わさび漬け
ククリ「やっぱ富士山頂で飲む酒は格別やの~」
オオヤマツミ「あのー、今日は何の日ですか?」
ククリ「別に何の日でもあらへんよ? ちょっと近くに来たもんやさかいに、ふらっと寄ってみただけやで? せんべい食うか?」
オオヤマツミ「……一応ここ、霊峰で、サクヤが治めてい地なんですけど……」
ククリ「そのサクヤちゃんがおらへんやん。ワテがここ来たときは大抵アンタがくるやんけ」
オオヤマツミ「そうなんですけど……」
イワヒメ「……お父様……」
オオヤマツミ「おー、イワナガ! 山頂に何か用事かね?」
イワヒメ「…………ククリさん……いらっしゃい……」
ククリ「イワヒメちゃん、久しぶりやな! 前はハデスちゃんたちの観光案内してくれて助かったで! せんべいやるわ!」
イワヒメ「……いえいえ。……あの……これ……」
ククリ「『わさび漬け』やんか! いいんか!? おおきにな! 良い酒の肴ができたわ!」
オオヤマツミ「……えーっと、それって」
イワヒメ「……サクヤとお父様に持ってきたものだけど……」
ククリ「ほな、サクヤちゃんにも渡さんとな!」
イワヒメ「……いえいえ……。サクヤの分はここにあるので…………」
オオヤマツミ「わ、私の分は?」
イワヒメ「…………これ……」(※ククリに渡した分)
ククリ「これオオヤマツミはんの分やったんか! ほな、もらっとくわ!」
オオヤマツミ「わ、私の分……」
イワヒメ「……それじゃ……ククリさん……ごゆっくり…………」
オオヤマツミ「お、おーい……イワナガー……」
ククリ「……あんた、娘らに嫌われとんちゃうか?」
オオヤマツミ「そ、そんなはずは……。現にイワナガが持ってきた『わさび漬け』も本来なら私の分だったのだし……」
ククリ「躊躇なくワテにくれたけどな」
オオヤマツミ「……そ、そんなはずは……」
サクヤ「あ~、本当だ。おばちゃん来てる~」
ククリ「サクヤちゃん! 邪魔しとるで!」
サクヤ「うん、いいよ~。おせんべい食べながら帰ってた姉様から今そこで聞いたし。わさび漬けと一緒に」
オオヤマツミ「サクヤ……。お前、この山頂を見守らなきゃいかんだろうに、一体どこで何をしていたんだ?」
サクヤ「……あー、父様居たんだ。別にいいっしょー。ククリさんだし~」
オオヤマツミ「いや、そういう問題じゃ――」
サクヤ「はいはい、も―、分かったから、父様は帰っていいよ」
オオヤマツミ「誰の為にここにわざわざ来たと――」
サクヤ「わかったから、もー、あとはウチに任せて帰っていいってば」
ククリ「ほなな、オオヤマツミはん」
オオヤマツミ「……で、では帰るが……。サクヤ、ククリさんに粗相の無いようにな。それから、ククリさん、ゴミは持ち帰ってくださいね……」
ククリ「わかっとる、わかっとる!」
オオヤマツミ「で、では……」
シュン……←オオヤマツミが瞬間移動で帰った音
サクヤ「やっと帰った……。はぁ……。いつまでたっても心配性なんよねー、ウチの父様」
ククリ「心配なんは、分からんでもないけどなぁ。ほんで、サクヤちゃんはさっきは何しとったん?」
サクヤ「んー? メイクだよ~。これ時間かかるんだよね~」
ククリ「まぁ、おなごの支度には時間かかるしなぁ!」
サクヤ「そうそう~。やっぱ、おばちゃん、わかってるぅ~」
ククリ「ワテかておなごやで! がっはっはっは!」
サクヤ「ねえ、おばちゃん。ウチにもお酒ちょうだい~」
ククリ「カップ酒でええならあるで~」
サクヤ「いいよ、いいよ~。最近のカップ酒って、昔の下手なお酒よりずっと美味しいじゃん~」
ククリ「わかっとるやないか~」
サクヤ「姉様に貰った『わさび漬け』がちょうど合うよね~」
ククリ「こら旨いの~!」
サクヤ「旨いね~」




