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36  作者: 川之一
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161. 怒りから


 「ガメバ第一ホテル?」


 聞いた事が無いホテル名だ。ガメバという名が付いているので、やはりこの廃墟はガメバの街から近い場所にあるのだろう。


 だが……この重い雰囲気は何なのだろうか。


 「なぁ、ここは何で営業しなくなったんだ?」

「えっ? お兄さん、このホテルの噂聞いた事ないんですか? 過去に不気味な事があって……」

噂と聞くと嫌な予感がしていた。あまり聞きたくないので、何度も小さく頷きながら部屋を再び見回してみる。この倉庫内でも何かあったのだろうか。


 「ガメバ第一ホテルって(サウス)地方では有名な"恐怖スポットの一つ"なんですよ。もう一つ有名なのが旧五野八(ごのや)トンネルで、あのトンネルはここよりヤバいんですよぉ〜」

男性は笑いながら話している。シュサヌを知っている自分からすると、笑いながら話しているのが気に食わなかった。何が面白い? 怒りからか自分の手は震えていた。


 「……旧五野八(ごのや)トンネルにも行ったのか?」

顔を俯かせたまま男性に聞いてみた。返答次第では少しだけ彼等に怒るかもしれない。

「いやぁ〜、もちろん行きましたよ! 入り口には鍵がかかっていてトンネル内には入れなかったんですけど、写真とかたくさん撮りました! 雰囲気も怖くて最高でしたよ‼︎」

「ねー! 怖かったよね!」

二人して笑いながら盛り上がっているようだ。


 自分は笑えない……。


 ……旧五野八(ごのや)トンネルが、何故使われなくなったのか過去を知っていれば"最高"なんていう言葉は出てこないだろう。


 また、彼等は面白半分で行くかもしれない。それは自分の中では許さない。シュサヌが言っていた言葉の意味を分かっているからだ。


 ── 「出口だけでいいの、入り口は塞いでいてほしい。このトンネルをもう使わないでほしいんだ」


 出口を見つめていたシュサヌは微笑んでいた。長い間、静かになる事を望んでいた筈だ。


 亡くなった者達が光の中で安らかに眠れるように。


 立ち上がり、笑っている二人の前へと歩いて行く。たとえ怖がられようが、逃げられようが、きちんと自分が言わなくては。

「あっ、お兄さんも旧五野八(ごのや)トンネルに行ってみたくなりました? また、今度は大人数で行こうかなって……」


 ──パァン


 両手で男性が持っていたライトを弾き飛ばした。二人は恐怖からか強張った表情でこちらを見ている。自分が今、どんな表情をしているのかは分からない……だが、眉間に力が入っているので間違いなく睨んでいるだろう。


 「人が亡くなっている場所に面白半分で行くな。旧五野八(ごのや)トンネルがある想元山(そうげんざん)の過去を調べてみろよ。二度と行くな‼︎」


 少しだけ怒るつもりが……かなり怒鳴ってしまった。


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