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第12話

 二十分ほど経った頃、いわちゃん達が帰ってきた。その間ひたすらワインをガブ飲みしていたたまき様は舟を漕いでいる。

「お邪魔してます。レッスン、お疲れさま」

 いわちゃんは笑顔を見せてくれた。

「ありがと。修行の調子はどう?」

「この前よりは上達してると思う。……あ、そうだ、ちょっと相談したいことがあったんだ」

「あら、何?」

 俺はいわちゃん達に、違う呪文を試してみたら物の動きが止まったことを話した。

「それって、生き物相手でも通じるんでしょうか? だとしたらかなり強力な武器になりますよ」

 もえちゃんの言葉にみんなが頷く。

「よぉし、だったらアタシが相手になってやんよ!」

 つのちゃんはそう言うと鬼の姿になった。見るのは二回目だが、やっぱりビビってしまう。

「おら、かかってこーい!」

 つのちゃんが腕をぶんぶんと振り回す。俺は彼女から少し離れた場所に立った。

「いくよ……虎! 火! 人造! 繊維! 海女! 振動! 化繊!」

「……んんっ!?」

 つのちゃんの腕が一瞬止まった。しかし、すぐに元に戻ってしまった。

「ガハハ、ほんのちょびーっと止まったな! にしても、まーたオタクが叫んでるやつかよ!」

「……でも、修行すればもっと長い時間止められるようになるかもしれません」

 なんだか微妙な顔をしながらもえちゃんが言った。

「……そうね。隙が作れれば取り返すチャンスも生まれるはず」

 なんだか微妙な顔をしながらいわちゃんも頷いた。

「もっとぉ、他の呪文もぉ、見てみたいなぁ」

 そう言ったのは俺達の様子をニコニコしながら見ていたりぃちゃんだ。

「色々試したらぁ、なんかすごいことぉ、できるかもよぉ」

「……確かに、風と動きを止めるだけじゃ心許ないよね」

 俺は次なる呪文を考えてみることにした。タイガーファイヤー、虎火ときたら、これしかない。みんなが見つめる中、俺は新しい呪文を唱えた。

「チャペ! アペ! カラ! キナ! ララ! トゥスケ! ミョーホントゥスケ!」

 部屋に沈黙が降りる。何も起こらなかったみたいだ。つのちゃんは「またかよ!」とガハハと笑い、いわちゃんともえちゃんはさっき以上に微妙な顔をしている。

「……そう上手くはいかないかぁ」

 と言って二、三歩前に出た時だった。

「あでっ」

 俺の体が何かにぶつかったように弾かれた。しかし、そこには何もない。

「何だこれ……見えない壁? があるみたいだ」

 俺の言葉を聞いたいわちゃん達も、空間を手で探りだす。

「本当だ……ここに、見えないけど何かある」

まるでみんなでパントマイムをしているかのような光景だが、そこには確かに"壁"があった。

「……これ、バリアとして使えるんじゃないですか?」

 試しに、ともえちゃんが小さな火の玉を放つ。それは"壁"にぶつかって散らばった。

「防げてる……! すごい、心強いよ!」

 いわちゃんの顔がパッと明るくなった。いわちゃん達を相手の攻撃から守れるなら、俺としても嬉しい。

「お前、やるじゃねぇか! 他にはないのか!?」

 つのちゃんの言葉に気を良くした俺は、とっておきの呪文を唱えた。

「これならどうだ! イェッタイガー!」

 次の瞬間、ペンライトの先から一筋の光が飛び出した。油断していた俺はペンライトがどこを向いているかに気を配っておらず……光線はたまき様のソファに穴を開けた。

「ちょっ……!? 何!?」

 衝撃に驚いて飛び起きたたまき様に睨まれる。

「何してくれてんのよ!」

「すみません、すみません……!」

「これは……家の中では禁止ね」

 ペコペコ頭を下げる俺に、いわちゃんが冷静に言った。


 俺は家に帰ってシャワーを浴びながら、今日の修行の成果を思い出していた。風を起こす呪文と動きを止める呪文の他に、バリアと光の攻撃を使えるようになった。あんまり手広くやろうとしても器用貧乏になりそうだから、当面はこの四つのレベルを高めることに集中しよう。

 風呂から出て髪を乾かした俺は、たまき様が言っていた瞑想を早速やってみることにした。座禅を組もうとしたら足がつりかけたため、とりあえず胡座をかき、目を閉じる。

 しかし、何も考えないというのも難しいもので、バリアにぶつかったとこまだ痛いなとか、たまき様めっちゃ怒ってたなとか、余計なことが次々浮かんでくる。ダメだ、集中集中……。

 その後も俺は邪念が浮かんでは消して、を繰り返した。

 どれくらい経っただろうか、ふと、目の裏に光が集まるような感覚を覚えた。もしかして、これが……? 俺は右手をきゅっと握ってみた。すると光は首、腕を通ってゆっくりと右手に流れ込んだ。

 間違いない、呪力が……"視えた"。あとは……俺はいわちゃんの顔を思い浮かべた。すると光は輝きを増した。この感覚を忘れないようにしないと……。

 ハッと時計を見ると、瞑想を初めてから一時間が経過していた。さすがにもう寝た方がいいな。俺は確かな手応えを胸に、ベッドに寝転んだ。

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