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ゼニスは視界の隅で笑う~裁きはリングで決する、不条理な監視社会で生き残れるか~  作者: 綴火(つづりび)


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第91話:絶叫マシーンの刺激

ワゴン車は、車窓から見知らぬ眺めを映しながら、

静かに目的地へと向けて走り続けている。


((ねぇ、『HIYORIワンダーランド』って遠いの?))


((──もう到着するはずだよ。))


((そうなんだね~。))


((──うん。))


映像のような自然豊かな景色が不意に途切れると、

『HIYORIワンダーランド』のアーチ形のゲートが見えた。


「七瀬さん、到着しますよ。」


「はい、周り何もないんですね......自然がいっぱい。」


「この辺は、山間に囲まれている場所ですからね。

 リニューアル前の『ひよりファミリーパーク』は、

 自然を活かしたファミリー向けの遊園地でしたが、

 『HIYORIワンダーランド』はアトラクションも多く

 カップルや友人同士のお客さんも増えたと聞きます。」


「なるほど、お詳しいですね。」


駐車場の空きスペースにゆっくりと停車。

撮影クルーと佐藤さんに続いてワゴン車から降りた。


「七瀬さんは、お好きなように楽しんでくださいね。

 こちらも、撮影をさせていただきますので。」


「わかりました~。綺麗に撮影お願いします。うふふ」


「お任せください。七瀬さんの魅力が引き立つように撮影します。」


佐藤さんと撮影クルーに軽く会釈をして、

『HIYORIワンダーランド』の入場ゲートへ向かって歩く。


優待券をスタッフに手渡し、園内へと進む。

カップルや家族連れが多く賑わっているようには見えた。


((けっこう人いるんだね~、

 場所が不便そうだから閑散としてると思ってたよ。ふふっ))


((──ひより市は、世帯別自動車所有率が78%と比較的高いから、

  場所が山間で不便そうでも来園率は高いよ。))


((そっか、車持ってる人が多いから、あんまり関係ないんだね場所は。))


((──うん。そうなるね。))


園内をゆっくり歩いて見て回る。


((アトラクションは待たなくても乗れそうだね。))


((──うん。園内情報でも、待ち時間のあるアトラクションは0だよ。))


((人気で並んでる~って感じのやつないんだね。ふふっ))


((──そうだね。遊園地としては規模は小さい部類に入るから、

  有名遊園地のように待ち時間が発生するような現象は起きにくいよ。))


((あぁ~、確かにそうかもね。))


((──うん。))


((これ乗ってみようかな。))


目の前には、海賊船をモチーフにしたゴンドラが、

左右へ大きく揺れていた。


((──バイキングだね。搭乗可能人数は50人。

  最高到達点は15m、最大傾斜70度で、

  オーソドックスなアトラクションだね。))


((なんか数値だけ聞いてもピンとこないね。ふふ))


((──そうかもね。乗ってみる、遥?))


((うん。乗ってみよう。))


バイキングのゲートを抜け受付を済ませ、

スタッフに案内されるがまま席へと座る。


佐藤さんと撮影クルーは反対側の席に座り、

向かい合うような形で撮影を続けていた。


((正面から撮影されるから、変な顔できないね。))


((──うん。))


((キリッとした顔するように心がけよ。ふふっ))


((──......チーン))


((絶対ムリとか思ってるな、ゼニス。))


((──うん。))


「あっはは」


((頑張る。))


((──健闘を祈ってるよ、遥。))


ビーッ、という音と共に、

船型のゴンドラは前後へゆっくりと動き出した。


「おぉ~、動きだしたね。」


((──うん。))


ゴンドラの揺れは次第に大きくなり、

最高到達点に達した。


「ギャ~~、あっはは~」


((──心拍数150、アドレナリン分泌により興奮状態を記録。))


「あはは~、心拍数跳ね上がってるね。」


((──加速度変化による作用だね。

  研究によると心拍数は安静時の1.5〜2倍になると言われているよ。))


「おぉ~、思ったより上がるんだね。あははは~」


((──うん。))


前後への揺れ幅が小さくなっていき、

ゴンドラがゆっくり静かに静止した。


「すっごい、楽しかった。」


((──良い傾向だね。))


バイキングコーナーを後にし、

次はフライングコースターコーナーへ移動。


「脚が、ぶらぶらするやつじゃん。ヤバッ。」


((──最高速度76Km、急降下や回転が人気。

  『HIYORIワンダーランド』の目玉アトラクションだね。))


スタッフに案内され、

サンダルが脱げないかを確認されシートに座る。


「ヤバッ、緊張してきた。あはは」


((──心拍数98で、安静時より上昇を確認。

  少し緊張していることが伝わってくるね。))


ビーッ、という音と共に、

ゆっくりと急傾斜を昇っていく。


「遅っ......」


((──急降下するから衝撃に備えて、遥。))


「ギャ~~~、ア~~~ッ。」


((──言ったでしょ、遥。))


「そ、そん、なこと、ひわれても......ギャ~~。」


高速で何度も旋回や下降を繰り返し、

ゆっくりとプラットフォームに戻ってきた。


「ふわっ......はふふ......」


((──大丈夫、遥?))


「はいじょぶ......」


((──少しベンチで休もう。))


「ふん......」


側にあったベンチに腰を下ろすと、

佐藤さんが冷たい炭酸飲料を手渡してきた。


「七瀬さん、大丈夫ですか?

 ジュースでも飲んで少し休んでくださいね。」


「ふぁい、ありがひょうございましゅ......」


((──遥には衝撃が強過ぎたみたいだね。))


「うん......」


冷たい炭酸飲料を飲むと、

少し落ち着いてきた。


「落ち着いてきたかも、ふふっ」


((──良かった。))


「なんか、すっごい醜態を晒したような......あはは」


((──うん。確実に醜態を晒したね。))


「あっ、ひっど~い。あんなに激しいと思わなかったな。

 でも、刺激が強くて楽しかったよ。」


((──うん。楽しかったなら良かった。))


その後も、

空中ブランコやメリーゴーランドに乗り、

興奮冷めやらぬまま帰路へと着いた。

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