第107話:サバイバル・レジスタンス4戦目のお知らせ
「明日は、忘れないようにしないとね、トレーニングウェア。
わたし、忘れやすいから、リマインドしてよね、ゼニス。ふふっ」
((——うん。ちゃんとリマインドするね。))
部屋でゼニスとまったりした時間を過ごしていると、端末の通知音がなった。
「あぁ~、これは、うん、きっと、あれだね。」
テーブルの上に置いてある、タブレット型の端末を手に取り、通知内容を確認する。
「えっと、サバイバル・レジスタンスのお知らせね......うん、うん。なるほど。」
((——今回は、少し苦戦する可能性あるかもね。))
「うん、そだね。格闘技経験者だもんね......」
((——女性でも、侮れないね。))
「しかも、総合格闘技経験者......」
((——うん、明日からも気を引き締めて、トレーニングしないとだね。))
「身長とかは、わたしと変わらないから、リーチとかはイメージしやすいけど......
でも、打撃は何がメインなのか、わかんないもんね。
キックなのかパンチなのか。」
((——そうだね。どちらにも対応可能なようにシミュレーションしておこう。))
「うん、そだね。この人さ、結婚詐欺らしいよ......
男性の恋心をもてあそんだ感じなのかな。なかなかのワルですなぁ~。ふふっ」
((——うん。))
「なんだろ......ベルゼブブ的なニオイがするよね。
なんだっけ?七つの大罪シリーズ?あはは」
((——七つの大罪に当てはめると、結婚詐欺は色欲が近いと考えられるね。
色欲はLUSTで、アスモデウスが該当するよ。))
「ラストは、L、A、S、T、なのかな?」
((——うん、色欲はL、U、S、Tのラストなんだ。))
「A、じゃなくて、Uなんだね。ふふっ」
((——うん。))
「んで、ラストは、どんな感じの悪魔なのかな?」
((——うん、アスモデウスという悪魔で、計算高く、かなり傲慢な存在。
他人を堕落させる事に喜びを感じ、サディスティックな性格をしているね。))
「へぇ~、結婚詐欺って、計算高そうだし、なんかキャラと合ってるね。ふふっ」
((——うん、そうだね。明日から、アスモデウス対策トレーニング開始だね。))
視界の隅にふわふわ浮かぶゼニスに向かって、右手の親指をビシッと立てる。
「きっと、整理番号じゃなくて、表記はLUSTになりそうだよね。
ベルゼブブの時は、Gluttonyだったじゃん?あっはは」
((——うん。あの管理官なら、盛り上げる事を考えているだろうから、
インパクトのあったGluttonyを想起させる事を仕掛けてきそうだね。))
「うんうん、間違いないね。整理番号より盛り上がるでしょ、名前あった方が。」
((——そうだね、間違いない。))
「よし、じゃ~明日に備えて、ご飯食べて、しっかり寝ないとね。」
((——うん。))
端末のお知らせを閉じ、ルームサービスのメニューを開く。
ハンバーグセットにパンを注文し、端末をテーブルに戻す。
注文後15分ほど経過——
部屋のチャイムが鳴り、ルームサービスが届く。
ハンバーグ、サラダ、スープ、パンをテーブルに並べ、
「いただきます。」と言ってから食べ始めた。
ゼニスと会話をしながら、いつものように食事を終え、
テーブルの隅に食器を重ねて置く。
「ごちそうさまでした。」
((——ご馳走様でした。))
「相変わらず、何食べても美味しいよね。ハズレなし。」
((——うん。))
洗面室へ行き、洗顔や歯磨きを済ませ、早々にベッドに潜り込んだ。
部屋の照明を落とすと、ゼニスの淡い光が、より幻想的に見える。
「ねぇ、思ってたんだけど。」
((——どうしたの、遥?))
「ゼニスって、光ってるじゃん?」
((——遥には、発光しているように見えているはずだね。))
「うん、でもさ、部屋は明るくならないよね。あっはは」
((——うん、そうだね。あくまでも、遥にしか見えていないから、
周囲の環境に影響を与える事はできないんだ。))
「だよね、物理的な影響はないってことだもんね。」
((——その通り。))
「物理的な影響があるってことなら......
わたしが、ランタンとか懐中電灯を、
頭からぶら下げているような感じになるってことだよね。
想像するだけで、変だよね。あはは」
((——そうだね。変わり者扱いされるのは間違いないね。))
「今でも、独り言のクセがすごいって思われてるのにね。ヤバいね。ふふっ」
((——うん。))
「うんって、そこは否定しなさいよね。」
((——......チーン))
「でたっ、またバカにしてるんでしょ~。あはは」
ほのぼのした優しい空気に包まれる。
就寝前のくだらないやり取りは、時間がゆっくり流れているように感じた。
ゼニスの淡い光に見守られながら、意識は少しずつ眠りへ誘われる。
ほどなくして、意識は完全に深い闇に包まれた。




