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ゼニスは視界の隅で笑う~裁きはリングで決する、不条理な監視社会で生き残れるか~  作者: 綴火(つづりび)


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第90話:知らない遊園地の存在

車内では助手席に座っているカメラマンが、

後部座席の方に体を向け撮影を始めると同時に佐藤さんが口を開く。


「サバイバル・レジスタンス2戦目は、かなり巨体を誇る相手でしたが、

 事前に対策は立てていたんですか?」


((おっ、これはインタビューかな?))


((──うん。))


「あっ、う~ん、いちおうですかね。うっふふ」


「どんな対策を考えて臨んだんですか?」


「体が大きそうだったので、下半身が弱いと思って......」


「そうなんですね。下半身を中心に攻める事に徹したわけですね。」


「はい、それで崩れたら、頭部に蹴りが入ると思ってました。」


「なるほど、しっかり作戦を練った上での勝利ということですね。」


「あっ、はい、たぶん、そうだと思います。」


((──歯切れ悪いな、遥。))


「あっはは」


((うっさいわ。))


「ふふっ」


「次回もサバイバル・レジスタンスの相手が決まり次第、

 作戦を立てて臨むという事ですね?」


「はい、えっ~と、勝たないと大変なので、頑張りますっ。」


((──心拍数、血圧が安静時より上昇。呼吸も少し浅くなっている。

  緊張してるみたいだね、遥。))


((もう、インタビューとか恥ずかしいわ......))


「3戦目のサバイバル・レジスタンスも期待していますね。」


「あっ、はい、ありがとうございます。頑張りましゅ。」


((──頑張りましゅ。))


((うっさい、ゼニス。))


「緊張して噛みましたね......えっへへ」


「七瀬さんの飾らない魅力が伝わると思いますよ。

 次回もインタビューするので、よろしくお願いしますね。」


「はい、わかりました~。」


インタビューを終えたタイミングで、

ワゴン車はゆっくりと路肩に停車した。


「七瀬さんお気に入りのメロンパンのお店ですね。」


「はい。くろいわベーカリーのメロンパンは、

 なんか覚えていて、会社勤務だった時も、

 よく買っていたと......思います。」


「では、お気に入りのメロンパンを買いに行きましょうか。」


「はい。そうですね。」


((わたしの身の上話的なやつには興味ないんだね。))


((──遥の魅力を引き出す動画制作にしか興味がないと推測。))


((それなら......まぁ仕方ないね。変にツッコまれても困るけど。))


「ぷっふふ」


((──うん。そうだね。))


くろいわベーカリーに入り、

メロンパンやチョコレートクリームパンなど数種類をトレーに乗せ会計へ。


以前と変わらず、

パンを機械的に袋に詰めるスタッフ。


テンプレート通りの『ありがとうございました。』

全く何一つ変わらない光景だった。


((ホント、どのお店のスタッフも愛想ないよね?

  前から、こんなに愛想なかったのかな......))


((──以前の事を覚えていないから違和感が強い傾向にある。))


((そういうもんなのかな~......))


((──うん。あまり気にするのも良くないよ、遥。))


((うん。そだね。))


くろいわベーカリーを後にし、ワゴン車に乗り込む。


「七瀬さん、この後の予定は決まっていますか?」


「いえ、なにも予定はないです。」


「そうですか。それなら、遊園地に行きませんか?」


「えっ!?遊園地ですか?」


「はい。遊園地です、七瀬さん。」


((ねぇ、ひより市に遊園地なんてあった?))


((──うん。『HIYORIワンダーランド』の事だね。))


「七瀬さんは、『HIYORIワンダーランド』はご存じないですか?」


「...は...い、ご存じないですかね?」


((えっ、そんなのいつできたの?))


((──1年10ヶ月前にオープンしたよ。))


「なんか小さな遊園地はあったような気がするけど......

 『HIYORIワンダーランド』って初めて聞きましたね。」


「七瀬さんは、

 小さな遊園地『ひよりファミリーパーク』はご存じなんですね?」

 

((──『ひよりファミリーパーク』がリニューアルして、

  『HIYORIワンダーランド』になったんだよ。))


「えっ!?」


思わず大きな声を出し、慌てて手で口を塞ぐ。


「七瀬さん、驚き過ぎですよ。

 『ひよりファミリーパーク』も老朽化していた事から、

 時代の流れに合わせて、若者からファミリーまで楽しめるスポットに

 リニューアルされたんですよ。2年前くらいでしたかね。」


「へ、へぇ~......ぜんぜん知らなかったです。」


((ホントに知らないんだけど......

  ファミリーパーク?これはなんか覚えているような......))


((──うん。遥は、覚えていない事の方が多いから仕方ないよ。))


((うん、そうなんだけどさ......))


ワゴン車がゆっくり走り出す。


「七瀬さんが、行った事がないようなので、

 『HIYORIワンダーランド』行ってみましょう。」


佐藤さんはバッグから『HIYORIワンダーランド特別優待券』と

書かれたチケットを手渡してきた。


「はい、ありがとうございます。」


((佐藤さんって優待券マスターなの?

  水族館の時もそうだったけどさ......ふふっ))


((──佐藤は、動画制作のために

  様々なスポットの優待券を所持していると考えられるよ。))


((撮影するのも大変だね~。佐藤さんね、ふふ))


「遊園地かぁ......なんか楽しみ。

 きっと、すっごい久しぶりなんだと思うし......」


((──うん。))


「七瀬さんが、楽しんでくれれば幸いです。」


「はい、せっかくなので楽しみます。うふふ」


静かに『HIYORIワンダーランド』へ向けて走る車窓からの眺めは、

どこか違う街のように感じる。


違うように感じるのも記憶が欠落しているからなのだろうと、

言い聞かせるようにそれ以上考えるのをやめた。

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