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ゼニスは視界の隅で笑う~裁きはリングで決する、不条理な監視社会で生き残れるか~  作者: 綴火(つづりび)


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108/108

第108話:サバイバル・レジスタンス4戦目

翌日からの5日間は、新しいトレーニングウェアに身を包み、

次のサバイバル・レジスタンスに向けて気持ちを引き締める。


ゼニスが表示させてくれる拡張現実の人型を仮想アスモデウスに見立て、

ポイント表示を目掛けて蹴りを打ち込んでいく。


「ふぅ......あと、5日か......」


((——うん。仮想アスモデウス対策としては、

  十分に時間があるから、無理せずトレーニングを積み重ねよう。))


柔術のトレーニングは、ゼニスとはできないため、

基本的な動きを確認し、表示されたポイントに技を仕掛けるまでのアクションを、

身体に染みこませていった。


「はぁ......前より......ふぅ......よくなってるかな......」


((——うん。反応速度も申し分ないよ。

  遥の強力な蹴り技に、柔術の要素が加わった事で、

  幅広い戦略が練れるようになったのは大きいね。))


「ふぅ......はぁ......うん、そだね......」


ゼニスとのトレーニングは充実していて、

サバイバル・レジスタンスまでの時間はあっという間に過ぎていった。


迎えた当日、慣れたもので緊張は一切ない。

体調も万全で、あとは対戦相手のアスモデウスを迎え撃つだけとなった。


サバイバル・レジスタンス前の調停が終了。

スタッフが手際よくリングを清掃し、全ての準備が整う。


すると——

会場の照明が静かに落とされた。


暗がりの会場は、期待感を押し殺したのが伝ってくるような、

異様な静かさに包まれている。


「ねぇ、今回のオッズってさ、いつもと違くない?」


((——うん。そうだね。対戦相手にもベットできるようになっているね。))


リング上部に備え付けられている大型モニターには、

『Haruka:1R・2.3』『Haruka:2R・4.1』『Haruka:3R・3.5』

『Lust:1R・28.1』『Lust:2R・16.4』『Lust:3R・18.6』

と、オッズが表示されていた。


「これってさ、対戦相手が強いってこと?

 わたしが負ける確率も高い?とか......なのかな......」


((——サバイバル・レジスタンスで収益を上げるための施策と考える方が妥当。

  ベットする範囲が広がれば、収益増に期待ができるという、

  管理官のしたたかさが透けて見えるよ。))


「なるほど、そういう意図があるんだ。」


((——うん。))


その時——

リング中央にスポットライトが当たる。


「運・命・の・定・刻ゥゥッ!!

  歴史が動くその瞬間を、その目に焼き付けろォォォーーーッ!!」


静寂を切り裂くような、絶叫アナウンスが響き渡る。


「準備はいいかァァ!?

 サバイバル・レジスタンスッの始まりだァァーーーッ!! 」


観客席から、拍手や歓声が上がり、徐々に大きな熱気に支配されていく。


「今宵、生き残るのはァッ!! どっちだァァアアアアッッ!!!!」


高まる会場のボルテージ。


「まずはァ!! L・U・S・T!!色欲のアスモデウスゥゥゥ!!」


「騙した男は数知れず! 他人の不幸は蜜の味!

 骨の髄まで貪り尽くすッ! 魅惑の色欲魔!!

  入・場・だァァァーーーッッ!!!」


入場通路がピンクや赤のスポットライトで照らされ、

LUSTに合わせたような妖艶な音楽が流れた。


観客席からはブー、ブー、ヒュー、ヒューと、

ブーイングと歓声が入り混じっている。


「アスモデウスを応援してる人もいそうだね。ふふっ」


((——うん。アスモデウスにベットしたんだろうね。))


「今までより、盛り上がってるね。」


((——そうだね、管理官の狙い通り。))


「プロデュース能力高いな管理官。あはは」


数多くの男性を魅了してきただけに、美しい容姿のアスモデウスは、

リング上でも映えている。


「皆様ァッ! お待ちかねェェエッ!!」


「サバイバル・レジスタンスのォッ! 絶・対・ア・イ・ド・ルッ!!」


「Ha・ru・kaァァァーーーーーッッ!!!!

  入場ォォォオオオッッッ!!!!」


派手なレーザー演出、ポップな音楽、いつも通り入場をする。

熱狂的なファンも増えているようで、観客席は前回以上の盛り上がりを見せていた。


観客に向かい手を振りながら笑顔でリングイン。

「Ha・ru・ka!」「Ha・ru・ka!」「Ha・ru・ka!」と、

コールが巻き起こる。


((わたしの人気ヤバいね。ふふ))


((——嬉しそうだね、遥。))


((応援されるのは嬉しいよね。))


((——そうだね。))


リング上でも観客席に向かって手を振ると、さらに熱を帯びて盛り上がる。

対角線上のアスモデウスは、こちらを一瞥、少し嘲笑うかのような余裕の表情を浮かべている。


((ねぇ、アスモデウスさ、感じ悪いね......なんか余裕ありそう。))


((——総合格闘技のバックボーンに自信があるのかもね。))


((そっか、自信あるんだ。でも、わたしだって自信あるもん。))


((——うん。気負わず、肩の力を抜いていこう。))


((OK。わかった。))


スゥーっと大きく息を吐き、余計な力を抜いて構える。


次の瞬間——

開始を告げるアナウンスが入る。


「カウントォォッ! ダァァァウンッ!!」


「5ッ!!」


「4ッ!!」


「3ッ!!」


「2ッ!!」


「1ッ!!」


「ファァァァイッッ!!!!」


サバイバル・レジスタンス4戦目が、ついに始まった。

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