165. 古い新聞記事
「お、お前、無事だったんだな‼︎ 良かったぁああ‼︎ オレの愛しのSrun‼︎」
嬉しさの余り、車に抱きついていた。
もしかしたら、ウルフ達に自分が逃げ出す事を考えて壊されてしまっているのではと心配していた。車体をよく見てみるが、何処も壊されていないようだ。自分の車がSrun-T08とすぐに分かった車好きであろうウルフも高級車であるKJ-rMを運転している事もあり、車を壊すという行為は出来ればしたくなかったのだろう。自分も車が好きなので、気持ちがよく分かり小さく頷いていた。
「良い意味でウルフの野郎が車好きで良かったかもしれないな。どうでもいいと思っている奴だったら間違いなく壊していただろうし」
顔を上げて前を見ると車が走って行った跡がある。ウルフの車が通った跡だろう……この跡を追って行けばガメバの街に着く筈だ。急いで自分も向かわなければ、ガメバ第一ホテルからそんなに離れてはいないだろう。
「でも、安全運転で行かないとな。……ん?」
車の下に古い新聞の記事の一部が落ちている。
拾い上げて日付を見ると今から二十年前の記事のようだ。所々しか読めなくなっているが見てみる事にした。
「ガメバ第一……ホテルを経営する……社長……世界財産を……オークションで……ら、落札⁉︎」
ガメバ第一ホテルを経営していた会社の社長が世界財産を持っていたようだ。
「嘘だろ? この社長がいる会社の名前は⁉︎ くそっ、全く読めねぇ‼︎」
記事を持っている手は震えていた。名前さえ分かれば会社を探せるのだが、新聞の文字は薄くなっており殆どの文字が読めなくなっていた。
今も、まだ持っている?
「自宅か、会社内にあるのか⁉︎ まさか……」
目の前のガメバ第一ホテルに視線を向けた。四階建ての建物内にあるという事はないだろうか。だが、さすがに廃業となって使わなくなった建物に世界財産を置いていくとは考えづらい。
「厳重に管理するだろうし、こんな廃墟に置いていく筈がないよなぁ。それに、盗人が入っているのなら……とっくに取られている可能性もあるだろうし」
だが……何か腑に落ちない。
ガメバ第一ホテルをジッと見ていた。
時間があればガメバ第一ホテルの中を探索したいところだが、今はデアを助ける事が最優先だ。急がないとウルフ達ならば警備員達の目を直ぐに潜れるだろう。
「あぁぁああ‼︎ 行くしかねぇ‼︎」
世界財産も気になってはいたが一旦諦めて、急いでパーカーのポケットから車のキーを取り出した。
運転席に座るとグローブボックスの中から審判のコインを取り出した。
「良かった……バレなかったようだな。首にはかけておくが、外には出さずに服の中に入れておくか」
鍵が必要な手錠は36番力では外せなかった。手錠をかけたままの運転になるので気をつけなければならない。
フロントガラスに置いてあったサングラスを付けて、エンジンをかけた。
「オレが必ず止めてやる!」




