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川ノ底ニテ、
文字通り身体を焼き尽くす痛みに喘ぎながら、私は生温い水の中で呼吸をしようと藻掻いていた。腕をしきりに動かして縋る先を探しても、指先は無情にも濁った液体を掻き分けるだけで、肺には生臭いぬるま湯と焦げ付いた空気が容赦なく入り込む。
酸欠と激痛で朦朧とする意識の中、脳裏に過ったのはある一編の小説だった。
優しくて、繊細で、どこまでも静かな、美しい物語。
あぁ、このまま、私の命も、あの物語も、この劫火に巻かれて誰の記憶にも残ることなく沈んでゆくのだ。
焼け焦げた街の匂いが漂う濁った川の底。崩れ落ちた命の残骸の中、それでも私は、あの優しい小説を綴った書き手の名を、縋るように呟いた。




