦田は三時頃には現れるはずなので、それまでに体勢を整えておく必要がありますね」

「会場にいるスタッフ達も、芦田の息がかかった連中かもしれない。先にどうにかしておかなきゃいけないかもね」

 もえちゃんといわちゃんの言葉に頷く。

「ガハハ! 雑魚はアタシが薙ぎ払ってやんぜ!」

 つのちゃんがバシンと胸を叩いた。

「ハルさんはつのちゃんが戦いやすいよう、敵の動きを止めてあげてください。つのちゃんが吹き飛ばした敵には、私が炎でトドメを刺します。……そうだ、私の炎をハルさんの風で強化できないでしょうか」

 確かに、風の力で炎のスピードと威力を上げられるかもしれない。

「やってみるよ」

 もえちゃんが拳を向けてきたので、俺も拳を出して軽くぶつけた。

「じゃあ明後日……頑張ろうね」

「えいえいっ、おぉ~だよぉ!」

 俺達もりぃちゃんに倣って、えいえいおー、と拳を上げた。


 ワンマンライブ二日前。明日はついに芦田との決戦だ。俺は朝から浮き足立っていた。バイトでは普段ならしないようなミスをして、店長に心配された。

 家に帰ってからも、ちっとも気が休まらない。……これじゃ芦田と戦うどころじゃないな、しっかりしなきゃ……。

 俺は心を鎮めるため、瞑想をすることにした。床に胡座をかいて目を閉じる。不安を押し殺し、精神を研ぎ澄ませようとした、その時だった。

「やってるわね、坊や」

 たまき様の声がした。驚いて目を開けると、たまき様が窓に寄りかかって立っていた。

「た、たまき様……!? なんで、ここに……」

「うふふ、坊やがどうしてるか気になって、来ちゃった」

 たまき様はウインクを飛ばしてきた。

「芦田に付いたんじゃなかったんですか……?」

「ええ、そうよ。敵情視察ってところかしら」

 あっさりと認めるたまき様。

「どうして、ひゃっこのみんなを裏切ったんですか……」

「わたくしの願いは宝玉を取り戻すこと、ただ一つ。そのために一番確実な選択肢を選んでいる、それだけよ」

 たまき様の言うことは間違っていない。宝玉を取り返すだけなら、芦田に取り入るのが一番簡単だ。それでも、彼女がひゃっこのみんなを切り捨てる選択をしたことが悲しくてならなかった。

「ところで坊や。明日、勝負を仕掛けるんでしょ? どうやってリハーサル会場に入り込むつもり?」

 唐突なたまき様の質問に、俺は虚を突かれた気持ちになった。そういえば、そこの作戦は考えていない。

「え、えっと……なんとか、スタッフの目を掻い潜って……」

 たまき様は溜め息をついた。

「馬鹿ね。部外者が簡単には入れるわけないじゃないの。芦田だって坊や達が何かしてくるんじゃないかって警戒してるわ」

「そんなぁ……」

 うなだれる俺をたまき様は鼻で笑った。

「そんなお馬鹿さんに、プレゼントをあげるわ」

 たまき様が左手を俺に向けた、次の瞬間。鳩尾に殴られたかのような衝撃が走った。

「ぐっ……うう……」

 あまりの痛みに気が遠くなっていく。意識が途切れる寸前、

「期待してるわよ、坊や……」

というたまき様の呟きが聞こえた気がした。

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