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36  作者: 川之一
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162. 盗賊


 「こ、怖いね。この人、僕達に何かしてくるかもしれないよ……」

「どうしよう、逃げる?」


 小声で何か話しているようだ。怖がらせてしまったかもしれないが、これで少しでも彼等が旧五野八(ごのや)トンネルに行く気を無くしてくれたのなら充分だ。怒鳴ってしまったが、ドアを開けてくれた二人には本当に感謝している。廃墟は崩れてきたりする事もあるので、怪我をしてしまう前に二人には行く事を考え直してほしかった。


 〈シュサヌ……〉

これでいいのだろう。


 床に落ちていたライトを拾い上げて男性に渡そうと差し出した途端、二人は強張った表情のままこちらを見ながら廊下側へと一歩ずつ後退りをしていた。

「な、何かするつもりですか⁉︎ この、極悪盗賊‼︎ 逃げるよ‼︎」

「うん‼︎」

ドアの前に着くと、慌てて二人は右へ曲がりそのまま走って逃げて行ってしまった。

「あっ、おい⁉︎」


 自分が両手で持っていたライトを弾いたのが怖かったのだろう。やはり、少し怒り過ぎたようだ。

「……極悪盗賊か。そうかもな、盗みばっかしてて冷たい性格で……誰も」

ダラメットもいなくなってしまった。ライトフォンも壊れてしまった。間違いなく、自分が望んでいた一人だけの状況だ。


 今、自分の周りには誰がいる?


 誰もいない。


 「……」

手にかけられている手錠を見つめていた。誰かがいれば、この手錠を外せる方法があったかもしれない。誰かがいれば、一緒にデアを助けに行けたかもしれない。誰もいない今は、自分で全て何とかしなければならない。



 仲間さえ……いれば……?



 これ以上、考えたら疲れそうなので考えない事にした。それよりも、今は……。

「早くこの廃墟から出て、デアを助けに行かないと。オレのSrun(スカイラン)が何処かに停まっている筈だ」

ドアから廊下へ出ようと歩き出した。


 ──カタン


 「……」

顔が真っ青になっていく。今、間違いなく後ろから物音が聞こえた。しかも、先程の影の女性が現れる前の物音と全く同じだ。旧五野八(ごのや)トンネルでもそうだった……後ろに何者かの気配を感じ、振り向くと自分の元へ向かって来ていたのは……。

〈早くドアから出て右に曲がれば!〉

気にせずに一歩、更に一歩と廊下に向かって歩いて行く。


 だけど……何故か自分でもよく分からないが、振り向かなくてはいけない気がする。


 〈いやいやいや、絶対に振り向かねぇからな‼︎ 歩け、歩け、歩けぇえ‼︎〉

異常に重く感じる足を上げて進んで行く。まるで、足を手で掴まれているような感覚だ。


 「!」


 ……歩いていた足が勝手に止まった。


 〈じょ、冗談だろ……もう、廊下はすぐ目の前なんだぞ‼︎〉


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