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2話 サファイアプロトコル


翌日の正午。


律は、グレー営業発見プロトコルを徹夜で完成させた。


「後は、自分のメアド宛に確認テストをすれば、完了だ」


 スマホを確認すると、美里から連絡が来ていた。


美里:多崎さんの社内SNSのアカウントが、不適切メッセージ連投により、一時凍結って表示が出ていたんだけど…。もしかして、律くんが対応してくれたの?


律:ああ。美里のメンタルをあんなのに消費されたくなかったし、ああいうのは放置したら増長するから。

今日か明日、美里の時間を少しで良いからほしい。大事な話があるんだ。


美里:対応してくれて、すごく嬉しかった。ありがとう。今日は友達とランチの予定だけだし、遅くなっても夕方5時から空いているよ!


律:18時に美里の最寄り駅前で待ち合わせしようか。貸オフィスを予約するつもりだ。


美里:仕事の話ならWiFiもあるし、私の家でも大丈夫だよ。


律:了解。では、18時に。


「ひとまず、仮眠を取ってから確認後に会いに行こう」


 律は、4時間半仮眠を取った。

彼の机には、あの日美里からもらったバラの花が、透明な花瓶に生けてあった。長持ちさせたくて手入れをしていても萎れてきてしまったそれを、律はなかなか捨てる事が出来ずにいた。



そして、18時。


律は美里の家に入った。



「律くん。だいぶ疲れているみたいだけど、大丈夫?」

「4時間半仮眠を取ったから、大丈夫だ」

「心配だよ…」


(断られても、私はやっぱり律くんが大切なんだよ…)


「美里。今までに美里からもらった言葉は、俺に取って嬉しい気持ちになる言葉ばかりだった。もう、失いたくない」


 律は資料を彼女に手渡して、パソコンの画面を見せた。


「グレー営業発見プロトコル?」

「そうだ。美里みたいな誠実な人が正しく評価される会社になるのに、必要だと思って作った」


 律は画面を見せながら操作する。共有ファイルに多崎の提案書をアップすると、赤いランプが点灯するとともに、律の社内メールアドレスへ警告メールが届いた。


 そして、美里が過去に営業を担当していた時の提案書をアップすると。青いランプとともに、<クリーン案件です>と表示された。


「上司に説明する時は、アドレスを内部監査室宛てに変更するつもりだ」


(律くんの目……。普段は可愛いのに、仕事の時は鋭い眼差しで、真剣な表情になる。私は、そんな貴方に何度も恋をした)


「他の営業担当と比べても、多崎のグレー発生率は突出していた。そんな人が持ち上げられて、誠実な仕事をする人間が報われないのは間違っている」


 律はカバンからネックレスのケースを取り出すと、ケースを開け、サファイアを頬に当てて目を閉じた。


「俺はもう、美里に悲しみの涙を流させたくない。愛している」


 美里は目を潤ませて、律をきつく抱きしめた。


「私も、愛しています。律くんに何度も恋をしてるんだよ?」


 律は目を開けると、彼女にそっと、サファイアネックレスを着けて。壊れ物を扱うかのように抱きしめ返した。



「結婚しよう。返事が遅くなって、すまない」




 美里は、安堵の笑みを浮かべた。


「良かった……。実は、明日の午後に母に結婚相談所に連行されるところだったの。もう必要ないって連絡しなきゃ」

「…間に合って、良かった。徹夜で完成させた甲斐があった。明日は結婚指輪を見に行かないか?もっと美里と過ごしたい」

「嬉しい!私も、律くんと一緒に居たかったの」


 2人は、時間が止まったかのように見つめ合った。



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