第96話:サバイバル・レジスタンス3戦目に向けて
「きたね......サバイバル・レジスタンス3戦目......」
((──うん。))
端末を指で操作しながら、内容を確認していく。
「えっと、整理番号が4499、身長175cm、体重70kgか。
体型は普通なのかな?男性だと普通だよね?」
((──うん。計算するとBMI22.9で、健康的な標準体重と言えるね。))
「175cmだと、リーチはわたしより長いね......
でも、グラトニィに比べると細身に見えちゃいそうだね。あはは」
((──リーチは約178cmと仮定、パンチが届く範囲は165cmと推定できるね。))
「なるほどね、蹴りで牽制すれば間合いはキープできそうね。」
((──うん。))
ペットボトル入り飲料を冷蔵庫から取り出し、
ソファに戻り一口飲む。
「んで......罪状のところが黒塗りになってるね......なんでだろう?」
((──うん。公開できない内容って事だね。))
「なになに、公開できないとか怖いんですけど~。あっはは」
((──うん。気を引き締めないとだね。))
「格闘技とかの経験はないみたいね......
んっ!?個室マッサージ経営者って書いてる。」
((──罪状は、マッサージ経営に関わるトラブルと推測できるね。))
「そっか、金銭トラブルとかなのかな......まっ、その辺はどうでもいいか。」
((──うん。))
「ねぇ、開催日が明日になってるけど、ずいぶん急だね。」
((──そうだね。))
「リカルドから習ったことを少しでも活かせるといいな。」
((──うん。遥なら活かせるはずだよ。))
サバイバル・レジスタンスのお知らせを閉じ、
メニューをサッと開き、かつ丼セットを注文した。
少しだけボーっとしていると部屋のチャイムが鳴り、
注文したかつ丼セットが届く。
「いただきま~す。」
((──いただきます。))
「うんうん、美味しいね。あっ、そうだ!」
((──どうしたの、遥?))
「関節技とか習ったけどさ、相手を転ばす技とか......
う~ん、タックル?みたいなの習ってないな~って......」
((──そうだね。相手の懐に瞬時に飛び込む方法だね。))
「うん、そんな感じのやつ。できないと使えなくない?」
((──うん。現状、遥の手札を考慮した場合、
間合いに飛び込んで関節技を仕掛ける事は不可能。
だけど、下半身を中心に攻める事で、相手が崩れた際に使用可能になる。))
「ってことは、いつも通りの攻め方でいって......
隙を見つけたら間合いを詰めて、関節技でフィニッシュみたいな感じだよね?」
((──うん。遥の理解通りで大丈夫だよ。
相手の動向は常にデータを更新しながら、
分析していくから技を仕掛けるタイミングも伝える事ができるよ。))
「わかった、やることは今まで通りでOKだね。」
((──うん。))
「話しながら食べてたから、あんまり味わかんなかったような。
でも、美味しかったと思う。ふふっ」
((──遥のデータを分析すると、美味しく食べていた事がわかるよ。))
「ふふっ、そだね。ごちそうさまでした。」
((──ご馳走様でした。))
空いた器をテーブルの端にまとめて寄せる。
いつも通り視界の隅に浮いているゼニスを見つめると、
フッと視界から消えた。
「えっ!?」
次の瞬間、
目の前に拡張ARの人型が現れる。
「おっ!」
人型の首筋に薄っすら赤く、
腕が巻き付いているように見えた。
「えっ、腕が3本?」
((──遥、腕が3本ではなく、
赤く表示した腕はポインターと同じ意味だよ。))
「あっ、んっ、そうか!わたしの腕か!あはは」
((──うん。正解だよ。))
「蹴りの時のポインター表示と関節技を狙う表示は変えるって意味だよね?」
((──そうだね。遥が認識できなければ意味がないから、
事前に擦り合わせをしておこうと考えたんだ。))
「やるじゃ~ん、ゼニス。さっすが~。」
((──うん。遥の事は全力でサポートするからね。))
「うん、いつだって頼りにしてる。」
拡張AR表示が全体的に薄っすら赤くなった。
「えっ、全部赤い。もしかして、照れたんでしょ?」
((──......))
「沈黙は肯定ですぞ、ゼニスさん。」
AR表示がスッと消え、
いつも通りのキューブが視界に現れる。
((──この表示方法なら、遥の負担も増やす事なく、
適切なタイミングで技を仕掛ける事が可能だね。))
「うん、そだね。でも、話をそらしたよね。あっはは」
((──......))
「かわいいな、ゼニス。」
((──......))
「明日も頑張れそうな気がしてきた~。」
((──うん。))
「サバイバル・レジスタンス3戦目に備えて、ゆっくり休もうかな。」
((──うん。それが大事だね。))
ソファからベッドへ移動し、布団に潜り込む。
照明を落とした暗がりの中で、ゼニスの淡い光が際立って見える。
「おやすみ、ゼニス。明日も頑張ろうね。」
((──おやすみ、遥。ゆっくり休んでね。))
夜の闇はゆっくり進んでいき、
サバイバル・レジスタンス3戦目の朝を迎えた。




